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耳元で水の音が聞こえる。
滲みるが目を開けてみれば、淡い光が照りつけていた。
この世界に住む生き物の群れが俺の目の上を通り過ぎる。
俺はこの世界に住む生き物じゃない。だからこそ、この世界で住む機能が搭載されていない。
俺の周りを包み込むのはなにもない、冷たいものだ。
あの時俺はなにをしていたのだろう。
冷たい何かが俺のなにかを攫っていく。
目を瞑ったその瞬間、真っ暗な世界に色鮮やかな光が舞った。
一度きりではなく、多い頻度で宙を舞った。
ああ、そういえば今日は花火大会か。
俺は眩い光に手を伸ばす。
口から吐き出される、最後の酸素を吐き出して。
足元から冷たくなっていくのを感じた。
脈が俺の身体中でざわめき出すのが聞こえる。
誰かの歓声も、誰かの叫び声も、あの光の音も聞こえない。
俺の体が、心臓が動いていることだけは感じる。
(ああ、俺ももうじき終わる__)
「_____」
最後に頬を撫でたのは、冷たい液体ではなく暖かい気体。
俺は目を微かに開けると、青いような白いような彼女の姿。
手を伸ばすと、暖かさが伝わった。
「ありがとう」
暖かい空気を、貴方へ。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!