第6話

後日談
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2026/01/24 11:27 更新
解散から、7年。


「元SixTONESの——」

その肩書きは、まだ消えていなかった。
慎太郎は、それを見るたびに、少しだけ視線を逸らす。

売れなかったわけじゃない。
それぞれ、ちゃんと前に進んでいる。

ドラマも、舞台も、音楽も。
それでも、


6人でいる未来だけが、ぽっかり空白だった。



ある日、慎太郎は古いスタッフから連絡をもらった。

「資料整理してたらさ、これ出てきて」

送られてきた動画。
未公開の、楽屋カメラ。
例の心理テストの直後だった。


画面の中で、樹が言っている。

「信頼度ゼロ?
違うよ。最後尾ってさ、一番信用されてないと立てない場所だろ」

それに、慎太郎が笑って返す。

「だよな。俺、樹いないと先頭無理だわ」

その続きは、
番組では流れなかった。
慎太郎は、動画を止めて、しばらく動けなかった。


――あったんだ。

ちゃんと、言葉にしてた。
守れなかっただけで。

その夜、慎太郎は、7年ぶりに一通のメッセージを送った。

元気?

それだけ。
既読がつくまで、10分。

長いのか、短いのか、わからない時間。


生きてるよ
そっちは?


変わらない文面に、
胸の奥が、じわっと痛んだ。



数日後。
都内の、あまり人目につかない店。

「久しぶり」

樹は、少し痩せていた。
でも、笑い方は同じだった。

気まずさは、なかった。
代わりにあったのは、
どうして今まで会わなかったんだろうという静かな後悔。

「俺さ」

慎太郎が言う。

「ずっと思ってた。
解散の日、俺が言うべきだったって」

樹は、首を振った。

「言わせなかったのは、俺だよ」

間。


「俺が最後尾にい続けたの、
守るためでもあったけどさ」

樹は、グラスを見つめる。

「逃げでもあった」

慎太郎は、初めてそれを聞いた。

「前に立つの、
お前らに任せるのが楽だった」

「……」

「信頼されてるって言葉に、
甘えてた」

その沈黙は、
7年分の時間だった。

「なぁ」

樹が顔を上げる。

「もう一回やろう、とは言わない」

慎太郎は、少し笑った。

「言われても、簡単には無理だろ」

「だよな」

でも。

「それでもさ」

樹は、少しだけ声を低くした。

「最後尾、もう一回立つなら」

慎太郎は、即答した。

「今度は、俺が後ろ見る」

樹は目を見開いて、
それから、ゆっくり笑った。



後日、6人は揃わなかった。

全員で集まる勇気は、まだなかった。

でも、

北斗と樹が同じ現場で挨拶をした。
大我が、慎太郎の舞台を観に来た。
ジェシーが、楽屋で笑った。


点が、線になり始める。
世間は、まだ知らない。

SixTONESは、
戻るかもしれないし、戻らないかもしれない。

ただ一つ確かなのは、
あの日、壊れたのは信頼じゃなかった。

信頼を守る方法を、誰も知らなかっただけだ。

最後尾は、
もう一人じゃない。

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