第21話

『怪獣8号』
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2024/06/24 08:00








あなた
怪獣…8号!?な、なんで…っ
市川レノ
先輩…!自分が何やってるのか分かって___…
あなた
は?









ちょっと待って…その言い方、まるでレノが彼が怪獣だって事をずっと知っていたような口ぶりじゃない…?
変な汗が頬を伝い、私は8号に視線を向けた。
その皮膚は怪獣そのもので、顔面はドクロのような作りになっている。
瓦礫の上に登った彼は強く地面を蹴り上げ、その拳で怪獣爆弾を吹き飛ばしてしまった。








あなた
!?
市川レノ
!!
亜白ミナ
"総員!その場に伏せて!!"
亜白ミナ
"シールド全開だ!!"








隊長がイヤホン越しに全員に指令し、皆一斉に地へ伏し、シールドを全開にする。
けれど、8号が立っている一列。
そう、私達が伏している場所だけは風も僅かでその影響で飛ばされる隊員や飛んでくる瓦礫で怪我をする人は一人もいなかった。
まるで彼が、暴風から私達を守っているように見えた。








あなた
(あれが…怪獣8号……)








爆弾が破裂し、その影響で発生した暴風が収まった後、いち早く彼の方へ向かっていったのはやはり彼…。
市川レノだった。








あなた








亜白ミナ
日比野カフカ
亜白ミナ
亜白ミナ
いや、怪獣8号
日比野カフカ
亜白ミナ
身柄を拘束する
















その後彼は亜白隊長に身柄を拘束され、しばらく時間が経った頃。
保科副隊長から皆に外に集まれと指令があった。
私達第三部隊隊員は皆二列に並ばされ、今まさに本部施設へ移送される彼を見送っている。








『同行する警備部隊、準備完了しています』

あなた
市川レノ








皆神妙な面持ちで彼を送る中、私とレノ…そして四ノ宮は彼を見る事が出来なかった。
彼が皆に背を向け、二台に足を踏み入れた時、私の横に並んでいたレノが突然動きだしおじさんに向かって叫んだ。








市川レノ
先輩、戻ってくるって信じてますから
あなた
…!
日比野カフカ
え…
日比野カフカ
市___…








彼の名前を呼ぼうとしたのか、無情にも扉は呼ぶ声よりも早く閉められてしまい、その声は届かなかった。
















あなた
市川レノ
古橋伊春








おじさんが本部に連れていかれた後、残された私達五人はピリついた空気感の中で誰も口を開くことが出来ずにいた。
そんな中、この空気を軽くしようとしてくれた勇者が一人…。
伊春が口を開いた。








古橋伊春
いやー、しっかしまだ信じらんねぇな!
古橋伊春
まさかおっさんが怪獣8号だったとは
古橋伊春
だってあのぷに腹のおっさんだぜ?なぁレノ、あなた
市川レノ
あなた
…伊春、君は頑張ったよ
古橋伊春








伊春の勇気も儚く散り、皆また口を噤んでしまう。
私もフォローしようとしたが少し間違えてしまったみたいだ…。
再び訪れた静寂の中、イヤホンからオペレーションルームよりお達しが届いた。








亜白ミナ
"隊長室に集合せよ"
あなた
…!
古橋伊春
!!
















あなた
た、他部隊に移籍!?
亜白ミナ
一時的な処置だがな
亜白ミナ
此度の怪獣災害で立川は基地としての機能を75%失った、よって新人の育成機関としての役割を果たせないと判断したのだ。
亜白ミナ
9号に続き今回の10号と大怪獣が続いているが、上はこの流れに一つの疑念を抱いている
亜白ミナ
一連の群発型大災害ではないかと
古橋伊春
あんなのがまだ続くって事ですか!?
亜白ミナ
それだけじゃない、同時多発する可能性もある
亜白ミナ
我々は備えなくてはならない
亜白ミナ
鍵は君たちだ、部隊の垣根を超えて育成する
古橋伊春
けど…俺は第三部隊に、あんたに憧れて___…
あなた
市川レノ
やります
市川レノ
もっと強くならなきゃいけない








そんな強い意志の宿る瞳を隊長に向け、見事にそれに感化された私は隊長に一歩踏み出した。








あなた
…少しでもここに居られるなら、俺もそれで良いです
古橋伊春
…!
出雲ハルイチ
ま、いい機会なんじゃないか
出雲ハルイチ
同じ環境にいても四ノ宮に追いつける気がしないからな
神楽木葵
強くなりたいのはお前だけじゃないぜ、レノ
市川レノ
…!
あなた
そうだよ、一人で強くなろうとすんな
あなた
俺も着いてくよ
古橋伊春
っ…!
古橋伊春
だー!!俺もやるよ!!クソが!!
古橋伊春
テメェーだきゃー負けねーからな!!
市川レノ
怪獣と戦ってくださいよ
あなた
…ねぇ伊春、俺は?ちゃんと見とけって言ったろ?
あなた
俺も着実に強くなってるから、追い抜かれないように頑張れよー
古橋伊春
分かってるわ!!覚悟しとけよあなた!!
あなた
ふふん、お前もな!








うむむ、着実に来てるぞ…!!
成海ちゃんもうすぐだぜ!!

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