其れから数ヶ月程が経った 。
其の間 、三人は特に険悪になる訳でもなく 、
寧ろ双福がオールマイトの事を「 俊典 」「 俊典殿 」と
呼ぶ位には仲良く迄なった 。
そう 、三人は ” 友人 ” と呼べる程の
間柄になったので或る 。否 、なってしまったのだ 。
其の日 、オールマイトは疾く仕事を終えた為
二人の様子を見に行こうと思い立った 。
なんせ彼は二人の仕事姿を見た事が無かったのだ 。
「 決して見ないように 。 」と 、
公安から釘を刺されたが故だった 。
だが彼は気になってしまった 。
「 何故見る事を禁止するのか 」
「 何故彼等が仕事中 、公安の監視が必須なのか 」
「 何故……………
二人が何時も疲れた顔をしているのか 」
早速 、遠くに居る福沢の後ろ姿を見付け 、近づいた 。
仕事が疾く終わったとは云え 、もう既に真っ暗 。
近所の商店街も深く眠りについた頃 、
街灯が如何してか不気味に見える時間帯……
そう 、福沢の影をチカチカと 、何度も作り直しては 、
彼の胸の焦燥感を高く高く積み上げてくる其れだ 。
杞憂だと 、映画の見過ぎだと 。
そう誤魔化す割に心臓は云う事を訊かない 。
福沢は此処でする筈の無い声に 、
フラリと振り返った 。
向けられた頬は紅く濡れていて 、
衣服や自慢の刀にも 、遠慮無しに張り付く其れは 、
青年の美しさをやたら引き立てていた 。
福沢は其の言葉に 、次第に目を丸くした 。
何時もの少し憂いを帯びた鋭利さからは
想像しにくい程に 、如何やら今夜は満月の様だった 。
揺れた血の水面がぴちゃりと音を立てて 、
白い足袋を 、彼の冷静さを主菜に侵食して往く 。
オールマイトは気が遠くなった 。
其処に転がる死体は福沢がやったものなのか 。
そして何よりも 、血塗れの友人に対して
其の姿を「 美しい 」と一瞬でも思ってしまった自分に
憎悪が止まらなかった 。
だが彼の頭は存外人間らしく 、単純だった 。
オールマイトは福沢を抱き締め背中を摩った 。
「 信じたいモノを信じる 」。
ヒーローならば「 真実を受け止める 」べきだろうに 、
気が動転して友人を庇う等………
此れこそ彼が英雄で或る前に 、
只の人間で或ると云う証拠だ 。
福地は刀に着いた血を地面に振り捨て 、
自身の背後に目をやる 。
其処には数体の死体があり 、
刀によってザックリと斬られていた 。
二人が故意にやった事だと悟ったオールマイトは 、
わなわなと震えていた 。
そう 、二人の役目はオールマイトの影…
珍しく怒っている様子のオールマイト 。
二人は其の発言に目線を落とした 。
詰まる処 、自らの存在を煙に巻かなければ 、
英雄として尊敬するオールマイトの地位は落ち 、
云う事を訊かぬ獣共は弒処分される訳で…
其の代価が 、其の日初めて逢った敵の命と云う……
何とも単純な話だ 。
珍しく 、そして酷く狼狽える友人と 、
目元に皺を寄せ目を細め 、一つ息を吐けば
泣き出してしまいそうなのに嗤う友人…… 。
作った優しげな笑顔を其の侭に 、
彼は顎で方向を示した 。
其の先に 、英雄を求める者の姿は無い 。嘘だった 。
強いて云うなら 、英雄を求めているのは
目の前に居る二人であろう 。
結果として 、
オールマイトは黙って其の場を離れた 。
指し示された方向に 、静かに歩みを進めた 。
此の時彼の脳内には 、次の事しか無かった 。
「 会長に話を伺う 」
只 、其れだけだった 。
次回 「 猛獣共の飼育方法 」
【 +α 】
〜 三人の関係 〜
福沢→
福地=幼馴染 、ライバル
オールマイト=憧れの人
福地→
福沢=幼馴染 、ライバル 、此奴の隣は譲れない
オールマイト=憧れの人
※オールマイトの事をより尊敬しているのは福沢さんの方です 。
オールマイト
双福=大切な友人 、心配











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!