ゾロゾロ
正直びっくりした
死ぬかもしれないこの仕事を所望する人がこんなにいるとは
そのとき、
見覚えのある後ろ姿が見えた
黒くて長い髪。
水色の毛先。
まさか……
口調は違うものの、この刺さるような冷たさはきっと有一郎だ
まだこの性格直ってなかったんだ
……お願い。嘘だと言って
冗談だよって、からかっただけだよって
お願い
お願い
お願い……
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私はそう言って、手を伸ばす
パシッ
幼馴染にそんなことを言われ、ぐっさりと来る
私の目からは大粒の涙が流れた
踵を返し、他のところへ行こうとする
名前を言って、他のところへ行ってしまった
……え?
無一郎……?
あんな可愛かった無一郎があんなになる……??
え……(困惑)
シャキンッ
無一郎のことが気になりすぎてむしゃくしゃしてきた
覚えてない?記憶喪失??
……有一郎はどこいったの?
無一郎だけを危ない目に合わせるわけ……
私は風の呼吸の使い手だ
……師範は風柱だからね
あ……
……有言実行。すぐ忘れましたねこの人
この人の記憶にはもう残れないんだろうか
背後から襲ってきた鬼を切りつける
ポツンッ
ザァァァァ
けっこう土砂降りだ
無一郎に案内されたところは小さめの洞穴だった
再び沈黙が流れる。
話題……話題……
こいつ話す気ないな
雨はまだ降っている