リゾート地の夕暮れ。
海辺のショップで買い物を楽しんでいたふたり。
「これ、一成さんのお土産にちょうどよくない?」
「ほんとだ、こういうの絶対好き」
「じゃあ、ちょっと買ってくるね」
「うん、俺はそのへん写真撮ってくる」
ほんのわずかな別行動のつもりだった。
レジが混み合い、店を出たときには
剛くんの姿が見当たらない。
「え?……さっきまでここにいたのに」
人の波と似たような風景。
スマホもWi-Fiの接続が切れていて連絡が取れない。
「落ち着いて、大丈夫。きっと近くにいる…」
そう自分に言い聞かせるものの、
心細さはじわじわと増していく。
そこへ、近づく影
「ねえ、君、ひとり?」
「可愛い子がいたら声かけたくなるよね〜」
リゾート慣れしたような男性2人組が、
軽い調子で私に近づいてくる。
私は警戒しながらも冷静に対応しようとするが、
足元は砂浜、周囲は観光客ばかりで逃げ場も少ない。
「あ、ごめんなさい、人と待ち合わせしてて」
「じゃあその人来るまで、ちょっと話そうよ?」
笑いながら距離を詰めてくる彼らに、
一瞬、体がすくむ。
「やめてもらえますか」
低くて聞き覚えのある落ち着いた声が背後から響いた。
そこにいたのは、
汗ばんだ顔で息を整えながら立つ、剛くん。
「俺の妻なんで。そういうの、やめてもらえます?」
一瞬で空気が変わる。
男性たちは剛くんの真剣な眼差しに気圧され、
「悪かったな」とそそくさと立ち去っていった。
私は剛くんの胸に飛び込み、ぎゅっとしがみつく。
「ごめん……はぐれちゃって……」
「いいんだ。こっちこそ、ちゃんと離れる前に
言えばよかった」
「でも……こわかった」
剛くんは震える肩を何度も優しく撫でながら、
私の耳元で囁いた。
「二度と、あなたちゃんをひとりにしない。」
「何があっても、俺が守る。」
それはまるで、もう一度“誓い直す”ような声だった。
旅先の小さなすれ違いは、
あらためて互いの存在の大きさを思い出させてくれる。
「傍にいることが、当たり前じゃない」
だからこそ、手をつなぎ直したふたりの絆は、
以前よりもっと、深く結ばれていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。