You side
再び目を覚ますと其処はタオルケットを被り幼児達が並んで眠っている広々とした空間
早速転生特典の1つである前世の記憶の引き継ぎが出来ていることを確認し、新しく生まれ変わった私の記憶を辿ってみる
先ず私の名前は元獣あなた、年齢は本日3歳の誕生日を迎えたピチピチの女児だ
そしてこの世界には“個性”という名の超能力が存在し、地球上の総人口の約8割が個性を有している
個性の内容は遺伝で決まることが殆どで、両親の何方かの個性を引き継いだり、両方の要素を兼ね備えたり、はたまた新たな個性を持って生まれることもある
そんな個性は大体3歳から4歳に掛けて発現し、発現しているかわかりにくい個性でも専門医に掛かれば保険適用内で調べて貰える
そして私の前世とほぼ同じ地形や歴史を持つこの世界には個性社会ならではの人気職業がある
それが“ヒーロー”
個性を悪用して罪を犯す“敵”から街を守る警察官の上位互換みたいな存在だ
世間の扱いで言ったら前世で言うところの仮面ラ◯ダーとかプリ◯ュアに近い感じとも言える
要は性別関係なく子供の心を鷲掴みにしているとだけ覚えておけば問題ない
そして今は保育園にてお昼寝の時間の真っ只中
早目に起きた私が周りを起こさない様にと話し掛けてきたこの保育士さんは、私達年少クラスの担任をしている人だ
因みに私の年少クラスは星組で、年中クラスは月組、年長クラスは太陽組という名前になっている
今迄の私らしく、子供らしく返事をして、保育士さんに手を引かれて星組の教室へと向かう
そして画用紙とクレヨンを使って絵を描き時間を潰していく
優しい笑みを浮かべながら話し掛けてくる保育士さんに、少し舌っ足らずな返事をして同じく笑みを向ける
楽しみと言えば楽しみだが個性の内容はもうわかりきっているので、後はどのタイミングで試してみるかだけだ
取り敢えず今日から帰ったら家で個性が使えるか試してみようかな
因みに私が死神さんに頼んだ個性という名の超能力は2つある
1つは名前を呼ぶと推しが喚べ、技名を口にすれば推しの能力が扱える“二次元”
もう1つは推しの髪型と服装に一瞬で変身出来る“仮装”だ
コスプレの個性に関しては本当にただ変身すふだけなのだけど、推しの能力使う際にどうせならコスプレもしたいよねって言う私の好みで追加して貰った
序でに言うと父親の個性は“変化”と言い、現存している動物に身体の一部や全身を変化させることが出来、その動物の特徴を手に入れる
そして母親の個性は“夢枕”と言い、人を眠らせその夢に干渉する事が出来、この前父親の誕生日にサプライズを仕掛けるべく夢で打ち合わせをした
それと単なる遺伝的な容姿で意味のないものなのか、はたまた死神さんの裁量で足された第3の個性なのかわからないが、何故か私にも獣耳と9本の尻尾が生えている
髪色と言うか毛色が紺色なのでわかりにくいが、父親曰く狐であろうとのこと
まあこれに関しては検査すればいいや
同年代に比べて比較的口数が少ない私にそう言って話題を探そうと画用紙を指す保育士さん
きっと将来のことを考えて社会性を身に付けようと頑張ってくれているのだろうけど、精神年齢のせいで子供らしい振る舞いが出来そうにないだけなんですごめんなさい
取り敢えず聞かれたこと位は答えよう
そう結論付けて最早資料を見るまでもなく描ける様になった推しのことを語ろうとする
そう我等が刀剣乱舞の愛しの短刀いまつること今剣
前世で私が始めて鍛刀した子でもあり、勿論満遍なく育成していたが特に力を入れていた子の一口だ
史実を思い出しながら幼い故に上手く回らない舌で如何にか説明しようと頑張る私のことを微笑ましい目で見る保育士さん
雰囲気からして内容は重要じゃないのか、恐らく理解していないであろう感じはするがまあいいや
一先ず語り出したからにはうちの子の愛を一度全て吐き出そう
拙いながらも続けてこの可愛らしい子は女の子ではなく男士だ
そう言い切ると
視界を遮る程の美しい桜吹雪と共に
画面越しながらも聞き慣れた愛らしい声を鈴の様に転がし
静止画の一枚絵でもなんでもなく
確かな存在として私の目の前に現れ
実物を目にしたが故の過剰な尊さにより、容易く私の意識を掻っ攫っていった
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。