第4話

ハンバーグが引き起こす感情
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2023/07/16 06:31
手慣れた手つきでハンバーグ作りを始める
小さい頃は泣いて切れなかった玉ねぎが、今は簡単に切れる
小さい頃はお母さんと一緒に作った
お母さんは優しかった
私が怪我をしたらすぐに駆けつけてくれて
私を叱る時も、“今の”お父さんとは違って暴力は振るわなかった






































































そんなお母さんは、私が小学1年生のころに病気で亡くなった
そこからだろうか
お父さんがおかしくなったのは
毎日お酒に頼りっぱなし、仕事でイラついたことは全て私に当たって
気がついたら、私にちょっとしたミスで殴られるようになった
学校でいじめられていることを話したら
“お前がヘラヘラしているからだろ、原因はお前にある”と
私に目も向けてくれなかった
私が悪いんだ、と何度も死のうとしたことがあるが、成功したことは一度もない
だからこうしてハンバーグを作っているのだけど
私の右手には包丁がある
今は玉ねぎを切っているが、方向を変えるだけで私も切れてしまう
切ってもいいが、ここはこえくんの家。
流石に人の家は汚してはならない
次第に私の目には涙が浮かぶ
これは玉ねぎのせいだと必死に涙を拭くが、心の中の雨は降り続ける一方で
あなた
…ヒック…グズッ
だが、この涙がどこからきたのか分からない
死にたくないのか、死にたいのか
お母さんに会いたいのか、あの痛みを思い出したのか
気がついたら、私の持っていた包丁は私のお腹を向いていた
あなた
はぁ…はぁ…
あなた
もう…いいかも
こえくんなら、汚しても許してくれるかもしれない
そう思いながら、包丁をお腹に近づけたら
Coe.
Coe.
あなたちゃん!!
名前を呼ばれたと思ったら手の包丁を無理やり離された
Coe.
Coe.
な、なにやって…
あなた
んで…
Coe.
Coe.
え?
あなた
何で止めたんですかっ…!!
Coe.
Coe.
何でって…あなたちゃんが危ないことしてるから…!
あなた
もういいんですっ…!ハンバーグ作りながら色々考えてたらっ…なんか…もうっ…!
あなた
どうでも良くなってっ…!
あなた
お母さんは死んじゃうし…お父さんにはいじめのこと気にしてもらえなくてっ…それに加えて暴力も…
学校の子達も、私のことどうでもいいし…神様から…お前なんかいらないって言われたみたいでっ…
あなた
もうやだっ…
そう訴えると、こえさんが
今までで一番強く、私を抱きしめた
Coe.
Coe.
大丈夫っ…!大丈夫だよっ…!身近な人はあなたちゃんのこと必要としてなくても…世界には何十億人もの人がいるから…!
Coe.
Coe.
誰か一人は、君のこと必要としてるっ…!
あなた
…っ!
Coe.
Coe.
それと、もう…いるよ
必要としてる人
そう言って私から離れる
Coe.
Coe.
ここにっ!
彼はそう言って、泣きながら自分を指差す
あなた
っ…!
よ、良かった…っ!
あなた
私のこと、必要としてくれる人が…いて…っ!
こえくんに抱きつく
そして、ひたすら泣いた
こえくんは私を抱き返してくれて
今まで、誰かの胸の中で泣いたことがなかった私は
こんなに、暖かいんだ
そう思った
Coe.
Coe.
落ち着いた?
あなた
うん…あの、ありがとう…!
Coe.
Coe.
うん…どういたしまして!
そういうとこえくんは立ち上がる
あなた
ど、どこに…
引き止めてしまった
なぜ引き止めたのか、自分にも分からない
でも、行ってほしくない

そう思ってしまった
Coe.
Coe.
ん?ハンバーグ作るの!
あなた
え…!だったら私が、!
Coe.
Coe.
あぁ、いいの!あなたちゃんは座ってて!
あなた
で、でも、料理できないんじゃ…
Coe.
Coe.
レシピ見れば大丈夫でしょ!
そう言うと、こえくんは行ってしまった
数十分後
ハンバーグとは別に、黒い何かが出てきた
あなた
こ、これは…?
Coe.
Coe.
ハ、ハンバーグ…
あなた
え?
違う何かかと思っていたら、まさかのハンバーグだった
Coe.
Coe.
こ、焦がしました…
彼はそっぽを向きながら言う
あなた
ぷっ…あははっ!
Coe.
Coe.
ちょ…っ!笑わないでよ…!
あなた
こえくんてば、こまめに蓋開けて確認しなかったの?
透明な肉汁が出てくれば、火が通ってるサインだよ!
Coe.
Coe.
そ、そんなの書いて無かった…
笑いながら聞くと、そう答えた
Coe.
Coe.
ふふっ…でも良かったぁ!
あなた
ん?何が?
Coe.
Coe.
あなたちゃんが笑ってくれて!
あなた
…!うん…ありがとう!
そうニコッと笑うと、こえくんの顔が赤くなった
あなた
ん?こえくん大丈夫?熱?
Coe.
Coe.
〜…っ!//な、何でもない!
その日は、こえくんの作ったハンバーグを食べた
見た目どうり苦かった
だが、何か、優しい味
ハンバーグを食べた私はお風呂を借り、ぐっすり眠った

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