コンサートマスターのティルーチェは、ヴァイオリン奏者たちのボーイングがなかなか合わないので指導に苦戦していた。
ヴァイオリンはみんなボーイングをコンマスに合わせないといけないのに。
気が合わないのかティルーチェとセレーネのボーイングがどうしても合わないらしく、指導に時間がかかっていた。
誰かのボーイングが合えば誰かのボーイングがずれる。
今ヴァイオリンセクションはそんな状態だった。
ザリーノとノーラ兄妹は、昼休憩の時間で弁当を取りに行きたそうだった。
そこへアルトがダンボール箱を取りに行こうとしていたので、ノーラは慌ててアルトを引き留めた。
ノーラとアルトは震えながら話をしていた。
その時、「はい!!昼休憩!!午後は全木管セクション合奏なので早く来てください!!」とティルーチェの怒りの声が響き、ヴァイオリンセクションは解散した。
アルトはオーボエ奏者なので午後から合奏。ノーラもフルート奏者なので合奏入り。
ティルーチェが怒っているまま合奏に入ってしまったのだ。
木管セクションほぼ全員、震えながらティルーチェが来るのを待っていた。
アルトは懸命に、
と祈っていたが、パートリーダーのテナーが、
と指示を出した。
一斉に木管楽器の音が鳴り響く。
正確に言うとA(ラ)の音が鳴り響いていた。
神無のファゴット、ユーナのオーボエ、バークレイのクラリネット、ソプのエスクラ、ノーラのフルートのチューニング音が一斉に鳴り響く。
アルトもそれに合わせてチューニングのAを出した。
オーボエの憂いのある音が響く。目を閉じて、耳で音程を聞く。少し高い。いいや。息で合わせてしまえ。
テナーのフルートがその後に入る。
その音の綺麗なこと綺麗なこと。
いやバカ、入ってくんなおまえ。
合奏中は完全にティルーチェは心を入れ替えたようで、特に何もなかった。ビクビクしているご様子の木管楽器セクションたちだったが、(ふざけたりしていなければ)怒りが飛んでこないティルーチェに安心感を覚えた
それと同時に、ティルーチェ、よく心入れ替えたなと思った。
合奏の休憩時間、アルトは今度こそ!!と思いティルーチェの方に近寄る。
アルトは震える声で話しかける。一方ティルーチェは、大人の笑みで答える。
やっとのことで、アルトは外食のお誘いを口にした。






















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。