私が結婚したのは、19歳の時でした。
父親の仕事の関係で、出会った方でした。
第一印象は…
驚く程、緊張されていました。
名前も、震えた声で詰まりながら答えたかと思うと、
2人になったとたん、なにか喋らないと、と焦ったあなたは、水をこぼしましたね。
あなたに会ってから、笑顔が増えた気もします。
でも…
いざ結婚、となると、私は戸惑ってしまいました。
だって、好きな人がいたからです。
近所に住む、同い年の人です。
その人は、私の初恋の人でした。
結局、私はお見合いをしました。
初恋の人は、思い出のまま。
そんな私にも、娘ができました。
可愛い、可愛い、一人娘です。
夫が病気で亡くなって、
私も病気になって。
そんな時、娘は、結婚を決めたと言ってきました。
どうしてでしょうかね。
良いニュースだと分かっていながら、
娘のことを何十年も見てきた私は、この結婚を疑問に思ってしまったんです。
「どう、お母さん、気分は」
「とっても良いわ、あと何十年も生きられそう」
「それは良かった」
何か覚悟を決めたような、顔で、最近お見舞いにくるんです。
「結婚の準備はどう?そんな私に構わず、二人の時間を大事にしなさいよ。」
「うん、ありがとう」
やっぱり娘は、何かを我慢しているのでしょうか?
女だって、一途です。
一途ですよ。
…そうよね。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!