妻と喧嘩してしまった。
ドンッ。
妻と肩がぶつかった。
それが、ちょうど機嫌が悪かった妻の発火点になってしまったらしい。
妻の文句が飛び交う。
それが、少しだけ頭にきたのだ。
俺らしくもなく言い返してしまった。
大きく目を見開いた妻の反応に、心底やってしまったと思った。
たまたま機嫌が悪かっただけの妻を完全に怒らしてしまったのだ。
バンッ!
勢いよく脱衣所の扉が閉まった。
本当にどうしよう。
ガラッ。
どうやって謝ろうか、しばらく考えていると、いつもよりだいぶ早く妻が風呂を出た。
フイッ。
そっぽを向かれてしまった。
結構心にくる……。
……先に風呂に入ろう。
ガラッ。
脱衣所のドアを開けると、妻が髪を乾かし終わっていた。
いつもは俺がやってやるのに、今日は髪を触らせてくれなかった。
……悲しい。
……そういえば、触れる云々より前にそもそも同じベッドで寝られるのだろうか?
以前何かで喧嘩した時は、真冬の寒い中、寝室のドアを目の前で閉められ、冷たいソファで凍えながら寝るはめになったっけ。
翌朝、浅い眠りから目が覚めると腰がバキバキだった覚えがある……。
でも、あの調子だとなぁ……。
よし。……
今日はソファで寝よう。
覚悟を決めてソファに置いてあるリモコンをどかそうとすると、
驚いて後ろを振り向くと、妻が立っていた。
『寝るよ』?
え?
妻が歩いていくので、慌てて追いかける。
ガチャッ。
……寝室の扉を開けて、閉めようとしない。
ということは……?
ベッドで寝られるのでは!?
良かった。
明日は死ななくて済みそうだ。
そのまま寝室に入ってドアを閉めた。
妻はすでにベッドに入っていた。
よし。
どうやら、そんなに起こっていないらしい。
明日の朝に謝ろう。
そう自分に言い聞かせ、ベッドに入って目を瞑る。
……ギシッ。
ん?
なんだ……?
チュッ。
唇に柔らかい物が当たった音がした。
バッ!
俺が飛び起きると、同時に妻も布団に潜ってしまったようだ。
さっきの唇の感触を思い出しながら、確認するように口に手を当てる。
……ヤバい。
……違う意味で寝られない。
朝。
俺が寝不足気味なの以外は、いつも通りに時間が進んだ。
カッカッ。
革靴のつま先を揃える。
毎朝、妻に作ってもらう弁当を鞄に入れる。
妻がにこっと微笑む。
俺もそれに応えるようにして微笑んだ。
一歩を踏み出して、ドアに手を掛けようとしたとき、
チュッ。
妻に口づけをして、ゆっくり離す。
それに目を見開いて、顔から耳まで真っ赤にしている妻に思わず笑ってしまう。
可愛い妻を尻目にドアを開けた。
あとがき
こんばんは。
可惜夜ですよー。
『喧嘩とキス』どうでしたでしょうか?
貴方が楽しめたなら幸いです。
私自身、喧嘩モノって好きじゃないんですよね。
でも、書いてみました。
なんででしょうね?
私にもわからん。
でも、幸せならOKです。
次の更新はいつになることやら……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。