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「あなたの名字さん、ですか、」
「あっ、は…い…」
振り向いた先にはメガネにマスクの彼がいた。
「…本物…」
「どうも、川西です。」
「ぞ、存じ上げております..っ…」
私はあの日忘れ物をしたらしく、次の日メッセージが届いていて死ぬほどびっくりした。
知らない番号からショートメッセージがあって、開いてみたら衝撃的な文面だった。
会社で入社時からお世話になっていた先輩が急に退職することになって悲しいのと、和牛が賞レースで優勝を逃したのが重なって、バーで潰れるように飲んでいたあの日。
正直、喋ってた時は意識がわりとしっかりしてたと思うんだけど、帰ってきて死んだように寝たら何を話したのかあんまり思い出せない。
名刺を渡したのは覚えてるけど…。
若干疑いながらそう返して、数日後の今日、指定されたカフェで待っていた私に声をかけてくれたのが、まさに憧れの人である川西さん本人だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。