第19話

試練-琥珀の黎明「完全食」
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2024/12/15 03:40 更新
カプチーノ
…すまない、諸君。私のミスだ。あいつらは収容室の扉の幅を越えられないから、まずは落ち着いてくれ。“セフィラ”に連絡しなくては…ネム君、無線を。
重い空気の中、カプチーノ先輩が口を開いた。でも…なんとなく、なんとなくだが…こんな非常事態の中なのにどこか落ち着いている、そんな気がした。
カプチーノ
[失礼。職員カプチーノだ。新人研修中に“完全食”が発生した。非常事態につき、現場指揮を取れる手空きのセフィラは無線に合流してくれ。]
カプチーノ先輩がネムネム先輩の無線で連絡を取っている間に、ネムネム先輩が懐から注射器を取り出した。薄い緑の液体が入っている。
眠い
おい、とりあえずこれを使え。再生アンプル…の、劣化版だが、止血剤と鎮痛剤代わりにはなるだろう。
ナポリタン
えっ…あっ、ありがと…ゴザイマス…えっと、フォカッチャ…これ!
フォカッチャ
おい、しっかりしろ、ペパーミント…!
オレンジ
あなたの好きな食べ物/植物(カナ)ちゃん、キャロットちゃんは触らないで。わたしがやるよ。
あなたの好きな食べ物/植物(カナ)
あ、ああ…
キャロット
お願い、お願い…死んじゃいやよ…!
そのとき、私たちの無線からいかめしい声が聞こえてきた。無線越しの声だけでも威圧感を感じる。全員がそのピリピリとした雰囲気を感じとって動きを止めた。なぜか先輩たちの顔色が悪くなる。
???
[はぁ…間抜けども、今の状況を教えろ。]
声を聞いて、カプチーノ先輩は信じられないと言った顔をした。
カプチーノ
[…君が、現場指揮を?本気かね?“完全食”を叩きのめしたいだけじゃないのかね?]
???
[当たり前だろう。なぜ私が弱っちい奴らの世話なぞ見にゃならんのだ?]
カプチーノ
[はぁ…相変わらずであるな。で、状況だが…“完全食”に足をやられたのが2人、それを含めて第二収容室内に9人が退避中である。メインルームに3人が待機しているかもしれないが、動かないよう指示は出してある。]
???
[チッ…役に立たん情報ばかりだな。“イェソド”の方がまだ使えるぞ。…まあいい、どうせ雑魚ばかりだ。今行こう…お前らは震えて待っていろ。1分もかからんさ。]
フォカッチャ
はえー、おっかねぇ…
キャロット
たっ…助けが来るってことよね?
オレンジ
多分…?
当惑の表情を浮かべた私たちをよそに、話はまとまったようだ。
カプチーノ
その通りであるぞ、お二人。皆の衆、話は聞いていたな?応援が来るから安心なされよ!
眠い
カプチーノ、それで伝わるとでも思ったか?
カプチーノ
うむ…そうだ、そういえばさっきは吾輩が説明したから次はネム君の番であるぞ!
眠い
チッ…
どうやら事前にそういう取り決めをしていたらしく、ネムネム先輩は嫌そうに話しだした。
眠い
…マニュアルにあったと思うが、“セフィラ”はお前たちの上司にあたる奴らだ。例外もあるが、1部門につき1人のセフィラがいる。どいつもこいつも気に入らないが、特に…いや、全員クセは強いか。今から来るのは_
その瞬間。

爆音が轟き、血のように赤い閃光が収容室内までもを照らし出した。

ビリビリと空気が振動する。
息が詰まるような圧迫感を感じる。

ビシャビシャと芋虫たちがねじれ切り裂かれ弾け飛び、それの体液らしきものが琥珀色の霧のようになって薄く広がる。
《私たちは生きるために際限なく食べました。必然的な枯渇、ごみたち……》
ぶわっと琥珀色を切り払って現れたのは…赤い義体だ。その手には赤い、肉がこびりついたかのような気持ち悪い見た目の大剣を握っている。剣についた青い目がギョロリとこちらを見て…目があった。思わず息を呑む。誰も何も言葉を発さない。

やれやれと言った調子でネムネム先輩が口を開いた。
眠い
…コイツが“懲戒”のセフィラ、“ゲブラー”。
個人的には一番面倒くさい奴だ。
赤い義体…ゲブラー…さんは、カツカツと歩み寄ってきて、ネムネム先輩の首元にその剣を突きつけた。

…私が一番ネムネム先輩に近いのはなんでだ?あれを振り回されたら足元の私までもがスッパリ切れてしまうのではないかと不安になってしまう。と言うか、一周回って恐怖心は薄れてしまった。あまりのことに脳味噌が麻痺しているんじゃないかな。はっはっは。
ゲブラー
…で?抽出を担当したのはどっちだ?
そう問われて恐る恐るカプチーノ先輩が手を挙げた。
怒っているのか知らないが、ゲブラーさんに気圧されて私たちは声も出ない。
カプチーノ
えーっと…ゲブラー君…その、であるな…
ゲブラー
言い訳は聞かん。まったく、“教育用 擬似E.G.O”を抽出するだけで“試練”を発生させるなぞ…また面倒ごとを増やしやがって。
ゲブラー
おい、カプチーノ…廊下に出ろ。切り刻んでやる。
カプチーノ
…収容室内だとソレを振り回せないからかね?
ゲブラー
良くわかっているじゃないか。
…ここって、翼なんだよね?裏路地じゃなくて?それより酷い気もするけど…ほら、皆んな顔が蒼白だよ。
カプチーノ
…はぁ…ネム君、皆の衆をメインルームまで避難させてくれ。負傷者の治療を。
眠い
ああ。まあ、死ぬなよ。
ゲブラー
ああ、そうだ、職員眠い…お前にも“懲戒処分”指示が出ていたか。ふざけた名前だな。舐めてるのか?
ゲブラー
今は他の用事があるみたいだが…覚悟しておけよ。
眠い
……前言撤回。カプチーノ、お前は一度死んだ方がいい。

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