第20話

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2025/12/27 01:00 更新
花吐き病による嘔吐表現有

大丈夫な方のみお進みください
赤side


袋いっぱいの商品とともに、店を出る。
だんだん人の気配が遠ざかって、山の空気が戻ってくる。

気づけば、太陽の位置はさっきよりもずっと高くなっていた。
…ないくん
ん?
それ、持てる?
半透明の指越しに、袋が透けて見えている。

ないくんは、何も言わずに、
こくんと頷いた。
…りうらは…重く、ない?
えっ?…ぁ、うん!
短く区切られた声に、そう返した。
そっ、か
…沈黙。

風に揺れる木々の音が、やけに大きく聞こえる。

心臓がどくどく鳴りだして、
喉の奥が、変な感じに疼いた。

…あれ、この感じ。
ん゛っ…かふっ
咳が出る。
慌てて唾を飲み込んだ。

…駄目、
今は吐けない。

だって、俺の口から出てくるであろう花は、きっと———
…りうら?
桃色の瞳に覗き込まれる。
…ぅ゛…!
花が、落ちた。

ないくんの目が大きく見開かれる。

…たぶん、その花が、
見開かれた瞳と同じ、綺麗な桃色をしていたから。

半透明の指が微かに震えているように見える。
…ごめん…すぐ、片付ける、から…
……
黒いビニール袋に花を入れて、
口を結ぶ。

ないくんは、しばらく無言だった
———けれど。
…嫌い
小さく、でも、はっきりと聞こえたその言葉。

この前髪じゃ、零れ落ちそうな涙も隠せやしない。
必死で、唇を噛む。
…行こ
ん…
喉の奥が、またひくりと動いた。

今度は、花なんかじゃなくて、
ただ、痛かった。

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