花吐き病による嘔吐表現有
大丈夫な方のみお進みください
赤side
袋いっぱいの商品とともに、店を出る。
だんだん人の気配が遠ざかって、山の空気が戻ってくる。
気づけば、太陽の位置はさっきよりもずっと高くなっていた。
半透明の指越しに、袋が透けて見えている。
ないくんは、何も言わずに、
こくんと頷いた。
短く区切られた声に、そう返した。
…沈黙。
風に揺れる木々の音が、やけに大きく聞こえる。
心臓がどくどく鳴りだして、
喉の奥が、変な感じに疼いた。
…あれ、この感じ。
咳が出る。
慌てて唾を飲み込んだ。
…駄目、
今は吐けない。
だって、俺の口から出てくるであろう花は、きっと———
桃色の瞳に覗き込まれる。
花が、落ちた。
ないくんの目が大きく見開かれる。
…たぶん、その花が、
見開かれた瞳と同じ、綺麗な桃色をしていたから。
半透明の指が微かに震えているように見える。
黒いビニール袋に花を入れて、
口を結ぶ。
ないくんは、しばらく無言だった
———けれど。
小さく、でも、はっきりと聞こえたその言葉。
この前髪じゃ、零れ落ちそうな涙も隠せやしない。
必死で、唇を噛む。
喉の奥が、またひくりと動いた。
今度は、花なんかじゃなくて、
ただ、痛かった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。