第22話

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2026/01/10 01:00 更新
花吐き病による嘔吐表現有

大丈夫な方のみお進みください
赤side


俺とないくんがシェアハウスに来て、1年が経った。

壁を伝う微かな風の音、
カーテン越しの柔らかな光、
リビングに流れる微かな会話———
いまや全てが日常になっている。

皆の容態も、だいぶ変わってきていた。
…持てる?それ…
うん、大丈夫…
いむは、腕のほとんどが宝石と化していた。
いつも両腕を動かしづらそうにしているのが見て取れる。

光を受けて青白く輝くその肌は、
以前のあたたかさをほとんど失っている。

感情が薄れているのか、笑うことも減った。
あのさ、この前のことなんだけど…
あ~…なんやっけ、それ
しょうちゃんは、忘れることが増えた。

彼が泣くたびに、記憶が金平糖となって
全て零れ落ちてしまうのではないかと不安になる。

背中に謎の痛みを訴えることも、度々あった。
…まろっ!落ち着いて———
落ち着けるわけないやろ…っ!
まろは、より、愛に狂った。

その瞳は、事あるごとに赤く光り、
熱を帯びた視線を落とす。

殺人衝動も、増えてきた気がする。

本人も自覚があるのか、
凶器になりうる物に近づくことが少なくなった。
兄貴、大丈…
近寄んな
兄貴は、暴言が日常的になりつつあった。

治療法は、天使病の患者と話すこと。
天使病の患者は、まだ、見つからない。

暴力行為は、必死に抑えてくれているのか、
ほとんど、なかった。
…無理、しないでね
……
ないくんは、喋ることが少なくなった。

話しかけても、常に無言で、
基本はジェスチャーか筆談。

トロイは、まだ治っていない。

…俺には、ないくんが必要なのに?

わからなかった。
彼らの病は、どうすれば治るのか。
…ぅ
そして、俺は———
…げほ…っ
喉の奥が、ひどく痛んだ。
落ちたのは、淡い桃色の花。

最近、花を吐く回数が増えた…気がする。
…はぁ…
力なく垂らした手のひらから、
はらはらと花弁が落ちていく。
…嫌い
なにに言うでもなく、そう呟いた。

花吐き病という、病気が嫌い。
大好きな人たちを、苦しめるものが嫌い。
想いの拗らせ方が嫌い。

…自分が、嫌い…

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