雨が強い日だった
なぜ外に出たかと言えば何となくになる。
けれどその何となくが大切だと僕は思う。
僕は声を掛けた。
似ている人がいたから声を掛けただけであって、別に絶対にそうっていう証拠がある訳でもない。
その人は後ろを振り向いてくれた。
あぁ、やっぱり君はいつ見ても美しい。何故そんな生き方をしてしまうんだろう。
僕を見つめる君の瞳は、もう何も残っていなかった。
勿論、君から見れば僕もそうだろう。
似た者同士仲良くしようよ。
価値のない人間はやりたい事があっても、収まれる場所に居なきゃダメなんだから。
和歌山は少し考えてから答えた。
和歌山に名前を聞かれるとは思わなかったから少しびっくりした。もう和歌山には自信がないみたい
アホらし。
僕は笑顔で言った。
やっぱり僕の気持ちが分かるなんて和歌山はまだ価値があるな。
僕は昔の自分を忘れて、新しい人生を送りたかったから
その事を和歌山は理解している。
昔は和歌山に嫉妬ばっかしてたけれど、やっぱ和歌山は裏切らない。僕と一緒なんだ。
僕と一緒で価値のない人間。
あぁ、何故味方がひとりいるだけで心強いのだろうか。たった1人だけで僕の人生は変わる、僕たちは軽い人生を送っているのだ。
宇宙に、行く?
流石和歌山だな。勉強面では絶対に勝てないや。
神様はなんで和歌山をこんな価値のない人間にしたのだろうか。僕の為とか言ったら許さないから。
どうせ和歌山は一人で行くつもりだろう。なら、僕がついて行ってあげなきゃ、独りぼっちになっちゃう
そうして僕は宇宙船を作ることにした。
和歌山に設計図を見せてもらったが、この設計図では地球に帰る事を考えていない。まぁそうだと思ったけれど。和歌山はその事について僕に説明はしない。言われなくても気づくから良いけど、馬鹿じゃ気づかないからねこんなの。まぁ、僕も地球に帰る気は無いからどうでもいいんだけれどもね。
和歌山が不器用なのは知っている。
長年の仲だし、和歌山は勉強以外何も出来ないことも知っている。僕は和歌山と違って器用で宇宙船を作るくらい余裕だ。和歌山はあの不器用さでどうやって宇宙船を作ろうとしたんだろう。
みんなの出来ることが全く同じだったら良かったのに。そうしたら僕達だって、人を愛すことなんてなかったのに。
そうして1年ほどで宇宙船が完成した。
和歌山は多分、一生帰れないことについて聞いてるんだと思う。僕だって地球に帰りたくない。こんな場所にいるくらいなら死んでる。
僕たちは宇宙船に乗って、宇宙へ行った。
地球は青くて、美しかった。それは遠くから見ているからそう見えるだけで、近くで見たら汚く見える。
やっぱりなんでも、遠くで見ている時は綺麗に見えるんだよね。それに騙される人間がこの世に沢山いる。僕もその1人だったし、和歌山もそう。
和歌山が見たかった景色はこれだったのかな。これでよかったのかな?
良かった。和歌山に元気が出て。僕も何故か嬉しくなる。和歌山の幸福は僕の幸福でもある。だって同じ価値のない人間だから。
1番目、か…
1番目には価値がある。けれど伝える相手が居ないから、本当にそれに価値があるかは知らないけれど。
僕は和歌山に聞いた。ずっと愛されたくって仕方がなかっただろう。先輩の1番になりたかっただろう。
そんな和歌山が独りになろうなんて、人間不信になっちゃったのかな。
はっ、笑
やっぱ人間不信になってる。まぁ、ならない方がおかしいよね。
嘘じゃない愛はみんなが求める。だからみんな、愛に飢えてるんだよ。僕もそう。ずっとそう。誰かに愛されたいが為に生きてきた。けれど気づいたんだよね。
人を愛さなきゃ、人に愛されないってことに。
それが価値のない人間の生き方。
僕は和歌山の頭を優しく掴んでこっちを向かせ、軽く唇にキスをした。和歌山は抵抗もしないし、いつも通り無反応。
あぁ、何故和歌山は神様に嫌われてしまったのだろう。頭が良くて、顔もいい。普通ならば価値のある人間だ。けれど居る場所の位が和歌山には高すぎたんだよね。頭は良くても誰かには負けるし、顔が良くても誰かには負けてしまう。この世界で1番になるのは、難しすぎる。
やっぱり僕達価値のない人間は、収まれる場所に収まって、そこで愛想を振り撒いて、上手に生きるしか選択肢は無いんだ。
誰かの1番になるのは、1人だけなんだから。
僕はもう一度和歌山にキスをした。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。