第13話

溜まる日々
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2026/02/04 04:50 更新



鬱々とした日が続いていた。




部屋のカーテンは閉めたまま、時間の感覚も曖昧で、昼か夜かも分からない。




それなのに、その日はなぜか、ふっと立ち上がってリビングへ向かった。



リビングは明るすぎた。




午後の光がテーブルに反射して、目を細める。




そこに、揃えられた数枚の紙が置いてあった。



白い紙。
見慣れない大学名。
「推薦書」という文字。



……一瞬、頭が追いつかなかった。



手に取った瞬間、胸の奥がざわつく。
紙は軽いのに、ずしりと重い。



「……なに、これ……」



親の字だった。




丁寧で、迷いのない文章。




“本人の将来を考え”
“安定した進路を”
そんな言葉が、綺麗に並んでいる。



最初に湧いた感情は、拒絶だった。



——嫌だ。




——違う。




——これは、私が選んだ道じゃない。



「違う、違う違う違う違う違う違う違う!!」



心臓が早くなり、頭がぐちゃぐちゃになる。




青学に行きたかった。
ぷりっつくんと、同じ大学に行きたかった。




そのために、あんなに泣いて、削って、必死に頑張ったのに。



でも、次の瞬間、思考がすっと冷えていった。



……もう、ぷりっつくんはいない。




隣にいない。
一緒に帰らない。
勉強も、冗談も、励ましも、もうない。



胸の奥が、静かに痛む。
泣くほどの力すら、もう残っていなかった。



——私が青学を目指す理由は、もうここにはない。



推薦書をもう一度見る。
綺麗な言葉たち。




努力、真面目、将来性。



「……これが、私に残された道なんだ」



誰に言うでもなく、心の中でそう呟く。




納得したわけじゃない。
受け入れたわけでもない。



ただ、全部わかったふりをした。



反論する元気も、夢を守る力も、今の私にはなかった。




紙をそっとテーブルに戻す。
音を立てないように。




まるで、自分の本音まで一緒に隠すみたいに。



——この道を選べば、




——私は「普通」でいられるのかな。



答えは分からない。
考える気力もない。



ただ、ひとつだけ確かなことがあった。



私はこの瞬間、自分の気持ちを飲み込んだ。
分かったふりをして、静かに。



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