居間にあるテレビでは、ニュースキャスターが連日話題となっている海に沈んだ帆船のニュースを伝えている。
「昨日未明、引き上げ作業を開始した沈没船が、消えました。原因は分かっていませんが、関係者によると……」
濃い霧が立ち込めたブラジルの沖を、豪華客船が進んでいる。ブリッジで椅子に腰を下ろす船長は、霧で煙る窓外を見つめていた。
航海士がレーダーを凝視していた
レーダーには、客船に向かってくる船が光の点で示されている
光の点は、速度を落とすことなく、一直線に進んでいる
航海士は双眼鏡で向かってくる船を覗き込んだ
深い霧の中から帆船がうっすらと見えた
帆船は、みるみるうちに近づいてくる
船員が無線で呼びかけても反応がない
警告音を鳴らしても、帆船は進路を変えることなく、真っ直ぐこちらへ向かってくる
────まるで幽霊船のようだ
どうにかして衝突を避けようとするが、速度を落とさず迫ってくる帆船をかわしきれそうにない
帆船は、客船の左舷を掠めながら鈍く重い音を響かせて進む
接触した帆船のマストの一部が折れ、海へと沈むがお構い無しに速度を緩めることなく進み、やがて、濃い霧の中へと姿を消した
ふぅ、これでひとまずは大丈夫だろう
陸上人にうろつかれて鬼岩城が刺激されたりなんてしたら……たまったもんじゃない
さて、一休みしたら、また、海中巡回をするとしよう……
ただしより慎重に……少しの異常も見逃さずに……
すべては、ムー連邦の平和と安寧の為に────











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。