第49話

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2024/08/14 09:50 更新
どのくらいの時間が経ったのだろうか


静かな車内で思わずうとうとしてしまっていた頃に、突然車のドアが開いて腕を掴まれて降ろされた



英「…いっ…た」



建物の中に入った後に腕を離されてドサっと尻餅をついたのは、少し硬い椅子のような物で


そこで漸く目隠しを取られた




英「っ…」



暗闇にずっといたから光がやけに眩しく感じて


警戒しながら目を細めて周りを見てみると、何やらここはシンプルな部屋の中のようで


目の前には見知った顔が驚いた表情で自分を見ていた



萌「英二さん…!!よかった!萌果昨日からずっとここの部屋に閉じ込められてて…!」



英「は、え、萌果…?お前マンションに帰ってたんじゃなかったのか?」



テーブルの向こうに座る萌果は、確かに昨日のヘアメイクのままだった


顔は疲労が見えるが、普通に元気そうではある



萌「マンションの前でいきなり車に乗せられて、気づいたらここに…」



英「おいおい…何なんだよ、俺たちに何がしたいんだ」



その時、周りに居た数人の男たちが急に下がった




「よかったね。これから2人はずっと一緒だよ」




声のした方を振り向くと、あいつが不気味なくらい爽やかな笑顔で部屋に入ってきた



英「一緒って…」



「君たちまだ籍入れてないだろ?はい、これ」




机にひらっと置かれたのは、所謂婚姻届で


ボールペンを目の前に置かれてやっとさっきの言葉の意味を理解した




英「いや、何でここで書かなきゃいけないんだよ!それに親父から結婚の話は白紙だって言われてて…」



萌「そうですよ!英二さん勘当されかけてるし…そんな状態の人と結婚したくないです!」



英「は?!俺だってお前みたいな阿婆擦れ女なんか無理だわ!」




思わず声を荒げると、目の前の机がバン!と強く叩かれた




「うるさいな…ギャーギャー騒がないでくれる?これ書けば夫婦になれるんだから、感謝して欲しいくらいだよ。それとも、書かずにずっとこのままでいるつもりかな」



そう言われて両腕を固定している手錠を改めてまじまじと見た


到底自分の力では解けそうにもない



英「…俺たちにこれを書かせる為にわざわざ連れてきたのか。お前に何のメリットがあるんだよ」



自分たちが置かれている状況に頭が追いつかなくて、答えを求めてやつの顔を見上げたが



黒縁眼鏡の奥に見える目は鋭く細められていて、意味ありげに笑っているだけだった










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