___【過去編 竜胆】 side
最初に出てきたのはその言葉だった。
きっと痛いだろうし、怖いだろうし
でもそんな目に遭ったのはオレらのせいだから。
最初は細く開いてた目が徐々に大きく見開き
ゆらゆらと揺らしていく。
今までで見たことの無い目だ。
原因はすぐに分かった。
___________オレに怯えてるんだ.
優しくそう言えば彼女は弱々しく首を横に振る。
それだけ酷い目に遭えば、本能的に体が勝手に動く。
あなたは自分に起こってる状況に混乱してる。
でもきっと、いずれ気持ちが行動に追いつくから
オレのことが嫌になるのも時間の問題だよな。
辛そうにオレを呼ぶ彼女にそう言うが
紡がれる言葉は止まらない。
でも、それ以上喋ったら…死ぬだろうが…。
あなたは優しすぎるから、
そうやってオレを想ってくれる。
でもオマエの身体はもうオレを受け入れないんだよ。
オレは、自分が近づくことによって
オマエを壊したくない。
今のあなたはオレが近づいても壊れちゃうから…。
そう言うと彼女は絶望したような眼差しで
オレを見た後意識を手放した。
ああ、オレ…今最低なこと言ったんだ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!