ケーキも買い終わり、それぞれの家が見えてきた。
家は隣で、親同士ももちろん仲が良い。
それぞれ家の前で別れ、自分の家に入る。
晩御飯の支度をしている母親に『ただいま』と言えば
手に持っているケーキ屋さんの袋を見て、『くれ』と一言。
がめついぞ。
『はやく頂戴』
と鍋に火をつけたままこちらに寄って来ようとする母親を止め
冷蔵庫の中にケーキをしまう。
私は、きちんと手を洗ったあと、冷たいアイスティーと
自分のケーキを1つ取って部屋に戻った。
部屋に着けば早々に、窓をノックする事が聞こえ、
カーテンを空けるとそこには先程まで一緒にいた千冬がいる。
偶然にもお互いの部屋が、向かい合わせになり
千冬の部屋から、ベランダのある私の部屋までの距離は
さ程遠くはない。
鍵を開け中に入らせると、自分もケーキを持ってきていたようで
机に置いて食べだした。
口の端に生クリームを付け、モゴモゴを言葉を発する千冬。
『食べ終わって話せ』
と言うと、
『あざといだろ』
となんとも自意識過剰な返答が返ってきた。
私も年頃の女の子。
いくら幼馴染みだからといって堂々と着替えたりはしない。
毎回毎回このやり取りをして流石に私も疲れているのだが
当の本人は全く気にしてない様子。
よっぽど私の部屋に入れなくなることが嫌なのか
大抵この言葉を言えばすんなり言うことを聞いてくれる。
最初からこのくらい素直であれ。
着替え終わった私は、持ってきたケーキとアイスティーを
千冬がいる机まで運び、一緒に食べ始めた。
千冬はショートケーキ。
私はモンブラン。
今日あったことや、最近できたカフェなど
他愛もない会話を小一時間話していた。
ふと、千冬の高校の話になったときに
頬を膨らませてそう言ってきた。
千冬の将来の夢はペットトリマー
なので、それ関係の高校に進学している。
私は、飲食店経営を目指し、
商業科のある今の高校でマーケティングや会計などを学んでいる。
最初は離れることを躊躇していた千冬だが
何度も話し合って、こういった結果になった。
しかし、高校入学後も
私のいない高校生活が苦なのか、何回もそう言ってくる。
この件に関しては、なに言ってもダメな千冬。
もとは私と同じ高校に着いてこようとしたのだが、
私は、今、千冬が通う高校に本当は行きたいと
思っていたことを知っていたので
ごり押ししてそっちに入学してもらった。
だが、納得いかないのか二年生になった今も
時々こうして聞いてくるのだ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。