side No .
昼休みの中庭。
ベンチでサンドイッチを
食む一人の少年。
「黄瀬 魅琴」
ふわふわとした金色の髪と、
サーモンピンクのグラデーション。
そして、蜂蜜色の優しい瞳。
その姿はさながら、白馬の王子。
温厚な人柄と、
誰に対しても分け隔てない優しさ。
常に笑顔を絶やさない。
そんな彼も、
「六奏皇子」の一人である。
突如として響いた、明るい声。
勢いのまま、魅琴に抱き着く。
けらけらと、笑って見せる
中性的な、一人の少年。
灰色の、ピンクと水色の
入り混じったさらさらな髪。
澄んだ空色の瞳。
耳で揺れる雫型のピアス。
可愛らしい中性的な容姿と声音。
誰からも愛される明るいその人柄。
、、彼もまた、
我らが誇る六奏皇子の一人。
名を、「雨乃 恋鮫」という。
静観を決め込んでいたはずの
周囲の視線が一斉に集まり、
ファンクラブの面々が騒めく。
顔を赤くしながら否定する魅琴に
恋鮫はからかうように笑う。
「まぁ可愛いからいいけど」
なんてことを続けて
魅琴の頭を撫でる恋鮫に向かって、
魅琴は小さく呟いた。
、、、こさみこ推しの生徒たちが
一人残らず昇天したのは
言うまでもないことである。
その現場から少し離れた
生徒会室の窓から一連のやり取りを
見ていた一人の少年が
無意識に力を込めていたのか
シャーペンの芯がぽきりと折れた。
同じく、窓の外の様子を
見ていた藍が呆れたように
溜息を吐いた。
「、、タスク、代わりにやっておきますか」
そう呟く藍を横目に、
再び思案し始める少年。
深い緑色に黒色のメッシュ。
The・優等生な彼だが、
さらさらと揺れる髪の間からは
黒いピアスが覗いている。
、、これぞ「ギャップ萌え」
という奴だろう。
穏やかな声音と
何処か物憂げな紅の瞳。
学級委員長を務め、
学年主席争い常連の
絵に描いたような優等生。
彼もまた、「六奏皇子」の一角。
名を、「翡翠 珠智」という。
毎朝、生徒たちの話題を
かっさらっていく癖に…
そう言いかけたが
ドアの開く音に阻まれた。
祈舞が資料を差し出すと同時に
藍の机に紙袋が置かれた。
凪都と藍が視線を交わす中で
祈舞はごく自然に
ミルクティーを机に置く。
祈舞と凪都の間に
微妙な空気が流れ、
心なしか、
部屋の空気も重くなる。
ほら、自分も大概じゃないか。
そんな意を込めて、珠智が
藍に視線を送ろうとすると
藍は自分にはどうしようもない
と言いたげにこめかみを抑えていた。
すると、扉が勢いよく開け放たれる。
二人の声が重なって響いた。
けらけらと笑う恋鮫への
並々ならぬ嫌悪感を
隠そうともせず口を開く二人。
また、声が重なる。
誰からともなく笑いが漏れる。
恐らく、 彼らこそが、
生徒会長を下の名前で呼べる、
現時点では二人しか居ない
希少な人物である。
「何か反論は?」
という意味を込めた
視線を投げかける珠智に対し、
藍は何か言いたげに口を開くも、
言い争いを繰り広げる
祈舞と凪都を目の前に、
どうこう言えるはずも無く。
諦めたように口を閉ざした。
二人の声がぴたりと止まる。
呆れ交じりの声音だが、
藍の口元は僅かに、
それでいて確かに。
柔らかく、弧を描いていて。
目を見開いた二人は
思わず言葉を失い
刹那、互いの顔を見詰め
舌打ちをした。
これが、六人の日常である。
互いの距離は
近いようで遠く、
遠いようで近い。
“なんとなく”
触れてはいけない
距離感を保ちつつ、
儚い、硝子細工の様な
脆い弱い心を隠して
六人は今日も青い空の下に居る。
全員登場しました…!!










編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!