第11話

ふたりで【🦈】
981
2021/07/04 14:46


フロイド「あぁ~!小エビちゃんみっ~~け!」
『ドゥッッッ』


フロイド先輩からの強烈なヘッドロック(相手はただの肩組み)を受け、思わず人間らしからぬ声が出てしまった。


『どうしたんですか?フロイド先輩』


私が尋ねると、先輩はいつもよりにこやかにパァッと笑った。


『(あ、これすこぶる機嫌いい日じゃない?)』




どうやら私は、先輩の笑顔ひとつで期限の良し悪しが区別できるようになってしまったらしい。


随分長い腕についた大きな左手を、小さく見えるポケットに突っ込んで私の顔を覗き込んで来る。


フロイド「今日さ~~~、小エビちゃんシフト入ってる?」
『今日ですか?確か…今日は夜まで入ってますよ』
フロイド「じゃ~あ、小エビちゃんは夜ご飯ウチで食べて行きなね♪」


そう言って肩組みしてた手を私の頭にポンポンとバウンドさせ、手を振って行ってしまった。
は、はわ………
最近フロイド先輩から何かとお誘い?だったりご飯をよく一緒にすることが多くなっている気がする。
こないだも昼食の時にわざわざジェイド先輩とアズール先輩を置いて私の所にやって来たし、私の事好きなんか?とでも勘違いしそうだ。
そんな勘違いな事を考えても、フロイド先輩にとってただの気分でしかないと考えるとちょっぴりさみしい気も…する、かな。多分、うん。
そんな事をやんわり考えてたら本日最後の授業のチャイムが鳴った。


『やばっ…!!次は錬金術なのに…!!』


ちゃんとクルーウェル先生にお決まりの「Badboy!!」を頂いて、いつもより倍以上にコキ使われましたぴえん。

(あと私のことboyだと思ってたの先生??)










───── オクタヴィネル寮  モストロラウンジ


『はい、こちらのメニューは今月限定メニューとなっておりますので、オススメですよ』
「じゃあこのセットで」
『かしこまりました』


注文を受け取って、厨房に回す。
今日はそこそこの混み具合なのに、全然人手が足りなくて忙しい。
他のホールも忙しくしているようだ。
でも、今日のモストロラウンジは雰囲気がいつもよりなんというか凄く柔らかい。
まあこれも、超機嫌いいフロイド先輩のおかげなんだけど。


「なあ、聞いたか?」
『ん?』
「今日の厨房、フロイド先輩なんだけど鼻歌が聞こえてくるんだよ」
『ああ、今日は多分すこぶる機嫌いいよ』
「だよなあ、俺も思った。今日挨拶したら笑顔で返されたもん。いつもは適当なのに」
『良かった…じゃん?それは良いのか??』
ジェイド「貴方達、お話ししてないでちゃんと働いてください」
「副寮長!すみません!」

急に背後から現れたジェイド先輩の登場により、会話が強制終了した。


さっきまで話してたクラスメートはそそくさと仕事に戻って行ってしまった。


『ジェイド先輩、今日はなんだか嬉しそうですね?』
ジェイド「ええ…貴女も随分頬が緩んでらっしゃいますけどね」
『だってあんなに機嫌いいフロイド先輩、珍しくないですか?』
ジェイド「今日は朝から張り切ってましたからねぇ…」
『張り切る?何にですか?』
ジェイド「貴女には一生分かりませんよ」
『え、何それ超気になるんですけど…
というか先輩その発言私の事馬鹿にしてますよね』
ジェイド「いえいえ、そんなことは1度も」
『嘘だぁ~~~』
アズール「こら二人とも、喋ってる暇があるなら働いてください」


いよいよアズール先輩まで話に加わってきて、三人でラウンジの隅からホール全体を見渡す。


『それさっきジェイド先輩にも言われましたよ』
アズール「貴女がサボっているからでしょう。給料下げますよ」
『そ、そこは…私モストロの看板娘なので許してください!』
アズール「貴女を看板娘にした覚えはないのですが」
『アズール先輩ヒドイわ…!私の事、好きじゃなかったのね…!』
ジェイド「アズール、貴方そんなに薄情な…」
 アズール「何でそんな話になるんです?!
まったく…!貴女とジェイドのたまに見せるその変なノリは何なんですか…」
『ゆうじょうのあかし』
ジェイド「ズッ友」
アズール「何馬鹿なことを…」
『ねえジェイド先輩、アズール先輩も仲間に入れて欲しいって』
ジェイド「仕方ありませんね、では三人でさんこいちになりましょう」
アズール「入れてくれとは頼んでませんよ!!」

フロイド「なーーに三人で楽しそうにしてくれちゃってんのーー????」
『おわっ』


急に肩に重みが乗っかって、ぐらっと前に揺れる。
後ろを振り向くと、フロイド先輩が私に寄りかかっていた。


ジェイド「おやおや フロイド、厨房は?」
フロイド「ちょーっときゅうけ~い。
もう閉店だし、俺居なくても回せるでしょ~?」
アズール「もうそんな時間…店の閉店作業をそろそろ始めますか」
ジェイド「さ、貴女も持ち場に戻ってください。
…フロイドもあなたさんを離さないと店を閉めれませんよ」
フロイド「ねぇ小エビちゃん、もうちょっとこうしてていーい?」


ずしりと私の肩に重く伸し掛る、フロイド先輩の腕。
丁度良い高さの私の頭に顎を乗せ、カクカクと口を開けて楽しんでいる。


『フロイド先輩、そろそろ戻らないとほんとに私の給料下げられちゃいますよ~…』
フロイド「だぁめ!小エビちゃんはまだここで俺とギュッてしてるの~」
『ギュッていう力の強さじゃないんですけど』


首の辺りがギチギチミチミチ言ってない?


これ大丈夫そう?私の首ちぎれてない?
行かなきゃ行かせないの攻防をしていると、いつの間にかモストロの閉店作業が終わってしまっていた様だ。


アズール「あなたさん、フロイドとサボりですか?
給料、下げますよ」
『首締められてました』
フロイド「人からのハグを首締めとか言わないでもらえる~?」
ジェイド「グゥゥゥギュルルルルルルルル」
フロイド「は?もうお腹すいたの?
ジェイドさっき大皿にチャーハン盛ってかき込んでたじゃん、エグ~」
ジェイド「失礼、燃費が悪くて…」
アズール「お前の場合は胃袋ダークホースでしょう」
フロイド「じゃ~あ~!
俺、今超イイ気分だから賄い作ってきてあげる~」
『え!』


フロイド先輩はルンルンにスキップをして、厨房に消えていってしまう。
さて、そろそろ帰る準備をしなくちゃなあ…
私がネクタイを外し始めると、アズール先輩の手が私の肩に乗った。


『?』
アズール「ああ…あなたさんはまだ帰らないでくださいね」


ニッコリと笑うその笑顔の裏に、絶対帰さないぞという圧が凄い…!!
そんなの呼び止めたら、私なんて賄い食べ尽くしちゃうよ!?(?)


ジェイド「おや、もういい匂いがしてますね」
アズール「ほんとに今日は調子良いんですねぇ…
いつもこうだと嬉しいんですが…」
『アハハ…でもココ最近、ずっとじゃないですけどフロイド先輩機嫌いいですよね』
ジェイド「(それはココ最近あなたの寮に通いつめてるからですよ)」
アズール「そうですね…そろそろ進んでくれればいいんですけど」
『?』
フロイド「できた~!早くぅ食べて食べて~!
小エビちゃんももちろん食べてくよね~」
『私もいいんですか?先輩、ありがとうございます』
フロイド「……!」


フロイド先輩から返事が返って来ず、不思議に思い後ろを振り返る。
フロイド先輩は口に手をついて、私から顔を背けていた。
背が高いからどんな表情をしているかまでは分からないけど、照れてたりしたら可愛いなあ。


『先輩?早くご飯食べましょう』
フロイド「い、今行く~」
ジェイド「二人とも早く食べて下さい。
僕が全部食べてしまいそうです」
アズール「まったく、ほんとにお前は……」
『わ、凄い美味しそうですね!いただきまーす!』


エビが入ったパエリアだったり、リゾットやパスタなど、賄いとは思えない程のクオリティだ。
丁度お腹が空いていて、どの料理もキラッキラ輝いて見えてくる。
近くにあったパエリアを取って、口に運ぶ。


フロイド「小エビちゃん、ど~お?」
『…ば、』
フロイド「ば?」
『バカうまですこれ……やばい…毎日食べたい…』
フロイド「…っ!」
 アズール「(ほんとこの2人は焦れったいですね)」
ジェイド「そういえば、今日寮生からこんなことを言われたのですが…」


ジェイド先輩が寮生から聞いた昼の話を切り出すと、アズール先輩の顔色が変わった。


アズール「はい?!!なんでそれをすぐに僕に言わなかったんですか!??」
ジェイド「いやぁ、すいません。丁度お腹が空いていてすっかり忘れていました^-^」
『(絶対思ってなさそう)』
フロイド「あ~、それ俺が朝に聞いたやつじゃね?」
アズール「もっと早く教えてください!!」
フロイド「オレ、言ったよ~?そしたらアズール、その話は後でって言ったんじゃん~」
アズール「…………あの時ですか!?
あーーータイミングが悪すぎます!!」


アズール先輩は「2人でご飯食べててください!」とジェイド先輩を連れてVIPルームに入って行ってしまった。
隣のフロイド先輩は我関せずという様子だ。


フロイド「小エビちゃん…」
『はい?』
フロイド「オレねぇ、今日小エビちゃんの事誘うのめっちゃ緊張したぁ~」
『今日…ですか?』
フロイド「そー!今日めっちゃ頑張った~ねえ小エビちゃん、手、繋いでもい?」


フロイド先輩が私の横に手を伸ばして、手のひらを上にしてテーブルに置いた。
私は思わずぱちりと瞬きをして笑う。


『ふっ、ふふふ…あはは!』
フロイド「えっ、なんで笑ってんの?!」
『だって、フロイド先輩おかしくて…
許可なんてなくても手なんていくらでも繋ぎましょう』
フロイド「…!…小エビちゃん、ホントそーゆーとこ……」
『え?そんなところないですよ』
フロイド「あーーーやっぱ小エビちゃんウケる!
食べ終わったらさー、寮行っていー?」
『いいですよ。あ、こないだ先輩が置いてった映画、一緒に見ませんか?』
フロイド「あのホラー?いいよぉ、明日休みだしぃ」
『じゃあ決まりですね!』




アズール「ジェイド、あの二人ってやっぱり……」
ジェイド「ええ、アズール。あの二人あれで付き合ってないんですよ」
アズール「恐ろしい…」









帰りはフロイド先輩が寮まで送ってくれて、そのまま映画見てお泊まりをした。


フロイド「小エビちゃん、おやすみぃ~」
『おやすみなさ~い…』
フロイド「(小エビちゃんかわいー…)」


そんなことを思いながらフロイドは重たい瞼に抗えず、眠りについた。









── こんな2人が自分自身の気持ちに気づくのは、まだもうちょっと先のお話である











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めっちゃ長かった~~~~~~~!!!
お久しぶりです🤦🏼‍♀️
最近こればっかり書いてて他が疎かでした…



こんなに1話に詰め込んだの初めてです笑



いつも2話とかに分けてしまうので😹



4000字くらい書いてました、、

最近学祭の準備に追われてて、家に持ち帰ってやるくらい、追われてます🥺
結構やばいです🥺🥺🥺🤦🏼‍♀️🤦🏼‍♀️🤦🏼‍♀️
あれ、頑張ってるんだけどな🥺🥺🥺🥺



とにかく、今後もこんな感じのペースになっちゃうかもしれないです、、申し訳ないですー!!!

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