芝生に腰を下ろしていたドイツの大きな手を、
彼女は両手で包み込み、
指先をくるくると弄んでいた。
読んでいた本を閉じ、
ドイツは横目で彼女を見下ろす。
唐突なお願いに、彼は少し眉を寄せる。
そう言いながらも、
期待に満ちた瞳を拒むことはできず、
大きな手を伸ばして撫でてやった。
彼女は嬉しそうに目を細め、
芝生にころんと横になる。
青空を見上げながら、無邪気な声が響いた。
その一言に、彼の心臓は不規則に跳ねる。
草の香りと陽光のぬくもりの中で、
自分の理性が揺らぐのを感じていた。
思わず撫でながら、口をついて出た。
彼女はきょとんとした顔でただ笑うだけで、
意味を理解していないようだった。
彼は視線をそらし、胸の中で思考を巡らせる。
軽い溜め息をつき、
照れ隠しのように指先で彼女の額を小突く。
「いたっ」と笑って芝生に手をついたその横で、
白い小さな花がひっそりと芽吹いていた。
眉をわずかに動かしつつも、
空へと視線を戻した。
だが次の瞬間、
彼女がじりじりと距離を詰めてくる。
──耳元で、かすかな「ちゅ」という音。
大きな肩がわずかに跳ねる。
頬を染めた彼女は、恥ずかしそうに微笑む。
ドイツは一瞬言葉を失った。
彼女の表情はどこかぽやぽやと緩んでいる。
ドイツはその頬に大きな手を添え、
低く抑えた声で囁いた。
一瞬だけ瞳に鋭さが宿る。
けれど彼女はにへらと笑い、
ドイツの肩に甘えるように寄りかかった。
ドイツは結局、その重みを受け止め、
大きな手でそっと頭を支える。
肩に感じる温もりが、
不思議なくらい心を揺さぶった。
視線を空へ向ける。
空の青がどこまでも広がっていた。
浮かぶのはーー
イタリアの笑顔…日本の静けさ。
イギリスの皮肉…中国の世話焼き。
…他にも…。
それなのに、彼女は確かに「彼女自身」だった。
──(……お前は、一体……何者なんだ)
答えの出ない問いを胸の奥に沈める。
眠りについた彼女の髪をもう一度撫でると、
足元にはまた、小さな白い花が咲いていた。
その時、ドイツの携帯が震える。
慣れない手つきで画面を覗くと、
一文が表示されていた。
差出人はイタリアだった。
小さく息を吐き、低くつぶやく。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。