ぼんやりと , 赤みの引かない手首を見つめる
あんな力で掴まれたらこの結果は当然だし
そもそも私が嘘を吐いてしまったのが悪いんだ
いつも穏やかで優しいおっぱに ,
あんな顔をさせてしまうぐらいだから
これぐらいが妥当な罰だと思う
sh「 … まだ痛い , ? 」
遠慮がちに覗き込むおっぱの瞳は
ゆらゆらと揺れていて
まるで不安定な波のようだった
sh「 ごめんね … あなたの綺麗な体に … , 」
sh「 今日は家事も全部おっぱがやるから
あなたはここで座ってて 」
「 うん … ありがとうおっぱ 」
そう言い残してキッチンへ向かうおっぱの背中を
私はただぼんやりと見送った
冷蔵庫を開ける音 , 包丁を取り出す音
手際のいい生活音だけが部屋に響いて
さっきまでの出来事が
全部夢だったような気さえしてくる
「 …… 」
手首へそっと指先を滑らせると
少し熱を持っているだけで
痛みはもうほとんど無かった
おっぱだって好きであんな事をした訳じゃない
私が嘘を吐いたから ,
心配をかけてしまったから
だから , しょうがなかったんだ
「 … おっぱ , 」
sh「 うん , ? 」
申し訳なさなのか不安なのか
よくわからない感情が混ざって
気付けばおっぱに抱きついていた
sh「 ㅎ どうしたの , ㅎㅎ 」
「 寂しくなっちゃった ? かわいいね , ㅎ 」
sh「 でも今は刃物もあって危ないから … 」
もう少しだけ待っててね , なんて
火を消しながら言うおっぱ
普通に考えればまさしくその通りで
素直に離れるべきなのだが
自分でも分からないぐらいに
“ 拒絶された ” 感覚の方が何故か強くて
離れるどころか一段と強く抱きついた
sh「 … あなた ? 」
困ったように笑う声が聞こえる
それでも腕の力だけは抜けなくて
顔を背中へ埋めたまま小さく首を振る
「 … やだ , 」
sh「 ん ? 」
「 …… 離れたくない , 」
言葉にした瞬間
自分でも何を言っているのか分からなくなる
さっきまで怖かったはずなのに
どうして今は
おっぱから離れる方が怖いんだろう
sh「 …… ㅎ 」
ふと頭が少し下がるのが見えて
直感的に笑ってるのだと思った
包丁を離れた場所に移動させ ,
ゆっくりと体の向きを変えると
そっと私を抱き寄せた
sh「 怖い思いさせたのに , それでも
おっぱの所に来てくれるんだ , 」
頭へ唇が触れるほど近くで
優しい声が降ってくる
sh「 大丈夫 , 」
sh「 おっぱはもう怒らないから 」
「 安心していいよ ㅎ 」
ぽんぽん , と一定のリズムで背中を叩かれる
昔から変わらない安心する癖
その癖のおかげで胸の奥のざわつきが
少しずつ静かになっていく
sh「 … でも一つだけ約束して ? 」
「 … うん , 」
sh「 これからは何でもおっぱに話してね 」
sh「 嬉しかった事も悲しかった事も … 」
sh「 誰と話して , 誰と会う約束をしたかも全部 , 」
「 うん , わかった 」
頷いた私を見ておっぱは心底安心したように
目を細め , 頬に軽くぽっぽをする
sh「 あなたは良い子だね , ㅎ 」
少しずつ自分自身の世界を狭めているとも知らず
私はただ , おっぱが嬉しそうに笑うから
ようやく安心出来た気がして
おっぱの胸に顔を埋めた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。