シェアハウス生活にも慣れてきたある日の午後。
キッチンで夕食の準備をしていた私は、棚の奥を確認して、わざとらしく大きな溜息をついた。
すると、リビングでパズルをしていた二人がピクッと耳を動かした。
だいすけがガバッと立ち上がると、隣にいたりょうへいも「...りょうへいも、いく。だいすけ、ひとりじゃ、しんぱい」と小さな手を差し出した。
二人はしっかりと手を繋ぎ、勇ましく(トテトテと)キッチンを出発した。
二人が廊下に出た瞬間。
リビングのソファ裏やドアの影から、忍者のような動きでメンバーたちが現れた。
照くんが低い声で指示を出す。
二人の「はじめてのおつかい」を成功させるため、7人の大人たちが本気でスパイごっこを始めた。
廊下を一生懸命歩く二人。
途中、だいすけが自分のパジャマの裾を踏んで、バランスを崩した。
物陰にいた照くんと目黒くんが、思わず飛び出しそうになってお互いを制止する。
だいすけは「おっとっと」と一回転したが、繋いでいたりょうへいの手が支えになって、なんとか転ばずに済んだ。
その光景をレンズ越しに見ていた康二くんは「アカン、今の助け合い......全米が泣くわ...」と、声にならない声を漏らして震えていた。
ようやく突き当りの貯蔵庫に辿り着いた二人。
重い扉を、二人で「うーん、うーん!」と力を合わせて押し開ける。
棚の低い位置に置いてあったケチャップを見つけると、だいすけがそれを抱き抱え、りょうへいが後ろから支えるようにして二人場織のような状態になった。
私が影からそっと様子を伺っていると、二人は「んっ、んっ」と声を出しながら、重いケチャップを二人で仲良く抱えて戻り始めた。
廊下の影で、渡辺くんとラウールが祈るように手を合わせている。
舘様は、もしケチャップが落ちても割れないように、さりげなく足元ん委クッションを投げ込もうと待機していた(流石にふっかに止められた)。
キッチンに帰還した二人は、顔を真っ赤にしながら、誇らしげにケチャップを差し出した。
私が二人の頭を撫でてあげると、だいすけは「えへへ、だいすけ、ヒーロー!」とはしゃぎ、
りょうへいは「……りょうへいも、おてつだい、できたね」と満足げに私の膝に顔を埋めた。
その直後、廊下のあちこちから「ブラボー!!」「最高やったで!!」という歓声と共に、
スマホやカメラを構えたメンバーたちが一斉になだれ込んできた。
照くんが二人をまとめて抱き上げ、康二くんが「おつかい成功記念写真」を撮りまくる。
ふっかが笑いながらケチャップを受け取る。
二人の小さな冒険のおかげで、シェアハウスの夕暮れはいつも以上に温かい空気に包まれた。
自分たちでやり遂げたという自信がついたのか、その夜の二人は、いつもより少しだけ「お兄さん」な顔をして眠りについたのだった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。