やっと、ついた。
私は今、
一年ほどぶりに
我が家の前に立っている。
二年前に
引っ越してきた時と変わらない外装で、
久しい一軒家は
そこに建っていた。
マナは空気を読んで
家の敷地に足を踏み入れようとはせず、
ただ
小さく微笑んで
私にそう促してくれた。
私は
彼にそれだけ
感謝を告げ、
自宅の玄関へ続く
ドアの鍵穴に
そっと鍵を差し入れ、
ロックを外す。
そして
すう、と息を吸い込み、
ドアノブに手を掛けた。
その一言と共に
ドアを静かに開けると、
ドアが開いたことに気づかなかったのか
食卓のある
ダイニングの方から
賑やかな声が聞こえてきた。
靴を脱いで、揃えて、
廊下を歩く。
そんな当たり前の動作でさえ
懐かしいものに思えたり。
そうして
ようやく、
ダイニングに続くドアの前に
たどり着いた。
扉の向こうから聞こえる
男女の笑い声。
深く深く、
深呼吸をする。
ドアノブに、そっと手を掛けて
ゆっくりとドアを開いた。
緊張して
微妙に上ずる声で、
私はそう言った。
刹那、
部屋の中にいた
一同の視線が
一気に私に注がれる。
お父さんと、
お母さんと、
彼らに挟まれて座っていた
知らない女の子の視線が。
その子は
優しそうな瞳を
ぱちりと瞬かせ、
不思議そうに私を見つめる。
笑い声のようにも聞こえる
掠れた音が、
口から震えてこぼれた。
その子の左右に座る
お母さんと
お父さんが
私を信じられないような目で
見つめてくる。
食事中だったのだろうか、
彼らの前のテーブルには
湯気のたつ料理が
数種類並んでいた。
そして、その知らない女の子が
不思議そうに
両脇の二人を見上げ、
首を傾げて
言った。
突如、
つんざくような
引き裂くような痛みが
身体中を駆け巡った。
動揺したように、
焦って問うてくる両親。
でも私は
それ以上に動揺して、焦っていた。
雑に答えるや否や
矢継ぎ早に質問を重ねる。
最後はもう、
縋るような声色だった。
認めたくなかった。
信じたくなかった。
でも___
その言葉を聞いた途端
__目の前が、
真っ暗になった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!