藤澤さんのところで働き始めて数日が過ぎた。
だんだんとこの生活にも慣れてきた。
家に置いてくれている藤澤さんに見捨てられないように、
店のことだけじゃなくて家事の手伝いもしている。
働いて、働いて、夜には気絶するように眠りにつく日々だった。
その時、入り口ののれんがふわりと動いた。
その時、若井さんと一緒に入ってきた軍服の男の人たちが
僕をまじまじと見ていることに気が付いた。
藤澤さんは楽しそうだった。
彼らはここら辺の基地に配属された軍人らしい。
料理が届くと、嬉しそうに声を上げた。
食事を終えても彼らは店を出ず、藤澤さんを交えて談笑を始めた。
ちら、と藤澤さんに目配せをすると、「いってらっしゃい」というように手を振っていた。
外にはたくさんの人が歩いていた。
森の小道のようなところを歩いていくと、小さな丘のような場所についた。
ふと空を見上げると、真っ青な空が広がっていた。
周りにそびえていた木が少なくなって、視界が開けてくる。
丘の上を埋め得つくしていたのは、無数の百合の花。
純白の花弁が、眩しいくらいに輝いていた。
一気に距離が近くなって、思わず後ずさる。
僕は頷き、百合の花に囲まれた空き地に座る。
じぃっと若井さんの顔を見ていると、
とても端正に整っていることに気が付いた。
切れ長の瞳、への字に結ばれた口、綺麗な鼻筋。
それから若井さんは、静かな口調で自分の話をしてくれた。
呼び捨てで呼べることはなんだか距離が縮まったようで嬉しかったが、
弟さんと重ねられることはなんだか複雑な気持ちだった。
僕がそういうと、若井は僕の頭を優しく撫でてくれた。
僕は何故か目から溢れる涙を拭って、藤澤食堂へ帰るべく走り出した。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。