第8話

乱太
30
2025/08/31 09:51 更新
乱太です
苦手な方は🔙

死ネタ(🤕)

乱歩さんがよわよわ

上記の内容が地雷な方はご遠慮下さい。



























太宰が死んだ。


呆気なく。本当に呆気なく。びっくりするくらい呆気なく死んでいった。
敦と鏡花ちゃんを標的にしていた銃の弾を太宰が見て、二人を庇った
二人は与謝野さんの異能が効く反面、太宰は反異能力者だ。だから、異能が効かない
…………それを誰よりも知っている本人の太宰は
二人を庇って心臓を撃たれ死んだ
抗争中で、僕は指示をしていた。太宰は自分の異能を使う必要がある為、現場に向かっていた
ついさっきまで話していたはずなのに
「右に行けば良いんですよね?」って確認をしてくれたから「そうだよ」って返したばっかなのに
大きな破裂音に、倒れる音、敦の叫び声、鏡花ちゃんの焦る声。
…………太宰の最期の言葉








「ありがとう」

太宰は掠れた声で言い遺した
きっと、自分が死ぬことを分かって、僕に言ったんだろう
ああ、もうありがとうなんて言わないで
死なないでよ、お願い太宰

「太宰さんの脈測れません!心臓の音も聞こえません!」

敦の声。嗚呼、そうか……太宰は……



死んだんだ




「太宰を安全なところに運んでから戦闘を、引き続き……」


僕は不思議と、つらつらと指令をその場に居た社員全員に伝えていた
ぎゅっと、拳を握りしめた



















それから一週間。太宰の葬式が執り行われた
探偵社員と……知り合いだと言っていた坂口安吾のみの葬式だった
皆泣いていた。泣きすぎて目が腫れていた皆
でも、僕だけ泣けなかった
死装束を着ている秀麗な顔立ちの太宰を見下ろしていた
静かに寝ていた、起きたら僕の名前を呼んでくれそうなくらい、静かで自然だった。


「太宰……」


僕は何も言えなかった
火葬を終えて、皆家に帰っていった
太宰の遺骨は海の見える、丘の上の墓に納骨することになった
母上も、父上も、こんな感じだった
静かに寝ているような、そんな感じだった
二人とも、いや、三人とも、起きたら僕の名前を呼んでくれそうな顔をしていた
もう誰一人だって、失いたくないって思ってたのに
太宰は死んでいった













「…………」


葬式からしばらく、多分、数週間かくらい経った
元々汚い部屋が、汚くなってゴミだらけになった
福沢さんが見たら絶対僕を叱るんだろうな
ぐぅぅと鳴る腹の虫を無視してベッドに横たわった
今日は何日なんだろう、とか今日は何曜日なんだろう、とか思いもせずに天井を眺めていた
机の上だけは、綺麗にしていた
太宰のループタイを置いていた。それだけ、それだけでも充分だった。
僕と太宰の関係は皆知らなかった。
だから、太宰の服装が欲しいと言ったら皆驚いていた
仲良かったのか、と聞かれたが僕は貰った瞬間家に走って帰った
誰とも話したくなかった
ハンガーには太宰の着ていたコート


「だざい」


ぽつりと、と呟いた声は与謝野さんからの電話でかき消された
電話に出る気力もないから無視をして、何となく窓を見た
カーテンは中途半端に閉じていたから外の景色が見えた
横浜の風景。綺麗な夜空、沢山の建物に、太宰と乗った観覧車
全部が見れた。


「あれ」


気付くと、僕の頬を生温い何かが伝っていた
それを拭いとると、涙だった
泣けるんだ、僕って
やっと泣けた、泣けたんだ僕
感情の整理がついたんだなきっと










初めて両親以外で愛した人だった
初めて付き合った人だった
初めて恋人繋ぎをした人だった
初めてキスをした人だった





沢山の初めてを太宰と過ごせて良かった
太宰以外の人じゃダメなんだよ僕
今でも、生き返って欲しいって思うよ
乱歩さん、っていつもみたいに呼んでよ
抱きしめさせてよ


「太宰……」


その日は、久しぶりに泣いた
泣いて、泣いて。太宰の名前を呼んだ









太宰が死んでから二週間
僕は与謝野さんに電話をかけて与謝野さんに会った
太宰と僕の関係も全部言った


それから与謝野さんのサポートもあって精神状態も落ち着いて来た
何も食べてなかったからやつれた僕を見て与謝野さんはギョッとした顔で驚いて、ご飯を食べさせてくれた
久しぶりの温かいものだったからガツガツと食べてたら「乱歩さんだ」と安心した顔で笑われた
与謝野さんが言うには、僕は死んだ目で表情筋がなくなったのでは、と思われるくらいに無表情だったそうだ
社長が見れば一瞬で倒れるね、そう言われた
確かに前の僕って、ずっと笑ってたな
そりゃ驚かれるだろうなぁ、自嘲気味の笑みを浮かべた










一ヶ月半。僕はいつも通りの服を着て、帽子を被った
そして、探偵社の扉を開けた


「ただいまーーっ!!」


だいぶ精神安定して来て、仕事も再開して大丈夫だろう、という与謝野さんの診断で
僕は仕事を再開することにした
皆嬉しそうに笑って「おかえりなさい」そう言ってくれた









仕事に復帰してから数日
僕は初めて墓参りに行った
海の見えるところなだけあって波音が耳に入って来て海がさざめいていた

「久しぶり」

新しい墓でキラキラ輝く墓は太宰の笑顔みたいで、何か懐かしく感じた
軽く撫でて、太宰の好きだった日本酒を置いて
手を合わせて目を閉じた


ねえ太宰、僕お前が居なくなってから二週間も殆ど食わずに過ごしてたんだよ
そのくらい太宰に依存してたんだろうね僕
僕ってば依存するんだな人にって思ったよ
……沢山の初めてを太宰と過ごせて良かった
太宰を愛せて良かった
ありがとう
太宰と過ごしたこの世界、守るから
そっちで待っててね





僕は目を開けて、太宰の墓をもう一度撫でて

帽子を被り直して横浜の地を歩いた

プリ小説オーディオドラマ