第13話

彼の正体
1,143
2018/03/29 16:06
目の前で獣をなぎ倒していたのは、ソンウだった。


その姿に言葉も出ず、逃げ出すことも出来ず、私はただ尻もちをついたまま目を丸くして見ていた。
ソンウ
あなた………?
ソンウは私に気づき、私と同じように目を真ん丸くして驚いていた。
ソンウ
なんでここに、部屋で寝てるんじゃ…
○○
あ、の…私……
怖くて声が震えてうまく喋れない。
違うんだ。こんなんじゃ…
○○
ソンウ……これは…
ガバッッ



喋ろうとした時後ろからまた音が聞こえた。
急いで振り向くと、そこにまたさっきの怪物が倒れていて、ジェファンも立っていた。
ジェファン
え、あなたちゃん?! なんでここに
デフィ
ヒョン、どうしたの………え、ヌナ、
ジェファンとデフィくんも、ソンウと同じように口元を血で赤く染めていた。
状況が理解できなかった。なんでこんな、みんななんで、
ソンウ
……二人ともみんなを呼んできて。
ジェファン
ヒョン、
ソンウ
こうなっちゃったらしょうがない、早く。
ジェファン
っ……
ソンウにそう言われ、2人は森の奥へと消えていった。

ソンウは怪物の亡骸を私に見えないようにして、私の前に座り込んだ。
ソンウ
…あなた。大丈夫?
○○
だ、大丈夫……
ソンウから微かに臭う血なまぐさい臭い。
私を見つめる黒かった瞳も燃えるような赤色になっていた。

その目付き、その瞳の色。
○○
あの時の…黒猫?
ソンウ
え、
○○
ソンウなの?
ソンウ
…そう。あれは俺
○○
今はなんでこんな、…あれはなに?ソンウたちはなんでここに?
ソンウ
あれは……マンティコアだ。
○○
マンティコア……?
ソンウ
たぶん、あなたは名前だけなら聞いたことあったよね。魔獣だよ。
魔獣……私は祖父母から聞いたことがあった。
神話やこの街の歴史など。ずっとずっとおとぎ話として聞いてきた。

それが、目の前に?わからない。
○○
………ソンウ、あなたたち
ソンウ
…何者か、でしょ?
ソンウは少し悲しそうに笑った。
ソンウ
……俺は、ヴァンパイアなんだ。
○○
………え?
ソンウの口から出てきた言葉は、想像もしていなかった言葉だった。

ヴァンパイア。
動物や人間の血を飲む魔人…。おばあちゃんからは1番危険な存在だと言われていた。

それが、ソンウ?ソンウがヴァンパイア?

そう聞いて辻褄が合うところが多くなった。
化かす、や俺たちの一族。
それでも訳の分からない話ばかり。
ジソン
ソンウ!
後ろからジソンさんが現れた。ジェファンがみんなを引き連れて戻ってきたみたい。
ソンウ
ジソンイヒョン…
ジソン
どういうことなの、なんであなたちゃんもここにいるの?
ソンウ
それは…
○○
ご、ごめんなさい
○○
私、帰ろうとしたんです。このままあそこに入れないって思って、それで外に出て道を探して気づいたら森の中にいて…
ダニエル
帰るって、この森を1人で帰れると思ったの?
ジフン
道はないって言ったのに
○○
ごめんなさい…
ジソン
……とりあえず、家に帰ろう。
ここじゃ危ないから。
そう言ってジソンさんは私に手を差し伸べる。
その手を握って立とうとしても、足に力が入らなくて立てなかった。
○○
ごめんなさい、立てないです…
ジソン
大丈夫? ちょっと掴まっててね
ジソンさんの首に手を回され、私はひょいっと持ち上げられた。
こんな、お姫様抱っことか初めてされたっ。ってそんな場合じゃないのにあたふたしてしまう。
○○
あ、あの!
ジソン
いーから、ね?
暴れる私にジソンさんは優しく微笑んできた。
その顔を見た瞬間、急に体に力が入らなくなった。
なんで力が入らないの…。体がリラックスしすぎて不思議になる。
ジソン
みんな、帰るよ。

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