そうして結婚式当日。
ママが泣きそうになりながら私の花嫁姿を見る。
何枚ものドレスを試着してやっと決めた1枚。
長いヴェールが特徴の、美しいウェディングドレス。
必死になだめるけど、ママは号泣したまま。
その時。
__コンコン。
聞きなれた、壱馬くんの声。
そう答えると、扉が開き……。
い、イケメンすぎる。
思わずポカンとしてしまいそうなくらい、かっこよく決まってる。
壱馬くんのストレートな言葉に、胸がくすぐったくなる。
消え入りそうな声でそういうと、壱馬くんはフッと笑った。
きゅーん……。
壱馬くんが私の髪にそっと触れる。
__ドキンっ……ドキンっ……。
ま、真顔でこういうこと言うんだからっ……!
壱馬くんの言動、行動、ひとつひとつにドキドキして真っ赤になってしまう。
いつか慣れるかも、なんて思ってたけど、何年経っても胸の高鳴りを抑えられない。
__コンコンっ。
わあ、みんなが揃うの久しぶり……!
と思ったら、
なんか、反応がないというか……。
北人くんと樹くんと颯太くんが、それぞれ違う変わったリアクション。
み、みんな大丈夫かな?
そう思って少し心配していると、
壱馬くんがそう言って私を背中に隠す。
3人のそんなやり取りを見ていると、自然と笑いが込み上げてきて。
そういうと、みんな笑顔で笑い合った。
みんなが1度部屋を出ていき、部屋にはひとりになる。
鏡台の横に置いてある、お兄ちゃんの遺影を見た。
お兄ちゃん、見てくれてる?
私ね、花嫁になったんだよ。
今日壱馬くんと結婚するの。
どれだけ幸せか、お兄ちゃんにもわからないくらい幸せかも。
そっと写真を撫でていると。
__コンコン。
ママかな?と思って振り返ると、
そこに立っていたのは、
招待状は送らなかったのに……!
ゆっくりドアを閉めて近づいてくる坂下さんに恐怖が芽生える。
警備だって厳重なはずなのに!
ニヤリと笑った坂下さんに悪寒がする。
なんなの、この人っ……。
ガタッと席を立つと、お兄ちゃんの遺影がガターン!という音を立てて床に落ちた。
とうとう壁に追いやられて腕を掴まれる。
グローブ越しに触られたその感触に吐き気さえした。
そう叫んだとき。
バンッ!
3人の姿にほっと心が静まる。
みんなの名前を呼ぶと、いっせいに坂下さんに殴りかかる。
そう言った颯太くんのストレートパンチが命中し。
いつもの面影ゼロの、もはやガチ切れした北人くんの回し蹴りが決まり。
相変わらず何を考えてるかよくわからない樹くんが何回か蹴った後に外に引きずっていく。
す、すごかった……。
へなへなとその場に座り込むと、坂下さんが叫ぶように喋る。
そう言って逃げようとした坂下さんを、樹くんが無表情で見下ろした。
樹くんの言葉に、すっと坂下さんが黙り込んだ。
どこか絞り出すようにそう言った樹くんに、北人くんや颯太くんも少し俯いた。
そうして坂下さんは警備員に引き渡され、私は崩れた衣装を直してもらう。
綺麗に直してもらった後、駆けつけてくれた壱馬くんに、うん、と微笑む。
心からほっとしたようにそう言った壱馬くんに、私もなんだか少し肩の力が抜けた。
ナイスタイミングだったけど……。
音……。
もしかして、お兄ちゃんの遺影が落ちた時の?
そういえば、なんで落ちたんだろう?
ぶつかったわけでもなかったように思うんだけど……。
壱馬くんの声にハッと顔を上げる。
なんだかその言葉は、壱馬くんの口から出たはずなのに本当にお兄ちゃんが言ったような気がして。
じわり、と涙が滲んできた。
もしかしたら、単に私がぶつかっちゃっただけかもしれない。
でもそれでも、お兄ちゃんが見守ってくれていて、私を助けてくれたって思ってもいいんじゃないかな?
壱馬くんは私の頭をポンポン、となでて、そこで外から呼ばれる。
フッと優しく笑いながらそう言った壱馬くんに、私はそっと涙を拭った。
そう返事すると壱馬くんと微笑み合い、式場へと向かった。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!