放課後の音楽室。
ドアを開けると、もう先に誰かがいた。
ピアノの横に立っていたサンウォンが、振り向く。
ほんの少しの沈黙。
昨日よりも、少しだけ距離が近いのに、
その分、何を話せばいいのか分からない。
サンウォンが先に口を開いた。
鍵盤に目を向けながら、続ける。
最後はちょっと小さな声になった。
そう言って、くすっと笑う。
サンウォンは少し考えてから、肩をすくめる。
そう言って、ピアノの端を軽く叩く。
即答だった。
一瞬、言葉を切ってから、続ける。
胸の奥が、きゅっとなる。
(昨日より、ちゃんと話してる)
少しの沈黙。
次は私が話を振らないと。
その言葉に、サンウォンは少しだけ目を細めた。
肩をすくめながら、くすっと笑う。
その笑顔に、胸がぎゅっとなる。
(……かっこいい……)
サンウォンが返す。
笑顔だけど、ほんの少し切なさも含まれていて、なんだか心が揺れる。
自然に聞いてしまった。
理由が知りたいわけじゃない。
ただ、どうしてそんな表情になるのか、知りたくて。
彼は少し考えるように目を伏せて、ピアノの鍵盤を指で軽く弾く。
その言葉に、私はじっと耳を傾ける。
優しさの裏にある葛藤。
そして、それを見せてくれるのは、ここだけなんだ、と気づく。
そう言うと、彼は一瞬、指を止めてこちらを見た。
その目に、ほんの少し驚きと、そして柔らかい温かさが混ざる。
くすっと笑う先輩の笑顔は、完璧王子様でもなく、
ありのままのイ・サンウォンとしての笑顔だったと思う。
胸の奥が、じんわり温かくなる。
この音楽室での時間が、少しずつ、特別になっていく。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!