昔昔、この世界が水で染まっていなかった頃。
大きな地震があったそうだ。
マグニチュード9.3。
震度8.5弱。
普通の地震なら耐えられる高層ビルや家、マンションが一気に崩れた。
ありえない速度で。
そんな苦痛の状態にも関わらず押し寄せる大津波が人々を食べていく。
それが他の国に飛び火して、その国の近くが……
そうなっていくうちに世界が水に染まってしまった。
ある昔の人達がつけた日記にこの出来事が記されている。
「大きな怪物のような水の塊が人々を食らい尽
くしていった。
周りを気にせずにただひたすらに逃げた。
どれぐらいたったのだろう。
周りを見渡すと生きている自分と顔も知らな
い人達の死体が転がっているだけ。
生きている人達を集めても人口の1%にも満
たなかった。」
人口が激減したせいで先が見えなくなった人間に神様は言ったらしい。
「先の見えなくなったお前達に死んだはずの少女を送ろう。
ただし990年後に。
お前達には関係無いが未来にもまたこんな大きな震災が起こる。
その子はその時に役に立つだろう。」
そう言い残して神様は消えた。
この世界が水で染まっている事が昔の津波のせいだったら辻褄があう。
でもその場合、実際に神様が1000年前の人を送り出したって事になってしまう。
支度し終わったバックを肩にぶら下げて、玄関に向かう。
そう言って靴を履いた。
母さんに促されて僕は家から出る。
一歩踏み出したら夏なのにも関わらず涼しい風が流れる。
風のふく音が僕を歓迎しているように思えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。