第9話

一定落差
22
2026/02/26 13:31 更新
【体温】

「どうだった?」
母から聞かれ、体温計を向ける。
病院での検査結果はインフルエンザB

あなた
やっと行けると思ってたのに
バスの予約までしていたのに、前日になってこの状況。
全てキャンセルをした。
もちろん母にも携帯を取り上げられる

あなた
携帯は返してよ
「ダメだって。治してからね」
余計に過保護になる母。
子供でもないのに、子供のように接してくる。
それだから自立出来ない。
結婚できる歳でもあるのに。

「触らないから返して」と言っても疑うように見つめてくる。
そして諦めたように「分かった」と言い、返してくれた。
安堵のため息をついて布団に入る。
母は、「度々様子を見にくるから」と言い、リビングへ戻って行った。


バスでの暇つぶしに送っていた大森さんへのDMが、この日はキャンセルになってしまった。





深夜の仕事を終えて、疲れた身体を癒すように愛犬を抱き抱える。

また愛犬から顔面を前足で叩かれ注意をすると、愛犬は首を傾げた。
世話をみていた母が家から出ると、軽い可愛らしい足音を鳴らして玄関まで走った愛犬は「なんで?帰ったの?」と僕を見る


motoki_ohmori
またねって言ってたよ
そう言いながら愛犬を抱き上げてソファへ腰掛ける。

ただいま

愛犬の頭を撫でながら言うと尻尾を振って上目遣いで見つめられる。
愛おしい姿に口角が上がり心が温まっていく
だが、愛犬の気分が上がっている間にあれを仕掛けなければいけない。
motoki_ohmori
今日はお風呂の日ですけど、忘れてません?
「お風呂」という言葉を聞いた途端、尻尾が下がり自分から目を逸らされる。分かりやすい。

そんな愛犬を撫でながら言葉を続ける
motoki_ohmori
一緒に入っていいなら洗ってあげるけど、どうされますか?
愛犬からの反応は無し。強引に行くか。
愛犬を抱き上げて脱衣所まで向かった。



手を離すと愛犬は僕を睨んでからボールのあるソファへ歩き出す。
水嫌いが移ったな。そう思いながら温風で髪を乾かしていく。

今まで見れていなかったメッセージを見ようと、電源を入れて、設定を変更する。

再び、あのように携帯は通知が来るたびに震えて知らせを告げる

スクロールをして友人や家族,先輩からのメッセージを読む

異様に数字が多いアカウントを見つけた。
あなたのユーザー名と書いてあるアカウント。
恐る恐るDMを開く。

ほぼ毎日同じ時間帯の朝にメッセージを送ってきている。
幸い、長文ではなく一言二言ほど。
愛情表現たっぷりでは無い。「この曲を聴きました」「今日はこんなことがあるから楽しみです。」
報告のようなメッセージばかり。

通勤時か。暇な時か。
真上に出てきたのは今月の28日。
29日は無い。

忘れていたのだろう。その方がマシかもしれない。
思ってはいけなさそうな考えを持ちながら、ドライヤーのコードを外した。



寝る前にふと思い出す。
明日の30日のイベントは来るのか、と。

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