やり場のない 恋心 、
叶わぬ 願いや 理想までも 。
君と一緒に笑っている間だけは 、
どうにかなりそうな気がしてくる 。
今日もまた 、そうやって 。
誰にでも見せる笑顔を 僕にも見せて 。
僕が 段々 嫉妬で歪んでいくのも 知らない癖に 。
『 ペア 』は 、一般的には
一対になっているもの のことを指す 。
僕に 、君と 一対になるほどの 価値があるのか ?
だって 、君には ちゃんと居るんだ 。
綺麗で可愛い子も 、信頼できる仲間も 。
もう僕は 、君の その困った顔すら
好きで好きで 仕方ないのに 。
君から 感じるもの 。
『 歪んだ愛 』 ただ それだけだ 。
でも 、俺のせいで 歪んだ君が 。
嫉妬に藻掻きながら 俺を愛す君が 。
好きで 、大好きで 仕方ないのは 事実だ 。
俺たちの愛は いつ交わるのかが分からない 。
もう俺は 身体で交わりたい
とまで 思っているのに 。
放課後 、誰もいない教室 。
初兎の机の上に 、
一対の便箋と封筒が置いてある 。
どうやら書きかけの手紙のようだ 。
この教室には 、前述の通り誰もいない 。
だとしたらなんなんだ 、この手紙は 。
悪いとも思ったが
好きな人が書いた手紙なら読んでみたい 。
まさかの 自分宛 。
罪悪感が 3倍濃縮されたところで 、
止まっていた息を わざと大きく吸ってから
次の行に 目を通し始めた 。
自分の顔が紅潮していくのも
ぜんぶ無視して 、その先の文章を読み続ける 。
夢中になっていたところへ 、
教室に誰かが踏み入る気配を感じた 。
手紙を書いた張本人である 初兎が立っていた 。
ハンカチを持っているところを見ると 、
おそらくトイレに行っていたのだろう 。
なんとなく気まずい沈黙が降りたところで 、
早速 本題をふっかけてみる 。
いつも通りの 睨むような目つき 。
身長のせいで 、ただの上目遣いでしかないが 。
『 もう嫉妬で どうにかなりそうやから 、
ダメ元で 伝える 。付き合ってほしい 。』
俺も恥じて 、ようやく ウィンウィン な訳だし 。
叶う恋も 叶わぬ恋も 等しく美しいように 、
歪んだ愛も 純愛も 、きっと美しいに違いない 。
そんな ふたりが 交わる夜は 、
もっともっと 美しいに違いない 。
見せられた余裕げな表情に 、
また こころを奪われる 。
僕が何か言葉を発するよりも先に
ちゅ 、と唇を重ねられる 。
ふわふわした気持ちよさの中に
大きな幸せが押し寄せてきて 、
緩くなった涙腺から涙が零れ出した 。
また 少しだけ笑った君は 、
僕の涙を指で拭って ぎゅっと抱き締めてくれた 。
泣いたせいで 荒くなった呼吸を整え 、
緊張して じっと動かなくなる身体を
すべて君に委ねる 。
今 、世界でいちばん幸せな時間が ───
動き出そうとしている 。
考えていた余計なことが
快感のせいで 解けて跡形もなくなる 。
身を捩らせてみるも 、逆効果 。
ごりっと 奥を擦られて 、
意識まで朦朧としてくる 。
好きが重なって 、
広がって 、解けて 、繋がって 。
きゅんきゅんする頭で
必死に好きな人のことだけを見つめる 。
ぐぐ 、と 奥まで満たされて 、
無視できない苦しさと気持ちよさに
また声が止まらなくなる 。
きっと 、僕が初めてなんじゃないか 。
書きかけのラブレターで 、
告白が成功してしまったのは 。
しあわせで 、美しい夜 。
きっとこれからもたくさん訪れる
こんな夜は 、僕たちを永遠に繋ぐだろう 。
来年も 、再来年も 、またその次も 。
ずっと君と しあわせを分かち合えますように 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。