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第1話

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2025/09/17 08:33 更新
ナムジュンの実家は、街の一角にある小さなケーキ屋。
朝から焼き立ての甘い匂いが漂い、ショーケースには色とりどりのケーキが並ぶ。
甘い匂いに包まれて育ったせいか、味にはうるさい。でも、それ以上にケーキであるということは、自分にとって苦いものだった。

ショーケースに並ぶショートケーキやタルトを眺めながら、心の奥でひそかに苦笑する。


ナムジュン
ナムジュン
ケーキがケーキ屋の息子って皮肉だよな、

甘くて、誰かに選ばれ、そして食べられる存在。
しかも、自分の家がそれを並べ、売っているのだから。


















カランコローン🔔

ドアベルの音はナムジュンにとって合図のようなもの
客足が途絶えてきた夕方、閉店ギリギリにいつも彼はやってくる。
テヒョン
テヒョン
ナムジュニヒョーン、また来ちゃいました~
へへっ、と綺麗な目を輝かせて笑うのは、3ヶ月程前から通ってくれているテヒョンア。そんな姿を見て、思わず頬が緩みそうになるのを必死に抑えこみ返事する。
ナムジュン
ナムジュン
‥また苺のタルトか?
テヒョン
テヒョン
うん、ヒョンが作ったのなら毎日食べられる
 
軽い言葉、テヒョンアからしてみれば何気なく言った言葉。だけど、そういう言葉の一つ一つが凄く嬉しかった。

苺のタルトを取り、箱に入れても渡すと、嬉しそうにぱっと頬を染めるテヒョンア。
テヒョン
テヒョン
じゃあヒョン、また!
ナムジュン
ナムジュン
あぁ、また

「待ってる」


そう言いかけて自分の口を思いっきり塞いだ。















もともと、人と話すのは好きな方だった。

けど、いつからか誰かと仲良くすること、踏み込んでいくことが怖くなった。店員と客、それくらいの距離で接するのが1番楽だ。







けど、テヒョンアは少し違う

もっといたい

もっとはなしたい

もっとしりたい

心の中が自分の欲で溢れてくる。
自分が自分じゃなくなるみたいで、このままずっとこの日々が続いて欲しいと思ってしまう。
























でも、もしテヒョンアがあっち側だったら……
フォークとケーキが分けられたこの世界
学校でも、病院でも、社会でも。
その線引きからは逃げられない


たまに見せる鋭く、ギラギラと光った目。
テヒョンアと話すたびに幸福と恐怖が胸にじんわりと広がっていった。

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