古びた建物の扉を バタン と開け 、 トガは明るく声を響かせた 。
暗く 、 沈んで重たい空気が一気にあなたに押し寄せる 。
少しの音でも 、 かなりの音で建物内に響いた 。
足音が反響し 、 耳に届く 。
ボロボロになったソファにだらりと腰掛け 、 雑誌のようなものを手に持っていた男が 、 あなたとトガを交互に見比べる 。
黒いコ ー トのようなものを羽織り 、 顔は火傷だらけ 。
気だるげで 、 どこか眠たそうな目をこちらに向ける 。
火傷の男はポツリと返事をし 、 また雑誌に視線を戻した 。
別に 、 “ なんともない ” というように 。
その 、 “ なんともない ” というような雰囲気は 、 あなたの心を落ち着かせた 。
怖がられず 、 拒まれることもない 。
先ほどの男が 、 今度はちゃんとあなたの方を向いて聞いてきた 。
低い声が 、 あなたの耳に届く 。
それだけ言うと 、 また視線を戻した 。
トガが横から口を挟み 、 火傷の男に言う 。
トガは明るく言った 。
怖がることもせず 、 ただ楽しそうに 。
その言葉に 、 空気が変わる 。
男は目を細め 、 あなたを見た 。
あなたの体に 、 視線が刺さる 。
不思議と 、 恐怖はない 。
自身の個性を話して 、 怖がられないことは初めてだった 。
今まででは 、 友達も 、 知り合いも 、 家族でさえも 、 全員逃げられてきたから 。
不意に 、 別の男が奥から出てきた 。
手をポケットに突っ込んだまま 、 気だるげに近づいてくる 。
トガに “ 弔くん ” と呼ばれた男は 、 ギロリとあなたを見る 。
トガは楽しそうに笑った 。
たちまち 、 あなたに視線が集まる 。
手のひらを見れば 、 血が溜まっている 。
赤は 、 形を変えつつあった 。
そう言い 、 近くにあったパイプ椅子にそっと触れた 。
赤い血が椅子に触り 、 じわりと形を変えた 。
そして 、 椅子は崩れていった 。
ヒビが入り 、 内側から壊れていくように 。
少しの音もなく 、 形を失う 。
数秒後には 、 そこには跡形もなく椅子はなくなっていた 。
完全に崩れ落ち 、 そこには椅子だったものが塵になって残っている 。
あなたはゆっくりと手を引いた 。
そして 、 顔を上げる 。
少しの静寂があった後 、 火傷の男が口を開いた 。
拒絶じゃない 。 初めてもらった 、 あなたに対する評価と価値 。
“ 弔くん ” は崩れた椅子を見下ろしながら 、 あなたに視線を向けた 。
その眼に映っていたものは 、 純粋な興味と欲 。
理由も条件もない 。
ここには 、 “ やめろ ” も “ 来るな ” もない 。
ただ 、 “ 存在する意味 ” がある気がした 。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!