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第1話

眩い黄金の滴り落ちて
227
2025/11/18 03:00 更新

これはとても、ロマンチックな物語___


    ______________そうでしょう?
神薆
…アグライア。

あたしがそう唱えると、目の前のロボットは金の糸で拘束される。
…これで96ポイントかな?
桃色をした髪の毛が視界に入ってくる。
あたしはそれを耳に掛けて、倒れ込んで身動きのできなくなったロボットを見つめる。
神薆
あたしが予想していたよりも試験内容は単とした物なんだね。
でも…これじゃまるで人間性が見えない。

ヒーロー、謂わば英雄の根本的な思想は「助ける」だ。
皆個々としてポイントを稼いでいて、重要なそれは欠片も見れない。

そりゃあそうだろう、皆雄英へ入学する為の門としか認識していない筈だ。
つまり、入学が目的になっている。英雄になることではない。
そのせいで、人助けは二の次と後回しにされてしまっている。

これも、試験内容なのかしら。
神薆
…まぁ、この程度で限界を迎えてしまう子はこの学校には受験しないという前提なのよね。
神薆
…あ。もう集まってる、早いわ。
飯田
おはよう!俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ!

扉を開けた途端、眼鏡をした黒髪の男の子があたしに話しかけてくる。
出身中学校は関係ない気がするけどね。
神薆
おはよう、朝からとても真面目ね。
あたしは神薆莉愛よ、天哉って呼んでいいかしら?
飯田
うむ、宜しく!
神薆
宜しくね♡

あたしたちが挨拶をしていると、背後の扉が勢い良く開きながら、ツンとした髪の毛の男の子が入ってくる。
神薆
おはよう、貴方は…
爆豪

あたしが話しかけても、その子は無視して自分の席に座ると、机に足を乗せてくつろぐ様な体制をする。
飯田
つ、机に足を…!?
神薆
宜しくね、爆豪勝己。
爆豪
アァ゛?
端役は黙ってろ
神薆
…わかったわ
飯田
神薆くん!そこは自分の意見も通さねば!
神薆
いいえ、この物語は確かにあたしが主人公じゃないわ。
でも…貴方が主人公では無い。
爆豪
…フゥン?
俺の事を舐めてんだな、いいぜェ一発やってみろや!!
飯田
き、教室での戦闘はやめたまえ!

手のひらから爆発を繰り返す勝己と、それを制しようとする天哉。
絵面が面白くてつい笑ってしまう。
爆豪
笑ってんじゃねェ!
テメェら何処中だ!
飯田
ぼ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ!
爆豪
聡明〜!?クソエリートじゃねぇか、ぶっ殺し甲斐がありそうだなぁ

空気感が少しどよんでいると、地面の方から声が聞こえてくる。
先生だ。
寝袋に入ったままこちらをジロリと見つめる。
神託で聞いてはいたけど、とてもじゃないけど教師のような親密さは見られない。
イレイザーヘッド
担任の相澤消太だ、宜しくね。
早速だが、これ着てグラウンドに出ろ。

そう言って手元に出してきたのは、雄英の体育着。
あんまり可愛くなくて気に入らないのよね。
神薆
ボール投げ…立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈…

種目は沢山ある。
走る物はサフェルちゃんに頼んで、
ボール投げ、握力…
神薆
どっちがやりたいかしら?
ファイノン
『相棒、僕に任せて!』
モーディス
『ここは王である俺が前に出るべきだと思うが?』
ファイノン
『臨むところだ!』
神薆
違うわよ、どっちがどちらの種目をやりたいの?
ファイノン
『あー…』
モーディス
『俺が握力をやろう、あの鉄細工を握ればいいのだろう』
ファイノン
『じゃあ僕がこの球体を投げればいいんだね!どちらの方角だい?』

ということで、個性把握テスト中は皆に身体を貸した。
皆のお陰で記録は良かった。
モーディスは壊しちゃったし、サフェルちゃんは0秒だったけど。
ファイノンは球戻って来なかったけど。
イレイザーヘッド
これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ぇ通しとけ

出久、指痛そうだね。
神薆
麗日
神薆ちゃん!
い、一緒に帰ってもろてもええかな…?
神薆
えぇいいわ、可愛い女の子の頼みならね♡
麗日
(はっわあぁああ〜〜〜!!!
かわええ…何この子…!パチって、ウィンクしよった!!かわえぇ!!)
神薆
どうしたのお茶子、顔が緩んでるけど?
麗日
な、なんでもあらへんよ!
それより、行こう!
神薆
えぇ
飯田
神薆くん、良ければ一緒に帰らないか?
神薆
えぇいいわよ

帰る準備をしていると、天哉から声を掛けられた。
天哉と一緒に校門まで歩いていると、出久が一人で歩いていた。
天哉が先に出久に話しかけて、あたしはそれを聞いていた。
飯田
しかし、相澤先生にはやられたよ。
俺は“これが最高峰”とか思ってしまった。教師がウソで鼓舞するとは…
神薆
どうでしょうね、もしくは…出久に可能性を感じて、その場で変えたかもしれないわ。
飯田
む、確かに緑谷くんは凄かったな!
緑谷
あ、ありがとう…!

雄英高校ヒーロー科。
午前は通常授業、午後はヒーロー基礎学という構造になっている。
オールマイト
わーたーしーがー
緑谷
きっ
オールマイト
普通にドアから来たーっ!!

出久の師であるオールマイト、八木俊典。
彼が教室にヒーロースーツで来ると、生徒達は一気に盛り上がる。

ヒーローといえばオールマイト。
メディアに大量露出していて、いまや知らない人はいない程の有名さ。
人気も獲得していてヒーローそのものを体で表す人だ。

…将来的に、ヒーローを引退する人。
オールマイト
早速だが今日はこれ、戦闘訓練!

ずっと厳つい笑顔のまま話される。
オールマイト
入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえたコスチーム!着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!

あたしはヒーロースーツを手に取り、眺める。
英雄か…あたしには成れないけど、このロマンチックな物語を見届ける者にはなれるからね。楽しみだわ。

眺めていると、背後から声を掛けられる。
八百万
神薆さん、宜しければ一緒に更衣室までお供させてくださいまし
葉隠
私も私もー!
葉隠
私も行くー!
耳郎
ウチもいいかな?
神薆
じゃあ皆で行きましょう♪
芦戸
麗日の個性はゼログラビティ?
無重力だって、すごい!
八百万
人に安心感を与えられる素晴らしい個性ですわ
麗日
えへへ〜

女の子同士だと可愛い会話をしていて楽しいと感じながら、着替えを進める。
耳郎
神薆のスーツおしゃれだね
神薆
ふふ、ありがとう。
女の子だから、どうせなら可愛くしたいもの♪
葉隠
おおーっ!アイドルみたいだっ…!
芦戸
そういえば、神薆の個性はなんなの?
葉隠
走るの凄い速かったよね!
麗日
握力も…壊してたよね…?
神薆
あぁ、あたしの個性自体は「黄金裔」よ。
葉隠
おうごんえい?何それ、聞いた事ないね!

『黄金裔』

別世界の、神様の権利を受け継ぐ人間の事。
体内には黄金の血液が流れている。
それぞれ証となる祝福を持つ。
対応する神様から神核を受け継ぎ不老の「半神」となれる。
芦戸
不老!?夢があるね!!
神薆
あぁ、あたしは不老じゃないわよ。
現に4歳の姿じゃないでしょう?
葉隠
発育の暴力だよね…!
神薆
あたしの中には12人の黄金裔がいるの。
それぞれに身体を貸して、個性を発揮する。
あたし自身にも黄金の血は流れているけどね
葉隠
黄金の血って何!?
芦戸
綺麗じゃん!
神薆
ふふ、そもそも血液は綺麗な物でしょう?
汚い物は一切入り込んでいない純粋な物よ。
八百万
そうですわね…黄金…失礼ですが、一度目にしてみたいとは思いましたわ
神薆
興味を持つ事に罪はないわ。
きっと見る事になるから、それまで期待しててね♡
葉隠
ずるーい!!顔がいい!!
飯田
先生!
ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!?

某アニメで見た事のある様な、ロボットのように硬い素材を被った天哉が手を上げて質問をする。
ちなみにあたしはかわいいヒーロースーツよ♪
オールマイト
真に賢しいヴィランは屋内にひそむ。
君らにはこれから“ヴィラン組”と“ヒーロー組”に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう
飯田
このクラスの人数は21人です。
2対2では、1人余ってしまうのではないでしょうか!
オールマイト
あぁ、その事だが、本人からお願いされたんだ。
神薆少女。
飯田
神薆くん?

一斉にあたしの所へ視線が集まる。
神薆
ハーイ、あたしはオールマイトと実況席で見てるわね。
皆の活躍期待しているわ♪
飯田
何故神薆くんは見学なんでしょう、怪我ですか?
オールマイト
彼女の個性は特殊でね。相澤くんの抹消が効かないんだ。
暴走したら大変だから、全部の実技授業の参加は控えたんだ
飯田
ありがとうございました!

天哉の素直な質問にオールマイトは律儀に答える。
そう、あたしの『黄金裔』はただの個性じゃない。
どうやら外界の粒子が混ざり込んでいて、謎めいているらしい。
その外界とやらは多分、皆がいた「オンパロス」という世界なのだろう。
飯田
大変なんだな、何かあったら手助けしよう!
神薆
ありがとう♪
蛙吹
基礎訓練もなしにはじめるのかしら?
オールマイト
その基礎を知る為の実践さ。ただし、今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ

その言葉に、皆は一気に質問し始める。
爆豪
ぶっ飛ばしてもいいんすか?

敬語だ…やっぱりオールマイトのことは尊敬しているのね♪可愛いわ♡
飯田
分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか?
青山
このマントヤバくない?

ヴィランがアジトに核兵器を隠していて、それを処理するために派遣されたヒーローという状況設定らしい。
ヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえるか、もしくは核兵器を回収する事。
ヴィランは制限時間まで核兵器を守り切るか、ヒーローを捕まえる事。
それで勝敗をつけるらしい。
メンバーはくじで決め、それぞれのペアをさらにくじで決めるらしい。

最初の対決は出久とお茶子のA、そして天哉と勝己のDとなった。
あら…面白そう。

はじめに、勝己は出久を見つけて奇襲をかける。
出久の被り物の半分が弾けると、勝己は右手を振りかぶる。
そして出久はそれ読んでいたかの様に、背負い投げをする。



『どれだけ見てきたと思ってる…』

『凄いと思ったヒーローの分析は全部ノートにまとめてるんだ…君が爆破して捨てたノートに…』

『いつまでも雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ!かっちゃん』






『"頑張れ"って感じのデクだ!!!』





金糸を伝って聞こえてくるそれは、スタートの幕切りだ。
物語は、二人を中心に…いや、英雄像を含めた三人を中心に紡がれた物だ。

勝己はまたもや右手で爆破を使う。
そしてそれも見越した出久は避ける。



『俺はぁ、至極悪いぞぉお』


途端に、天哉の方に張っていた金糸からそう聞こえる。
思わず吹き出してしまう。
至極悪いってなぁに(笑)
切島
どうした!?
神薆
なんでもないわ…ww


上鳴
負けた方がほぼ無傷で勝った方が倒れてら
常闇
勝負に負けて試合に勝ったというところか
蛙吹
訓練だけど

画面の向こうで、勝己は呆気に取られていた。
そうだ、やっと個性を使って戦えると思っていたのに…出久は真上の天井を壊す為に使った。
そしてそれを利用してお茶子が核に触れた。


2戦目、焦凍と目蔵 対 猿夫と透。
言うまでも無い。焦凍の先走りで圧勝だった。
建物全体を凍らせ、敵を動かさせずに核に触れる。
核は冷やしても爆発はしない。それを取ったのだろう。
流石、推薦入学者と言うか。
それを見て勝己は絶望を味わう様な表情をした。
まるで「敵わない」とでも言うかの様に。



…あぁ、なんて素敵な物語なの。
これから成長していく二人が楽しみだわ♪

オールマイト
それじゃあ、私は緑谷少年に講評を聞かせねば。着替えて教室にお戻り!
爆豪

勝己は無言で、足も動かさない。
あの子があそこまで成長するなんて、人間って素晴らしいわね。
上鳴
なぁ、途中まで一緒に行かね?
切島
お、じゃあ俺もいいか?
瀬呂
俺もー
神薆
良いけど…どうして?
女の子達の更衣室には入れないわよ♡
上鳴
違ぇって!
話したかったんだよ、お前色々謎めいててさ!
神薆
そうかしら?
葉隠
黄金の血〜!!
神薆
あら、透も居たのね。
良いわよ、お話は大好きだもの♪
上鳴
金の糸!?
と、盗聴に精神的透視も出来んのかよ!?
神薆
精神的透視と言っても、嘘を吐いているかくらいだけよ。




瀬呂
騙せんのかよ!?俺のこと騙したりすんなよ〜?
神薆
それは…どうでしょうね?




葉隠
え…っ、な、何それチートじゃん!
近付いたら死ぬって…
神薆
彼女もまた傷を負っているのよ、あまり拒絶はしないであげて欲しいわ。




切島
他には?
神薆
戦いの法則を変えたり相手をチェスの駒に変えたり…
物や人をワープさせたり、
あとはとっても頭の良い学者もいるわ!
葉隠
テストにめっちゃ良いじゃん!
神薆
それはダメね♡
瀬呂
後はあんの?12個っつったよな
神薆
あとは…
世界を救ったただの救世主が居るわ。
切島
そいつはどんなことができんだ?
神薆
…その身その魂を燃やして、世界に再創世を与える事ができる。
切島
むずいな…わかんねぇ!
上鳴
つまり自分犠牲にして世界を救うのか?
神薆
救う…どうでしょうね?果たしてそれは、救世なのか、はたまた終焉なのか…。
芦戸
終焉…?
神薆
どう?とてもロマンチックな物語でしょう?
彼等にもまた生があるのよ、今度良ければ対話してみるのはどう?
芦戸
いいね!
切島
なんだかすげぇ奴らだな!
葉隠
触れたら死ぬが衝撃的すぎた

『教師のオールマイトについて、どう思いますか?』

雄英の門の近くで、メディア報道陣の取材に囲まれた。
神薆
…オールマイトは生徒想いで、本当に良い人ね♪
でも…ちょっと教師としてまだ慣れていないみたい。

あたしは取り敢えず、真面目に答えてみる。
何処かキリのいいところで抜けよう、と思いながら。
『具体的にどのような面が慣れていないと?』
神薆
うーん…例えば…
爆豪

途端に、勝己に手首を掴まれ後ろに引っ張られる。
神薆
…ごめんなさいね、また今度会いましょう♡

そう言ってウィンクすると、報道陣はざわざわとし始める。

「今のカメラ向いてたか!?」
「可愛かったねあの子〜」

うふふ、そうでしょう?あたしは花の様に美しいもの♪
神薆
ありがとう勝己、ついでに引っ張ってくれたのね。
爆豪
…テメェあれくらい自分で撒きやがれ!!
あんなの迷惑の他なんでもねぇよ!!
神薆
…今日も夕飯は辛い物を食べるの?
爆豪
あ?上等だボケ
神薆
相席してもいいかしら?
爆豪
他座れ!!

爆豪
本当についてくンのかよ…ッ
神薆
真っ赤ね、とっても辛そう。
美味しいの?食道爛れるわよ?
爆豪
ウゼぇ黙れ!チビ!!
神薆
個性は爆破?派手で面白いわね
爆豪
んだよ
神薆
オールマイトのこと好きなのね〜
爆豪
お前が投げてきたんだろキャッチボールしろやボケ

突如食堂に警報音が鳴り響く。

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難して下さい』

爆豪
アァ?
神薆
外部の人間が校内に侵入してくるって事ね。本来なら硬いバリアで覆われているはずだけど…
爆豪
突破して来たんか
神薆
あれは簡単に壊せるものじゃ無い、だとすれば"そういう"個性の持ち主が居たのね。
爆豪
おし、ぶっ飛ばして…
神薆
教師が対応する筈よ、そもそも生徒が外に出ればもっと大きな騒ぎになるわ。
ここは身を引いて安全を取りましょう。
爆豪
俺にできねぇっつってんのか!!アァ!?
神薆
言っていないでしょう

すぐ血が昇るんだから…と溜息を吐きながら、勝己の手首を掴んで歩く。
背後から離せやゴラって言われているけど、気にしないわ。
イレイザーヘッド
今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった

訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。
と先生は告げる。
あぁ、これがやっとはじめて顔を合わせる所なのね。
飯田
バスの席順でスムーズにいくよう番号順で二列に並ぼう!

しかしバスの席は皆が向かい合うものだった。
天哉は悔しそう。
蛙吹
私、思ったことをなんでも言っちゃうの
緑谷
あ、はい!蛙吹さん!
蛙吹
梅雨ちゃんと呼んで。
あなたの個性オールマイトに似てる

多分反応してしまっただろう。
出久もあたしと同じように肩を振るわせる。
切島
待てよ梅雨ちゃん、オールマイトはケガしねえぞ。
似て非なるアレだぜ。しかし、増強型のシンプルな個性はいいな、派手で出来る事が多い
青山
僕のネビルレーザーは派手さも強さもプロ並み
芦戸
でも、お腹壊しちゃうのはヨクナイね

あらそうなんだ、まぁAFOから受けた個性はきっと体に合わないわよね。
切島
まぁ、派手で強えっつったらやっぱ轟と爆豪だな
上鳴
神薆も聞いた感じ凄そうだよなー!
蛙吹
爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそう
爆豪
んだとコラ、出すわ!
上鳴
この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ
爆豪
てめぇのボキャブラリーはなんだこら!殺すぞ!

勝己の隣の響香が可哀想ね。
神薆
でも勝己は根が可愛いからギャップで人気出るかも知れないわ。
それに、焦凍は顔が可愛いわよね♪
爆豪
かわいくねぇってんだろ!!!死ね!!

水難事故、土砂災害、火事、暴風…など
あらゆる事故を想定して13号に作られた演習場。
13号
簡単に人を殺せる力です。
皆の中にもそういう個性がいるでしょう
超人社会は個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます
13号
しかし一歩間違えれば容易に人を殺せるいきすぎた個性を個々が持っていることを忘れないで下さい。
体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体感したかと思います

13号が「以上、ご静聴ありがとうございました」と頭を下げると、演習場には暗い渦を巻いた物が浮かび上がる。
黒霧、白雲朧だ。
その中からは何人かのヴィランと、志村転孤がいる。
黒霧
本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ。ですが、何か変更があったのでしょうか?
まぁ、それとは関係なく、私の役目はこれ

黒霧に走り掛かる勝己と鋭児郎。
しかしすぐワープゲートを広げ、あたしたちを飛ばしてしまう。

山丘ゾーン。電気、響香、百と飛ばされた。
神薆
…どうしようかしら…ここは単純にモーディス?それとも…アナイクスかしら?

あたしが名前を呼ぶと、彼はあたしの身体を乗っ取る。
彼の手には銃が握られていて、すぐさまそれをヴィランに構える。
アナイクス
ははっ、狂うが良い…魂を狙い打つ!!

銃弾は見事に複数のヴィランの"魂"に当たる。
当たったヴィランは血液の一滴も出さずに倒れ込むんだ。
上鳴
なっ、何々神薆!?
アナイクス
私は七賢人が一人アナクサゴラスです。
もう良いですか、莉愛?

そして彼は大人しくあたしの魂へ戻る。
あたしは体を返してもらうと、状況確認のため辺りを見渡した。
神薆
あら…上手いことアナイクスがやってくれたのね。
それでも…
神薆
…酷い光景だわ。

イレイザーヘッドは脳無にやられ、転弧は梅雨を壊そうとする。
すぐさま、あたし…トリスビアスは百界門を開いた。
トリビー
開け…百界門…!

出久を抱えた梅雨と、背後で応援に回っていた実を、百界門でこちらの近くへ移動させた。
それと同時に、ここにはオールマイトが来た。
オールマイト
もう大丈夫

オールマイトは決まり言葉を言う。
オールマイト
私が来た!

…いつもの笑顔は消えていた。
それを見てハッとする。周りを見渡してみれば、笑顔で戦ってる子なんていない…いや、一人いるけど他は皆苦しい顔をしていた。

…あたしは運命を知ってしまったから、この先どうなるかがわかっている。対してこの子達は運命なんて知らない。見れない、聞けない。
そうか…。

この戦いの大きさを知った。
オールマイト
皆入口へ!相澤くんを頼んだ!意識がない、早く!

そこからはオールマイトと脳無の熱狂的で静寂な戦いが始まった。
衝撃吸収の脳無をなかったことに、するかのように飛ばした。
だがそれでヴィラン連合は折れない、転弧は再びオールマイトへ向かう。

蒸気が彼の周りに纏っている。
あれは、変身の際に溢れる物。

…あぁ、そうなんだ。ここでオールマイトが痛め付けられるんだ。
緑谷
(僕だけが知ってるピンチ!!)

いつの間にか、あたしは出久と一緒に飛び出していた。
セイレンス
潮よ、共に沈め…!

その場で大きな鯨が出来る。それは転弧を飲み込もうとするが、運悪く転弧の五指が触れた。
その鯨は水になって溶けて形を崩した。
セイレンス
…!

だが、転弧の手に銃弾が刻まれる。
あぁヒーロー、よく来た。
緑谷
何も…できなかった…
オールマイト
そんな事はないさ、あの数秒が無ければやられていた。
また助けられちゃったな。

半分、通常の姿に戻ってしまったオールマイトを見て、出久は涙を流しながら安心する。
セイレンス
小魚、足を折っているから無理に動くな。
切島
緑谷ぁ、大丈夫か!?
緑谷
切島くん…神薆さ…

切島が来てしまう前に、ヒーローセメントスとは壁を作って侵入を防いだ。
だが…そもそもワタシが居る。
セイレンス
無茶をするからこうなるんだ。
そもそも弾丸の小魚が小物は倒していただろう、お前一人が無理をするからだ。
オールマイト
え…いや、まっ、待って…神薆少女…
セイレンス
ワタシはセイレンス、莉愛の個性でここに居る。
お前の事は聞いている、早急に身を隠して保健室とやらまで行け。
緑谷
えっ…
オールマイト
え…
セイレンス
莉愛、手当のできる黄金裔に代われ。

セイレンスにそう言われ、出て来たのはヒアンシー。
ヒアンシー
あら…痛そう、打撲と骨折…変色しているので内出血が酷そうですね。
緑谷
え…
ヒアンシー
安心して下さい、きっとすぐ治りますよ!

出久を保健室へ運ぶ人達に預けると、あたしは刑事さんの人数確認に立ち会った。
葉隠
尾白くん、今度は燃えてたんだってね、一人で強かったんだね
尾白
皆一人だと思ってたよ、俺…ヒット&アウェイで凌いでたよ。葉隠さんはどこにいたんだ?
葉隠
土砂のとこ。轟くんクソ強くてびっくりしちゃった
青山
僕がいたとこはね、どこだったと思う?

…情報提供者の優雅は、電気達にそう問いかけるが耳に入っていないようだ。
仕方なく隣にいた梅雨に問う。
青山
どこだと思う?
蛙吹
何処?
青山
秘密さ!

そうね…内通者である優雅は、ヴィラン連合は今欠かせない存在として扱っている。
無論、襲うなんて以ての外だ。何処か安全な場所に黒霧は飛ばしたのだろう。
蛙吹
刑事さん、相澤先生は?

刑事の隣にいた人が答える。
どうやら目に後遺症が出るらしい。イレイザーヘッドは目が大事なのにね。
飯田
緑谷くんは!?
塚内
緑、ああ、どうやら先に治癒跡があったみたいで… 彼も保健室で間に合うそうだ。
飯田
治癒跡?
塚内
誰だかはわからないんだが…
切島
このクラスの奴で…
葉隠
治癒できる子は…

一斉にあたしの方へ皆の視線が集まる。
上鳴
神薆か?
神薆
正確にはヒアンシーだけれど…可愛い子は常に万全の状態じゃなきゃね♪
塚内
あぁ、君なのか。こちらから礼を言うよ。
塚内
神薆さん、何かありますか?

あたしは、強力な個性で複数の要素が集まった特殊な生徒。
だからこそ、こういう特別な会議などに参加させてもらえる。
神薆
えぇ、そうねぇ…
主犯については、あの子では無いと思うわ。裏であの子を操っている人がいる筈
言い方は良く無いけれど、あの子にあんな事ができると思うかしら?
根津
確かにそうだね
神薆
そして、どうしてあたし達のカリキュラムに沿って侵入できたと思うかしら?
オールマイト
ミッドナイト
信じたくは無いけど…
神薆
考えるのが妥当だと思うわ。
次、また特秘のイベントがあったとして…それにまた敵が押し寄せてくるのであれば…
根津
確定…だね

可愛らしいネズミの形をした校長が、決心したかのようにそう言う。
神薆
…教師達は全生徒…いや、前関係者に目を通した方がいいわ、一人も残らず。
だって…

あたしは椅子を引いて立ち上がる。
そして振り返りながらこう言う。
神薆
目立たない人の方が、隠し事に適するのよ♡

あたしはそう言って笑って、扉を開け閉める。
神薆
あら…存外怪我はぐるぐる巻きにしないといけなかったの?それともリカバリーガールの過剰?
イレイザーヘッド
後者だ。
後で皆にも伝えるが…もうじき雄英体育祭がある。
"どうする?"
神薆
…演習場で黄金裔を4人も呼んだのよ。
今だって…
イレイザーヘッド

そこで止まったあたしの言葉を察したイレイザーヘッドは、近くにあった椅子を引いてあたしの後ろに持って来てくれた。
神薆
ありがとう…。
イレイザーヘッド
じゃあ、不参加で良いか?
神薆
えぇ…青春は見てるだけでも十分味わえるわ。
イレイザーヘッド
…雄英体育祭はプロヒーローからのスカウトも来るんだが、本当に良いんだな?
神薆
良いわ。
イレイザーヘッド
わかった…
神薆
ありがとうイレイザーヘッド。
イレイザーヘッド
あぁ…体調が落ち着き次第教室へ戻れ。

そう言ってイレイザーヘッドは扉を閉めた。

トリスビアス、アナイクス、セイレンス、ヒアンシー。
本当は…
一日3人までならその後は通常通り生活が送れる筈だ。
4人は少し目眩がして、頭痛と吐き気が起きるだけだった。

…トリスビアス、百界門を開くのが遅くなった気がする。
オンパロスの叙事詩も、トリアンが1番先に消えた。
あの順番通りに行けば…

次はアグライアとサフェルかしら?



それとも…あたし?




オールマイト
おお、緑谷少年が、
オールマイト
いた!

元気で出久を指差すオールマイト。
丁度昼ご飯を食べに、お茶子と天哉といたらしい。3人とも驚いていた。
オールマイト
ご飯一緒に食べよ?
緑谷
…?ぜひ!

食堂に並びながら、お茶子と天哉は会話する。
麗日
デクくんなんだろね
飯田
オールマイトが襲われた際飛び出したと聞いたぞ、その関係じゃないか?
バスの中で蛙吹くんが言ってただろ、二人の超絶パワーは似ているし、オールマイトに気に入られてるのかもな
神薆
前に出久がオールマイトに超パワー同士の個性の扱い方について教えてもらっていたわ、それの続きなのかもね。
飯田
神薆くん!
神薆
ハーイ♪
麗日
HRん時居なかったけど大丈夫?
飯田
良ければ内容を伝えようか!
神薆
雄英体育祭の話?
あたし、体調が優れないから参加は出来ないのよ。
麗日
えっ、そ、そうなん!?
飯田
体調は今大丈夫なのかい?
神薆
一昨日演習場で4人も貸したせいかもね〜。
今は落ち着いてるけど波があるから、もしかしたら授業中に悪くなっちゃったりもするかも知れないわ。
麗日
そん時は頼ってね!
飯田
ああ、是非力になるぞ!
神薆
ふふ、ありがとう♪
神薆
あら…
飯田
君達、A組に何か用が…
峰田
出れねーじゃん!何しに来たんだよ?
爆豪
敵情視察だろ、ザコ
神薆
雑魚は良く無いわ、君達と言いなさい!
爆豪
アァ?チビは引っ込んでろ
…ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな、体育祭の前に見ときてえんだろ

すると、突如あたしの胸元のリボン(の形に結んだネクタイ)を鷲掴みされて引っ張られる。
神薆
ちょっと、折角可愛く結べていたのに!
爆豪
そんな事したって意味ねぇから。
どけ!モブ共
飯田
知らない人のことをとりあえずモブって言うのやめな!
心操
噂のA組、どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。
ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?
爆豪
アァ!?
神薆

人ごみを割いて出て来た人使。
なるほど、ここで皆と出会ってたのね。
心操
普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴けっこういるんだ、知ってた?
そんな俺らにも学校側がチャンスを残してくれてる

人使に皆注目する。
うーん、皆の反感買っちゃうけど。特に勝己。
心操
足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもり
鉄哲
隣のB組のモンだけどよぅ!
ヴィランと戦ったっつうから話聞こうと思ってたんだがよぅ、エラく調子づいちゃってんなオイ!
本番で恥ずかしい事んなっぞ!
神薆
わ…ちょっと…
鉄哲
無視かてめぇ!

今度は制服をぐしゃっと掴まれ、グイグイと引っ張られる。
切島
待てコラ爆豪、神薆乱暴に引っ張んな!
それにどうしてくれんだ!おめーのせいでヘイト集まりまくってんじゃねえか!
爆豪
関係ねえよ。上に上がりゃ関係ねえ
神薆
…!
鉄哲
このヤロー!!

…かっこいい事言えるじゃない、勝己。
神薆
所でどうしてあたしも引っ張って来てくれたの?
もしかしてあたしに惚れちゃったかしら♪
爆豪
アァ!?ざけんな!
他人を全く蔑ろに出来ねぇ奴を見てると反吐が出るだけだ!
神薆
守ってくれたのね♪
爆豪
テメェ都合の良い部分だけしか脳に入らねぇのか!!
麗日
うおおおお
葉隠
神薆はここで待機?
神薆
違うわ。生徒一人を目の届かない場所に置かないなんて流石雄英よね、あたしはイレイザーヘッドの隣に座っているわ
飯田
なるほど…そこは、会場が見やすいのだろうか?
神薆
まぁ…見えないと実況できないし…ねぇ?
上鳴
んじゃ俺らの活躍見とけよ!
飯田
みんな!準備は出来てるか?もうじき入場だ!

焦凍は出久に話しかける。
宣戦布告、見たな、そういえば。
プレゼントマイク
雄英体育祭!
ヒーロの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!
どうせてめーらアレだろ、こいつらだろ!!?敵の襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!ヒーロー科1年A組だろぉぉ!!?

そしてヒーロー科、普通科、サポート科、経営科。
入場が終わると、選手宣誓に勝己が呼ばれる。
…あぁ、あの子入試一位だったんだっけ。

勝己が壇上に上がると、真顔のまま口を開いた。
爆豪
せんせー、俺が一位になる。
せめて跳ねの良い踏み台になってくれ

全く…やり方が相変わらずね。
イレイザーヘッド
はぁ…
神薆

最初は障害物競走。
プレゼントマイクに促されイレイザーヘッドに見所を聞き出すと、今だと答えた。

スタート地点を潜り抜けた瞬間、焦凍は氷で滑走する。
優雅や百、鋭児郎、勝己がすぐに飛び出す。

第一関門は入試時のロボット。


「立ち止まる時間」


演習場での経験を通して、A組の子達は学んでいた。
USJの事件を経て上の世界を肌で感じた者
恐怖を植えつけられた者、対処し凌いだ者
各々が経験を糧とし迷いを打ち消している

第二関門は落ちればアウト。
皆難なくクリアしていく。

第三巻門は地雷原。
焦凍は進む、だが後方から追い抜かれた。
勝己が一位に行くかと思いきや、出久が爆発を使って先に進む。
やっぱり、この三人の物語なのね。


次の競技は騎馬戦。
モニターにはオールマイトを担いだ13号とプレゼントマイクがいる。
なんだこれ、面白い。可愛い。

緑谷
さっき受けた宣戦布告、改めて僕からも
僕も君に勝つ!

金糸を伝うそれは、青春の1ページだ。
神薆
邪魔だ!
神薆
エンデヴァー
醜態ばかりだな、焦凍。
左の力を使えば障害物競走も騎馬戦も圧倒出来たハズだろ
神薆

角を曲がる前に、あたしは焦凍の声に足を止めて角から金糸を一つ出してみた。

そこにはエンデヴァー、焦凍の父親が居た。
家族関係か。
エンデヴァー
良い加減子どもじみた反抗をやめろ。おまえにはオールマイトを超えるという義務があるんだぞ

へえ、それは知らなかった
エンデヴァー
わかってるのか?兄さんらとは違う。
おまえは最高傑作なんだぞ。
それしか言えねえのか、てめェは!
お母さんの力だけで勝ち上がる!
戦いでてめェの力は使わねえ!
エンデヴァー
今は通用したとしてもすぐ限界が来るぞ
神薆
緑谷
君の…!!!
神薆
『力じゃないか』…
プレゼントマイク
HeyHey何か言ったかガール!
神薆
マイク通ってるわよ
プレゼントマイク
おっと失礼!
神薆

炎を使い出した。
あの時、あの子は炎と氷を同時に使っていた…つまりこれが幕開けだ。
おめでとう、焦凍。
ミッドナイト
じゃ、そろそろ出来た人から発表してね

ヒーロー名…か。
あたしは何も考えていなかったな。
ミッドナイト
ヒーロー名、思ったよりずっとスムーズにすすんでるじゃない。
残ってるのは再考の爆豪くんと飯田くん、そして神薆さんと緑谷くんね

天哉はインゲニウムになる。
出久はデク、勝己は大爆殺神ダイナマイト。
うーん…どうしようかしら。
…無難に…
神薆
決めたわ
ミッドナイト
じゃあ来て発表しな!
神薆
…人々の楽園という意味を込めて、『エリシア』
ミッドナイト
オシャレ〜!良いねー!!

エリュシオン…キュレネにまた、連れて行って貰いたいわ。

皆がヒーローコスチュームの入った物を持ちながら、散って行った。
残ったのはあたしとイレイザーヘッド。
イレイザーヘッド
…お前、ヒーローになる気あるのか?

歩いている途端に、そう言われた。
やはり見やすかったか。
神薆
どうでしょう、ヒーローになるのが目的では無いから何とも言えないわね。
イレイザーヘッド
じゃあ聞くが、お前の目的は何だ
神薆
…辿るべき道に合わせるだけよ。
イレイザーヘッド
言えないのか
であれば内通者の件で視野にお前も含まれるぞ。
神薆
元よりあたしを視野に入れないなんて失態、ヒーローはしないでしょう?
でも…そうね、教師に内通者は居ないと思うわ。
イレイザーヘッド
…根拠は何だ
神薆
念の為教師全員にアグライアの金糸を張っておいたの。
誰も、敵と会話するような事はなかった。
イレイザーヘッド
…わかった。

そう言ってイレイザーヘッドはため息を吐く。
あたしは振り返って進む、改札を通ろうとすると、イレイザーヘッドに声をかけられる。
イレイザーヘッド
お前は指名受けてないだろ、何処へ行く気だ
神薆
…保須市に、魅力的な物語を見に行こうかと。
イレイザーヘッド
授業はどうする
神薆
いいわ、単位が取れないなら留年させて。
それを許さないなら来年からは退学で良い。
イレイザーヘッド
神薆
じゃあね、イレイザーヘッド

黄金が滴り落ちる。
それを見て、男の動きは止まる。
ステイン
…お前、これは個性か?
神薆
早く舐めないの?
ステイン
俺の個性を知ってるんだな
神薆
えぇ…どうやって逮捕されるのかも、どんな思想を抱いているかも知っているわ。
貴方、オールマイトを尊敬しているのね。
ステイン
あれこそが正しきヒーロー像だ。
自らを顧みず他の為に力を駆使する…

彼は、すぐ側に落ちたあたしの血も舐めずに、思想を語り出す。
面白い子ね♪
神薆
それなら、あたしは貴方に殺されるべきなのね♪
ステイン
己を客観視出来ているんだな
お前の目的は何だ
神薆
…この世界に正しい結末を辿らせる事。

そうやって彼に微笑み掛けると、彼は尋ねる。
ステイン
そこではどんな世界になっている?
神薆
それぞれ頭を抱えながらも強く真っ直ぐに生きる人々が見れるわ。
あとは…まだ犯罪を犯す人もいるけれど、とっても素敵な世界よ♡
ステイン
そうか

…眩い黄金を滴らしながら、私はそのまま建物の屋上で三人がステインと戦っているのを見る。
やめて欲しけりゃ立て!!

焦凍は叫ぶ。
天哉に向かって…自身と同じように、復讐に足を踏み入れようとした同級生の友人に向かって。
なりてぇもんちゃんと見ろ!!!

とっても格好良いじゃない…轟焦凍。

三人で一気に畳み掛け、ステインは気絶する。
その瞬間、ステインの倒れ込んでいる氷結に黄金が落ちる。
…?
緑谷
金色の…液体?
神薆
__我が呼びかけに応えよ、歳月オロニクス
記憶の幕を取り払い、過去のさざ波を呼び起こせ。

あたしはそう言って屋上から金糸の階段を降りる。
神薆
これで暫く、彼は動かないはずよ
飯田
神薆くん…!?どうして此処に…
神薆
ハーイ♪会えてとっても嬉しいわ。
お前…見てたのか?
神薆
えぇ、皆格好良かったわね♡

そう言って笑うと、皆の表情が曇り出す。
俺達は戦ってたのに、それをすぐそばで見てるだけなのか!?
ヒーローなら応戦するべきだろ…!
飯田
轟くん…!
神薆
皆が倒してくれて、良かったわ…♪
緑谷
…どうして戦わなかったの?
君の個性は強いから、居てくれればすぐ拘束出来たかもしれないのに…

裏切り者に向ける視線、鋭く光る眼光。
それらはあたしを捉える。
神薆
…あたしが…

後ろに組んでいた右腕を前へ持ってくる。
神薆
…何もせず見ていたと思っているの?
…っ!
す、すまねぇ…頭に血が昇っちまって…
緑谷
ご、めん…
飯田
その右手…一人でヒーロー殺しと戦っていたのか!?
神薆
貴方達が来る前に弱らせていた方が良いと思って…
流石に此処まで怪我するとは思わなかったけれど。

右手は眩き黄金に染まりきっていて、腕には切り刻まれた跡がある。
神薆
早く大通りに出た方が良いわ。
ネイティヴ、そこの男の子、出久を運んでくれるかしら?
ネイティヴ
あぁ、これくらいはさせてくれ。ありがとう。

そう言って出久を担いで角を出る。
するとすぐ、老人の掠れた声が聞こえてくる。
グラントリノ
何故お前がここに!
緑谷
グラントリノ…!

グラントリノの蹴りは出久の顔面にヒットした。
飯田
二人とも、僕のせいで傷を負わせた。本当に済まなかった。

天哉は焦凍と出久に向かって深くお辞儀をして謝る。
怒りのせいで、他が見えなく霞んでしまったとか。
飯田
神薆くんも、俺が来るとわかっていて先に力を尽くしてくれたのだろう。
本当に…
神薆
大した事じゃ無いわ、貴方の方が重症よ。それにあたしは治せるから…

途端に上空から気配を感じた。
あたしは咄嗟に叫ぶ、耳に入った声は重なっていて、グラントリノと同時に叫んだようだ。

『伏せて!!』
神薆
あ…

咄嗟にしてしまった言葉に、まずいと思った。
だが預言と同じように物事が進んだ為、安心した。
出久が空を飛ぶ脳無に連れて行かれる。

此処だ、と思ってオロニクスの神権を解いた。

案の定ステインはその血液を舐め脳無を停止させ、脳無を刺した。

ステイン
俺を殺していいのは本物のヒーロー、オールマイトだけだ!!
神薆
え?
嫌よ、どうしてこれだけで入院しなきゃいけないの?
病院関係者
すみませんが、医師の判断に基づいて…
神薆
もう痛くも何とも無いわ、それに自分で治せる!
酷い貧血でも無いし…
病院関係者
酷い貧血だと診断されたからでしょう!?
神薆
あたし自身は元気よ
病院関係者
いいから、大人しく入院して下さい!
このまま倒れられても大変ですから!
神薆
もう〜

あたしは大人しく(?)ベッドに座った。
病院関係者
同意書にサインお願いします
神薆
…あら、?

保護者の所、先生になってる。
あたし、イレイザーヘッドが親の記憶なんて無いんだけど…オロニクスに取られた?

あぁそうか、同意書に保護者のサインは必須で、あたしに保護者が居ないから特別に担任教師の責任でサインしたのか。
緑谷
…神薆さんも入院なんだね
神薆
あたしは元気よっ!
医師の大袈裟な対処ね、このぐらいの貧血どうって事ないわ!
右腕…大丈夫なのか?
神薆
個性を使ったわ、もう傷一つ残ってない。
そうか…
神薆
ごめんなさいね、あたし…何も出来なくて。
こんな個性だから、他人へ向けた発動は必要最低限に迫られているの。
飯田
良いんだ。
君は一人で戦っていたんだろう、さぞ辛かったはずだ。

…あたしはもう辛くないのよ、とは言えないけれど。
俯いたまま、自身の右手を眺める。
緑谷
… 僕の脚、これ多分殺そうと思えば殺せてたと思うんだ
ああ、俺らはあからさまに生かされた。
あんだけ殺意向けられて尚立ち向かったお前はすげえよ。
飯田
いや、違うさ、俺は

天哉が何か言い掛けると、病室の扉が開く。
グラントリノ、それと天哉のインターン先のヒーローがいた。
グラントリノ
来客だぜ、保須警察署署長の面構犬嗣さんだ。

焦凍と天哉は立ち上がり、出久は足の怪我を気遣いそのままで良いと話す。

…どうやら、
資格未取得者が保護管理者の指示なく個性で危害を加えたことについてらしい。
たとえ相手がヒーロー殺しであろうとも、立派な規則違反だということに変わりはない。

あたし達には処分が下される。
待って下さいよ。
飯田が動いてなきゃネイティヴさんが殺されてた。

不満があると、焦凍は抗議する。
緑谷が来なけりゃ二人は殺されてた!
神薆が先に戦ってなきゃ、ヒーロー殺しは弱ったまま逮捕なんて出来なかった!
誰もがヒーロー殺しの出現に気付いてなかったんですよ!

…末っ子が出てる、ムッとした顔が可愛い。今の状況で言える事では無いけど。
規則守って見殺しにするべきだったって!?

結果オーライであれば規則などウヤムヤで良いと?
あぁ、そんなことは雄英生徒たるもの存じている。
人をっ、救けるのがヒーローの仕事だろ!!

…だからといって規則を破れば罰が与えられる。
理解しているつもりだよ、自身の内に法の半神がいるんだから。
神薆
焦凍、
グラントリノ
まァ、待て!話は最後まで聞け

…焦凍が地雷を踏み抜かれた時に咄嗟に言った「この犬!」に吹きそうになった。本当に危ない。
あの子とことん可愛いんだから。

結局、揉み消してエンデヴァーの功績になった。
あぁ妥当だ。
神薆

今回、あたしの怪我を…揉み消そうとして使ったオロニクスの神権が、消えかけている。
…こんなことになるんだったら、使わなければ良かった。
もしも未来に影響するなら…もう一度…。
神薆
っ…

診察で空いている4人部屋に一人、あたしは嗚咽を漏らした。
神薆
あ、と…何回やれば…完遂、するの…?

ガラッと扉の開く音が聞こえる。
咄嗟に顔を上げる。あぁ良かった、カーテン閉じてた。

天哉、出久、焦凍の順番で病室に戻ってくると、それぞれ話し始める。
飯田
左手、後遺症が残るそうだ

…。
飯田
俺が本当のヒーローになれるまで、この左手は残そうと思う
緑谷
飯田くん、僕も同じだ。戒めをこの手に。
一緒に強く、なろうね
…なんかわりぃ。

焦凍が謝り始める。

俺が関わると手がダメになるみてぇな感じになってる。
呪いか?

…。
冗談じゃねぇ、ハンドクラッシャー的な存在に…

ふふ。
…神薆も手ぇやられてたしな。
飯田
そう言えば、神薆くんの部屋から音が一つもしないんだが…大丈夫なのだろうか?
緑谷
…神薆さん?

パキパキ、と音が鳴った。
飯田
神薆
…っは、ぁッ、
緑谷
っ神薆さん!?
神薆!?
飯田
どうしたんだ!?

目の前には眩い黄金と、薄橙の…。
焦凍にバっと勢いよくカーテンを開けられる。
っ…!?
飯田
神薆くん!?それは…
神薆
緑谷
ヒビ割れ…?顔が…っ!
神薆
大丈…夫よ…
飯田
だっ…!
神薆
我が呼びかけに…応えよ、歳月オロニクス
記憶の、幕を取り払…い、過…去のさざ波を…取り戻せ…

唱え終えると、黄金はあたしの頬へと戻っていく。
緑谷
今のは何だ…怪我、ヒーロー殺しにやられたのか!
飯田
ひび割れるなんて…
緑谷
神薆さん、息切れしてるよ…!
深呼吸して、ねぇ!
飯田
ナースコールで報告を…!
俺がやる!
神薆
いい!!!

…あぁ。
取り乱しちゃったね。
あたしが声をあげると、皆の動きが止まる。
神薆
報告しないで。
あたし、すぐ戻らなきゃいけないの。
飯田
だが…!
神薆
どうせ分からないわ!
…お前はわかってんのか?
神薆
…分かってるわよ、これがあたし自身の悲鳴だってことくらい。

これは摩耗の代償。
わかってる、もうやめなきゃいけないこと。
でも、これが終わらなきゃ…。
これがあたしの使命だから…!
神薆
終わってよ
飯田
神薆
…もう大丈夫よ。
天哉と焦凍はもう退院の目処が付いたんでしょう?
飯田
…あぁ。
神薆
あたしもすぐ退院のはず。
出久、寂しかったら連絡してくれて良いからね♪
緑谷
えっ!?あ、うん…
神薆
…あら。
爆豪

教室に入れば、いつものトゲトゲした髪の毛が滑らかになっている。
…なんだこれ、可愛いけど何これ。
上鳴
一番変化というか大変だったのはお前ら三人だな
飯田
あぁ…3人?
瀬呂
そうそう、ヒーロー殺し
切島
命あって何よりだぜ、マジで
砂藤
エンデヴァーが救けてくれたんだってな
葉隠
さすがNo.2ヒーロー!

それに、少し考えてから同意する焦凍。
あの秘密は当人と関係者達のみ知られている。
切島
んで、神薆は怪我したんだってな?
緑谷
…神薆さんも…
神薆
えぇ、インターン期間中では特に大きな怪我は無かったけれど、帰り道に少し。
緑谷
…?
オールマイト
お試し程度で、君もやってみようか
神薆
…あたしの個性はなるべく使わない、じゃないの?
オールマイト
そうだけど、いつまでもそうやっていると君の成長が周りと遅れてしまうからね。
神薆
…そう。

そうやって始まったあたしの授業。
オールマイトから申請を受けると共に、金糸を張り巡らせる。
…いた。
次の瞬間、あたしはオールマイトの目の前にいた。
オールマイト
うおっ、
神薆
…へへ〜、どう?何位?
オールマイト
堂々の一位だ…素晴らしい。
神薆
まぁね!このあたしに掛かれば何メートル先でもサクッと助けに行けちゃうよ!
緑谷
…詭術か!
なるほど…
切島
あぁ?きじゅつ…?
緑谷
神薆さんのなかの12人の内、
探索で浪漫の半神アグライア、移動で詭術の半神サフェルだと思う。
切島
なるほど!
セイレンス
ウミウシは、隠れてあの世界を結末に辿らせようと努力しているのか。
ファイノン
そうだね…僕と同じように。
ヒアンシー
…心を痛めなければ良いのですが…
アナイクス
無理でしょう。彼女は元々情の強い子です。
アグライア
現に彼女の肉体は崩れかけています
騰荒
俺の存護が効かないんだ。
恐らく内部からの破壊だろう。
キャストリス
…ゆっくりと、フレイムスティーラーのように己を燃やしていっているのですね…
ケリュドラ
自己犠牲…英雄に依存している市民達の好きそうな言葉だな。
サフェル
もっと自分を大切にしてもらわないと…。
長夜月
…あたしを呼べば、あの子の手を煩わせずに済むのに。
モーディス
自身でやる事に意味を感じているのだろう
トリビー
…でも、預言ではこれが結末だって言ってるんだ。
これさえ乗り切れば、エリシアちゃんを休ませてあげられるよね!

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