「桜さんお知り合いなんですか?…てかなんで顔赤いんすか」
「はっ?!しし、知り合いじゃねぇし!」
『あ、いや…!』
言葉が被ってしまい咄嗟にお互い目をそらす。そんな二人の慌てっぷりに薫ちゃん以外の三人は不思議そうに首を傾げる。さっき助けてくれたと言いたいのに黒と金色の瞳に合っただけでこれだ、まともにお礼さえ言えない自分に改めて恨む。言えない私の代わりにまた薫ちゃんに助けられる。
「さっき助けてくれたボウフウリンの人なの〜」
「なるほど、見回りの途中で1人でどっか行ったかと思えばこの人たちを助けてたんだね桜君」
「お、おう」
「何照れてんのよ桜」
「ててて照れてねぇし!」
オッドアイの男の子は照れくさそうに首裏をかく仕草をする。……照れ屋なのかな?
「って、ことはもこの人たちと知り合いなの?」
「うん」
「あら、じゃあ自己紹介しないとじゃん。初めまして、晴風薫です」
『は、初めまして!あなたの名字あなたです!』
「わわ!初めまして!楡井明彦っす!」
「オレは蘇芳だよー」
「………桜、遥」
桜。
春を象徴する綺麗なピンク色の花を咲かせ、満開になる頃には散っていく儚さも相まって圧巻の美しさを誇る。
無闇に暴力を振るって喧嘩を楽しむようなやつじゃないってわかっていても、彼に綺麗な桜のイメージはどうしても湧かない…。
立ち話もなんだしとことはちゃんは三人をカウンター席に案内したので一旦会話が終わり、三人は今日学校であったこと?とか見回りのことを話し出す。私たちも今度のテストのこととかクラスメイトの子についてなどの話題に変わった。
しばらくするとキッチンから卵を焼くいい匂いがしてきてそちらに目をやると、白いお皿に乗せられた大きいオムライスが桜君の前に出される。
無造作にスプーンを握りしめて一口すくって大きな口を開ける。すると美味しかったのか少年のように目を輝かせてスプーンの進む速度は徐々に早まり、あっという間にケチャップが付いた白いお皿が顔を出した。
「相変わらず食べるの早すぎ」
「あ、また野菜残してる……」
「あん??」
「ことはが風鈴の子と仲良いなんてねー」
『あんまり邪魔しちゃ悪いしそろそろ出る?』
「………体調悪い??」
『ううん大丈夫。それに…』
「それに?」
『なんだろ…。うまく説明出来ないんだけど、あの人たちはしんどくならない。なんでだろう…?』
「あら!」
薫ちゃんは口に手を当てて驚いた、いや、嬉しそうに驚いた。驚くのはわかるけどなんで嬉しそうなんだろ?「はぁ遂にあなたも私卒業の時かぁ」って次は悲しい顔をして肘を着く。何してんだこの人。
「まあいいや!いつか来ること覚悟してたし?さて、そろそろ暗くなるし帰ろか〜」
『何ひとりで悩んでひとりで解決してんの。帰るけど!』
机に広げていたノートやら筆記用具を片付けて鞄へと突っ込んでいく。テスト前ということもあって、これでもかとパンパンに膨れた鞄を肩にかけて席を立つ。帰る準備をする私たちにことはちゃんが気づいて、エプロンで手を拭きながらキッチンから出てきてくれて、それにカウンター席に座った三人も気づいて後ろを振り向く。
『ことはちゃん、今日はありがとう!紅茶すごく美味しかったよ』
「ふふありがとう。次はオムライス食べに来てね」
『オムライス!絶対食べに来るね。ふ、風林高校の皆さんも!ま、またね!』
「またね〜。またこっちに連れてくるからうちのあなたをよろしくね〜」
「はい!またっす!あなたの名字さん!晴風さん!」
「二人ともまたね」
「…ま、また、、」
顔を真っ赤にしながら消えそうな声で横目で見送る桜君とまた目が合う。
店内の照明に照らされる左目はやはり綺麗で、まるで宝石に見入ってしまったかのようにしばらく見つめてしまった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。