第66話

後夜
1,187
2025/07/30 11:16 更新













ルイス
申し訳ございませんでした…
侍従の中で、ジョングクさんと王子の関わり方に疑問を持っている者が何人かいたのは知っていました…こんなことになるとは…
ハンナ
私もです…まさかこんなことを…
ジョングクさんには何か、嫌がらせのようなことがあるかもしれないと思い、その時は相談するように声をかけてはいたのですが…何の意味もありませんでした。
申し訳ございません…


ルイスさんとハンナさんは、そう言って頭を下げた


二人はジョングクさんの教育係で、ジョングクさんのことを気にかけて良く思っていることはわかった


今、全てがやっと落ち着いた、ジョングクさんが深く眠るベッドの前で事情を聞いていたところだ


もう城のほとんどの者が寝静まっている時間帯だ


ソクジン兄さんの話す内容に僕は耳を疑った

ホソク
ホソク
……


僕は、ルイを含め、ルイと同じ気持ちを持つ侍従がいることに驚愕した

決して理解できない

ユンギ兄さんも、茫然とするように話を聞いていた


ソクジン
ソクジン
明日の朝、全ての侍従を俺の部屋に集めろ
全員に話を聞く
ルイス
かしこまりました
ソクジン
ソクジン
あの侍従にはそれなりの処分もする
あんな非道は許されていいものではない
ハンナ
はい


兄さんは、煮えたぎる怒りをその淡々とする態度の裏で押さえつけているようだった


僕たちがジョングクさんに会いに行こうと部屋へ行った時は、兄さんは見たこともない、必死な表情で泣いていたのに


ルイスさんと医者を連れて戻る頃には、その面影はなくなってた


ホソク
ホソク
……


話によれば、何の問題もなく夕食を食べたジョングクさんはルイによって右腕の傷を開かれ…それで……


兄さんが戻ってきた時には既に腕から血が流れ続けていた



拳を握りすぎて、腕が震える

どうして僕は、肝心な時にそこにいなかったんだろう


考えても無駄なのはわかってるけど、そう思わずにはいられないんだ



ルイは今どこにいる

この怒りをぶつけないと気が済まない


ホソク
ホソク
……ふぅ…

辛いのに僕に優しく笑いかけ、気絶するように眠ったジョングクさんを思い出す


本当に…なんてことをしてくれたんだ…

許さない


ソクジン
ソクジン
話は終わりだ
もう戻っていいよ

ホソク
ホソク
ユンギ
ユンギ
ルイス
いえ、ソクジン様、ここは私とハンナでジョングクさんのことは見ておきますので、お休みになって下さい
ソクジン
ソクジン
…、
ユンギ
ユンギ
俺はここにいる
ホソク
ホソク
、兄さん

今まで一言も話さなかった兄さんがそう言った

ルイス
ユンギ
ユンギ
二人を責めてるわけじゃない、
けど…信用できない
ホソク
ホソク
……


そうかもしれない

兄さんは、この城にいる遣いの者に良い印象を持ってないから

ソクジン
ソクジン
好きにしていいよ
俺は戻る


てっきり、兄さんも残ると思っていた

ソクジン
ソクジン
ルイスさん、後はお願いします
ルイス
かしこまりました
ホソク
ホソク

何かあったのかな


兄さんは、ルイスさんのことは信頼してるように感じた


兄さんが去った後、ユンギ兄さんが口を開いた


ユンギ
ユンギ
ホソガも、戻っていいよ
俺がここに残りたいだけだから
ホソク
ホソク
、うん…
ハンナ
広い椅子をお持ち致します
ルイス
お願いします


ハンナさんが早足で部屋から出ていく


ルイス
……大変申し訳ございません…
ホソク
ホソク
、いえ、ルイスさんは何も…
ルイス
ジョングクさんのことを任されていたのは我々です。彼がいることで、私どもはこの城にも、王子にも、きっと良い影響を与えていると思っておりましたので、変化を受け入れられない者がいることを甘く見ていました
ホソク
ホソク
……

確かに、僕たちは変わった


変わった なんて

救われたんだ






身じろぎし布の擦れる音が聞こえて、咄嗟にジョングクさんへ視線を向ける


ジョングク
ジョングク
ぅ、……はぁ…、…、

額に汗を浮かべて、顔を歪め呻いた


ホソク
ホソク
、、
ユンギ
ユンギ
……


兄さんはジョングクさんのそばに戻ってよって様子を見ると、出口の方へ向かった


ホソク
ホソク
兄さん?
ユンギ
ユンギ
布を水につけて持ってくる
ルイス
、ユンギ様、それは私が
ユンギ
ユンギ
いや、これから嫌でもじっとしてるだろうから、今なるべく動いておきたい
ルイス

そう言われるとルイスさんは黙って引き、兄さんは部屋を出ていった


ホソク
ホソク
……
ホソク
ホソク
…僕、今を、努力してないなんて思わない


重たい沈黙の中で、僕からは絶対に譲れない事実が口をついて出て行った

ホソク
ホソク
確かに前の方がずっと必死だったかもしれないけど…でも、ジョングクさんに会わなきゃ、僕はいつか壊れてたと思う
ルイス
ホソク
ホソク
僕が今も頑張れてるのは、笑えるのは、ジョングクさんのおかげなんだ…
ホソク
ホソク
他の王子もきっと…
ルイス
…はい
ホソク
ホソク
みんなジョングクさんのことを知らないから、あんなことができるんだ…ジョングクさんがどんな人か、あの人が僕たちにしてくれたことをちゃんと知っていれば、
ホソク
ホソク
……絶対にこんなことしない…
ルイス
…はい
ホソク
ホソク
……


ジョングクさん以外の人たちはみんな、誰一人、僕の心に歩み寄って、理解してくれるような人はいなかった

誰も、気づいてくれなかった

ジョングクさんを除いて


ルイス
本当に、その通りです
ルイス
私はジョングクさんと話し、彼の人柄を直接知ることができるからこそ、だからこそ…彼を、憎むような…そんな人がいることを想像できませんでした
ホソク
ホソク
……

僕もだ…

知らないことはこんなにも恐ろしいんだ


明日、ソクジン兄さんが侍従にたちにどんなことを言うのか

彼だけで伝えられるのか

それとも、兄さんはただ、ルイと同じような考え方の侍従を見つけたいのか


僕も、そこにいないと


ホソク
ホソク
、おかえりなさい
ユンギ
ユンギ
ああ

兄さんは水に浸した布を絞り、優しい手つきでジョングクさんの額の汗を拭う

もう一度水につけて絞り、額につけたままにした


ユンギ
ユンギ
ホソガはどうするんだ?
ホソク
ホソク
…僕は、朝まではここにいます。そしたらソクジン兄さんの部屋にいく


視界に入れたジョングクさんは、苦しそうに息を吐いていた



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