今日こそは , 脱 処女 だ
この間はじぇひょんさんを見送ってすぐ家に帰った
そして今日までの間 ,
男同士での知識とか
いわゆる開発 , とか
色々頑張った
よし , と意気込んで
あのバーの前まで来たのは良いものの
流石に中に入る勇気は出なくて
前と同じ場所で待ってたら誰か声を掛けてくれるかな
そう思って黙って立っていた
声をかけてきたのは
小綺麗なスーツに身を包み ,
片手にはビジネスバックを持っていて
汚れのない革靴を履いた
仕事終わりの会社員みたいな人だった
今まで話しかけてきた人とは違う
多分 , 抱いてくれる人
さっきまでは
いわゆる ネコ の人たちが声をかけてきた
俺がでかいからなのか , 自分もそっち側だと伝えると
ほとんどの人に驚かれた
中には 抱きたくなったら連絡して , と
連絡先だけ交換していなくなった人もいたけれど
俺より少しだけ背の高いこの人は
メガネとちょっと長めの前髪で
あまり目元は見えないけど
それなりに整ってる顔だと思う
いつもより , ほんの少しだけ声を低くする
こないだみたくなよなよしてたら
ナメられると思ったから
優しそうな声でそう言われ
俺は頷いた
行きましょうか , と半歩先を歩く男の後ろを
黙って着いて行く
歩き出した時 ,
バーからゴミ捨てに出てきた店員らしき人と目が合って
何故かこっちをずっと見ていたけど
店長に呼ばれて戻って行った
綺麗な赤髪だったな
俺もいつか染めたいや
段々とホテルが近づいてきて
周りの雰囲気も変わってきた
俺 , この人と今から …
そう考えると , なんだか気持ち悪くなった
まぁ , 今更後戻りなんて出来ないけど
男が何かを小さな声で呟いて
突然バックの中を漁り始めた
目当てを見つけたらしい男が
バックから取り出したのは
少し古い機種のスマホだった
なんでそれが必要だったんだろう
さっきは最新のを使ってたはずなのに
… あれ , 足元になんか
注射器だ
やばいと思ったときにはもう遅くて
逃げようとした俺の手首を
痣になりそうなくらい強い力で掴む男に
先ほどまでの優しそうな雰囲気は無かった
そう言って笑う男の顔は
悪魔みたいだった














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!