黒尾 side
黒尾「 あなたサン?どうかしました? 」
「 うん、ちょっと考え事してた 」
夜久「 なんだー?話してみろよー 」
おいおいー!おりゃー とあなたの髪をくしゃくしゃにしている夜久。
こういうほんのした瞬間が楽しくて、
そんな時の仲間、あなたの緩んだ顔を見るのも好きで、
つい、自分の頬も緩むのがわかる。
海「 夜久ー(笑) 」
黒尾「 …あーあなたの髪崩れてるわ 」
「 うそ、ほんと? 」
夜久「 マジ ほんとごめんな せっかくちゃんとしてるのにな 」
「 え、そんないいって、あと帰るだけだし 」
うわ、やりすぎた とかるーく謝る。
学校、部活のときに同じようなこともやっていて、その時は髪が崩れないよう加減している。
今はかなり強めにやってしまったようだが。
普通の女子だったらこの時点でキレてるよな とか思う。
大半の現役JKは、前髪とかメイクとか1mmでも変わるだけで、
常備しているであろう鏡やくしをポケットから取り出して直すだろう。
学校にいる時のあなたは基本気にしていないようで、
清潔感はなくならないように整えていて、ナチュラルに可愛く見えるような、
そんなところも男子と女子、共に人気な理由だろう。( 男子は恋愛対象としてだ )
今はシンプルに言っていたように 帰るだけだから という理由だけかもしれないが。
「 なおった? 」
黒尾「 まだ残ってんな 」
「 ここらへん? 」
黒尾「 もーちょい上 」
それでもさすがに目にかかっているからか、ある程度は直したいようだ。
さすがに見えない部分を自力で整えるのは厳しいようで、俺に髪が元通りになったか聞いてくる。
「 もーわかんない、鉄朗くんやって? 」
黒尾「 ……、はいはい(笑) 」
黒尾「 おい、なんで目ぇ瞑るんだよ 」
約185cmの俺と、約155cmのあなた、大体30cm差。
必然的にあちらはこちらを見あげる形になって上目遣いになる訳で。
それはそれでいいのだが、何故かこいつが目をつぶるから、まるで___
キスでもしてしまおうか
とかね、可愛いなとか、思っちゃうわけで。
そんな思いを消したいが故にデコピンをする。
もちろん優しめに。
「 …いてっ!デコピンするな〜〜〜 」
黒尾「 ……ん、できた 」
ありがとう どういたしまして
至って普通、と思いきや
そのあと、 どういたされまして なんだそれ(笑) と意味のわからない言葉を交わす。
普段からこんなことよくするものだから、これが通常運転になっている。
結構やっちゃったわごめんな〜、でも可愛い なんて言ってしまうことのできる夜久には尊敬する。
俺も可愛いとは思うが、こんな仲になってから言うのもなかなか言えず、
このままにしておいて、いきなり伝えてそのままお付き合い__
なんて上手くいけばどんなにいいのだろうか。
やっぱり、1年の頃に周りのヤツや夜久に遠慮せずに行くべきだったか。
まあ、今更後悔しても遅いのだけれど、
それに今の仲でも満足している、はずだ。
夜久「 まぁ…なんかあったら頼れよ、話すだけでも変わんだろ 」
夜久は あなたに元気ねえと心配だし、俺も元気なくなるんだよ と言い残して前の2年生達に合流していく。
そんなカッコイイところをさりげなく見せて去っていく夜久はずるいと言っているあなた。
お前を好きな男からしてみれば、断然お前の方がずるいよ とついつい言いたくなってしまう。
それは置いといて、 夜久衛輔、男からみてもカッコイイ男だ。
そんなカッコイイお前に、俺も負ける気なんてさらさらないけどね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。