〈mark side〉
俺の声でラボにパッと照明が灯る。
襟足からは、まだポタポタと海水が垂れていた。
港には既に日が昇る前に到着できた。
コンテナの船着場から陸に上がり、
上着にねじ込んだカバンに濡れた衣服を突っ込んできた。
水没してしまったのか携帯が起動せず、
今はチソンからの連絡だけが心残りだ。
オロオロと動揺するチソンが思い浮かぶ。
その後も最悪の場合だけが頭に浮かび続けた。
そんな悪夢を立ち切るように首を振る。
船から持ち帰った実験器具、ノート、
そして血清のサンプルをテーブルに置く。
その時、ガチャンとラボのドアが開いた。
同じく髪先からポタポタと海水を垂らしながら、
荷物と一緒に慌ただしくチソンが入ってくる。
大きなケガもしていないような様子を見て、
安心からかフッと脱力感に襲われた。
膝から力が抜けかける。
安堵の息と同時に涙がこぼれそうになる。
それをグッとこらえ、チソンに向き直った。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!