「ただいま〜!!」
中開きのドアを閉め、くるっと半回転。そのまま家の中に向かって声を張り上げた。少し時間を置いて、ひょっこりと顔を出してきたのは、イギリス人の私の祖母だ。相変わらず目元も顔つきもおっとりとしていて、どこか安心感を与えてくれる。
「……おかえりなさい、リオ。学校は楽しかったかい?」
「うん、楽しかったよ。そうそう、それでね、この後バセが遊びに来るの」
「ああ、バセ君ね。分かったよ。遊ぶのは自由だけど、課題はちゃんと片付けなさいね」
「もうっ、分かってるってば〜。私もう16歳だよ?」
おばあちゃんはすっごく優しいけれど、いくつになっても私を子供扱いしてくる。もうすぐ大人になるというのに。
大人。大人かぁ。私は本当に探偵になることができるのだろうか。漠然とした不安を感じつつ、目の前の現実を思い浮かべる。
中学卒業まではあと数ヶ月。そこから最短ルートで探偵になることを目指すなら、専門学校でライセンスを取得しなければならない。入学できそうな目処は立っているけれど、専門学校でライセンスを取得して本当に探偵になれるのかと言われると、ちょっぴり……いや、かなりの不安が付きまとう。
そんなことをぐるぐると考えていても仕方がないよな、と思い両頬を軽く叩いた。気分を切り替えたその時、あるものが目に留まった。
「あれっ、おばあちゃん。そんな高そうなもの持ってたの?」
おばあちゃんの手にあったのは直径1cmほどの雫型の宝石。透明で透き通りながらも、どこか奥に深い光を宿している。今まで本などを通して宝石の写真は見たことがあったけれど、こんなにも魅惑的な宝石は生まれて初めて見た。気付いたら目を惹かれているような、ついずっと眺めてしまうような、魅力的で神秘的な宝石だった。
「綺麗でしょう?」
おばあちゃんが穏やかに微笑んだ。宝石はずっと輝いたまま。
「これはね、今は亡きおじいちゃんが結婚指輪の代わりにプレゼントしてくれたダイヤモンドなの。……大切にずっとしまっていたのだけれど、それも勿体ないしここに飾ろうと思って」
「おじいちゃんが!? へぇぇすごい……随分ロマンチックなプレゼントだね……?」
大きさはそこまでないが、ダイヤモンドと言うくらいだ。相当高かったのだろう。そのままじーっとダイヤモンドを眺めていたが、不意に不安が胸をよぎった。まるでどこかから、私達が監視されているかのような。
「どうしたの、リオ」
おばあちゃんに声をかけられて、はっと意識を引き戻す。そうだ、宝石も十分魅力的だけれど、今はバセが来る前に課題を終わらせることが先だ。不安を脳の隅に押しやり、私は学校から持って帰ってきた冊子を広げた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。