「ねえカゲツ。今日の任務、毒の訓練にしてみましょうよ!」
「……おい、タコ。ほんまにこれ、大丈夫なん?」
星導はいつも通り、軽く笑って肩をすくめた。
「安心してください。俺が依頼でもらった安全な毒です。」
「タコの安全ほど危ない時ないんやけどな……」
そう言いながらも、カゲツは瓶を受け取った。 忍としての誇りと、同期としての信頼が、その手を動かす。
透明な液体が、月光を反射して淡く光った。
一口。
喉を通った瞬間、焼けるような熱が体内を駆け抜けた。
「……っ、ぐ、あ……?!」
カゲツの膝が崩れる。
胸の奥から、こみ上げる鉄の味。
口元を押さえた手の隙間から、紅のしずくが滴る。
「カゲツ?!カゲツしっかりしてください!」
星導が駆け寄る。
その腕でカゲツを支えると、背中がびくびくと震えていた。
息が荒く、唇が青白い。
だが、星導の目はどこか冷静だった。
冷静すぎた。
(……血。綺麗だな。)
胸の奥で、何かが静かにざわめく。
訓練のつもりだった。
なのに、目の前で苦しむ同期の姿に、興奮にも似た感情が湧き上がる。
カゲツが血を吐きながらも、無理やり笑う。
「……ほらな。言うたやん……!タコのたぶんは信用したらアカンって。」
「……はい。そうでしたね」」
星導は微笑んだ。
その笑顔の裏に、罪悪感も後悔もなかった。
代わりに、熱がこもった視線があった。
「……でもこうやって血を吐きながら笑うカゲツ……なんか、可愛いですよ♡」
カゲツは目を見開いた。
次の瞬間、再び咳き込み、血が星導の手の甲を濡らした。
「……何言うてんねん、アホか……!」
「だって、ほんと綺麗だよ、カゲツ。」
星導の声は優しく、けれどどこか壊れていた。
支える腕に力を込めながら、彼はその赤を見つめ続ける。
床にこぼれた血が、光を浴びて妖しく輝いた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。