第460話

騙し騙され…
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2020/09/19 13:30
菅原祖母「ほら、たくさん食べる子が好きだよ私ゃ」


あなた「あ、はい……!」





なんとかおつき合いは認めてくれたようで、お寿司をどんどん勧められる。


ウニを2つと高菜巻きを取り皿において、とりあえず口に詰め込んだ。






菅原父「あなたちゃんは、16歳……かな?」


あなた「あ、年が明けたら16です」


菅原「そっか。よく考えたら3歳差なんだな」






他愛無い会話をしながらも、やっぱり罪悪感に駆られてしょうがない。






ピリリリリッ




菅原祖母「誰だい」


菅原「あ、ごめん俺だ……あ、大地。部活の事かも。出てもいいかな?」





皆で頷くと、電話を取りながら廊下へと出て行った。


それを見送ってから再度食事に戻ると、おばあさんがチラッとお父さんを見ているところだった。


その視線に気付いたお父さんは、箸を置いて微笑した。





菅原父「お義母さん……僕はもう、何も反対はしていませんよ。心から孝支を応援しています」


菅原祖母「分かってるよ」


あなた「……?」





不思議そうな顔をした私を見て、お父さんは「なに、一種の家族喧嘩だよ」と話し始める。





菅原父「孝支は3年だ。試合に出るわけでもないのに、大学受験を控えたこの時期に部での活動を続けるのはどうかと思ってね……」


花巻「あぁ……俺も、多少は親と揉めました」





そうだったんだ……。


私としては勿論、3年生が部に残ってくれたのは嬉しかったしそれを望んでいた。


でも同時に、家族からの心配とか揉め事とかは避けられないわけで……。





菅原父「だけどお義母さんだけは……「孝支のやりたい事が1番大事だ。何も大学で人生の全てが決まる訳ではないから」……って」




"やりたい事"……。




菅原祖母「孝支は優しい子だよ。だからこそ、両親に部を続けるなと泣き付かれでもしたらきっとその通りにするだろう?それであの子が後悔をするのなら、するべきではないんだよ」


あなた「……、」





とても……。


とても、暖かい人だと思った。




菅原先輩の事を本当に愛していて、強い芯のある人だと。







……私は。










菅原𝓈𝒾𝒹𝑒.°



澤村〈じゃあ、明日の部会頼む〉


菅原「おうっ。んじゃまた明日な〜」



ピッ



大地との電話はすぐに終わって、リビングに戻ろうとドアノブに手をかけたところで話し声が聞こえた。





菅原母「え……どういう、事なの?あなたちゃん……」



……あなた?


何話して……?




あなた「私と孝支く____は、付き合ってる訳じゃないんです……!」

 


……え!?


あなた、何言って……。






あなた「菅原先輩には好きな人がいて……だから、本当に好きな方と、お付き合いも、結婚も、してほしくて……。おばあ様が先輩に、誰か他の女の人を紹介しそうって聞いて……から提案したんです」


菅原祖母「……」


菅原母「だからって……」


あなた「ごめんなさい。騙すような事をして……でも、先ほどのお話を聞いていて、やっぱり菅原先輩のご家族なんだな……って思ったんです。先輩の魅力を1番分かっていらっしゃる皆さんなら、先輩の恋を心から応援してくれるって……そう、思ったから」





小さく扉を開けて中を覗くと、丁度あなたが立ち上がって頭を深く下げているところだった。



あなた……。






あなた「先輩の事が大好きな事に、変わりはありません。だから、私は先輩に……好きな人と一緒になってほしいから……!」


菅原「…………」




あなたの言葉は俺の胸に突き刺さって、同時に苦しくなった。


だって俺の好きな人はあなたで、彼女の振りをしてほしいと頼んだのは俺自身だから……。




なのに、俺のこれからを考えて言葉を紡いでくれるその姿に、何故だかとても______泣きそうになった。




あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°



黙り込まれてしまって、間違った事をしてしまっただろうかと不安になった。


でも、今悔やんでもしょうがない。



頭を下げたままだった私に1番に声をかけたのは、お母さんだった。





菅原母「あなたちゃん……頭を上げて頂戴」


あなた「……、」





バタンッ





菅原「違うんだ!!!」


あなた「!?」




飛び込んできた菅原先輩は、ズカズカと私の方へ寄ってきて肩を抱いた。





菅原「俺が頼んだんだ。あなたが断れないのを知っておいて、ばあちゃんを説得するために協力してもらったんだ。ばあちゃん……俺、好きな人がいる。本気で好きなんだ。その人じゃないとダメだって思ってる……けど、振り向いてくれるか分からない。それでも俺、諦められないから!だから___、」





そこまで熱弁すると、おばあさんは「孝支……」と呟いた。






菅原祖母「……舐めるんじゃないよ」


菅原「……え?」


菅原祖母「アンタたちが本当は付き合ってないことくらい分かってたさ。いつからアンタを見てると思ってんだい」





…………え?






菅原祖母「大体、今まで女の影ひとつも見えなかったアンタにタイミング良く彼女なんてできる訳ないだろう?どんな子連れてくるか気になって騙されたフリしてただけさ……」


菅原「……えぇ?」




気の抜けた声を出した菅原先輩を見て、フッと笑った。





菅原祖母「初めから、アンタに選んだ子が居るならそれを応援するつもりだったよ」





…………なん、ですと。



つまり私たちは……おばあさんの掌の上で弄ばれていたという事に……。





菅原「な……なん……だ、」





息を吐いた先輩と目が合って、先輩はハッと目を見開いて肩から手を離した。


同時に私も気が抜けて、思わず笑ってしまった。






怒られるかと思ったけど、菅原家はやっぱり暖かくて。






私たちは最後まで食事を楽しんだ。

















花巻「(本当に騙された振りしてたなら、赤の他人に「孫が嫁を連れてくる」なんて言わねぇだろ……)」
    


菅原祖母「(どうしてやろうかと思ったけど……いい子じゃないか。"孝支の選んだ子" あなたちゃんは……)」

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