あくる日の朝
そこに、彼がいた。
彼は、最弱種族の子供。ヒジン。
名前の由来は日のごとく育ってほしいという意味らしい。
彼は、すくっと立ち上がると商人の近くへ行こうとした。
しかし、母親が止める。
母親はため息を付き、ヒジンに対して怒る。
人狼族の間では、人間の本は読んではいけないという謎のルールがあったからだ。
ヒジンは母親が止める暇もなく後ろの森林へと走り去っていった。
母親は、自慢の尻尾をブンブンと振り回す。
と、後ろから声がかかった。
母親はさらに尻尾を回す。
ごめんね、ヒジン。
あなたの最期まで入れれなくって。せめてあなたは、健やかに生きてね
あなたの母親より
場所は変わって森の中。
ヒジンは石を蹴る。
蹴って蹴って蹴って、やがて開けた場所に出た。
ヒジンは森を知り尽くしているつもりだったが、こんな場所があるなんて、と目を丸くして中央の湖へと走っていく。
湖には、魚が大量にいた。水は澄んでいて飲水としても使えそうだ。
と、奥の木に何かがいるのに気づく。
とっさに威嚇するヒジン。が、その気配はすっと消えてしまった。
疑問に思い、ゆっくりと近づいていく。
と、そこには...
可愛らしい召し物をした、生き物ではないナニカがいた。
悪態を付きながらも、彼女?の体を念入りに見ていく。
すると彼女の体に、雷のような文様があった。
様々な場所から見ていくも、わからない。
突っついてみたり、勢いよく倒してみたり。でも、わからない。
ごっ...っと蹴ると、かちりとなにかが起動する音がした。
ヒジンが慌てて後ろを振り向くとそこには____
キレイな彼女が立っていた。
思わず思っていたことを口にしてしまうと彼女は驚く。
大きな音にびっくりした...まるで、人間のように。
本当のことを口にすると、彼女はうげという顔をする。
抑揚はない。でもなんとも人間らしい挙動にヒジンは笑ってしまう。
なにかを彼女は言いかけた。なんだ?と思いながらも会話を続けようとする。
ヒジンはつい、いつも人間が使っている、常用語?とやらを使ってしまい、思わず口を紡ぐ。
が彼女も合わせてくれた。
ヒジンは頷く。
瞬間、なにやら体の中のものがごっそり失われる感覚がした。
ヒジンは思わず転ぶ。
...どうやら彼女は髪が伸びているだけで男らしい。
ヒジンは、おことばにあまえて、コクリと頷いた。