ゴールデンウィークが始まった
今いるのは高速道路
久しぶりの家族旅行で少し…いや結構ワクワクしている
去年は受験生だったし、来年からは妹が受験生
今年を逃すわけにはいかないと主にお母さんが張り切っていた
それにしても車が多い
渋滞に巻き込まれて予定よりも遅れている
そんなお母さんと妹の会話を聞きながらどこまで渋滞が続いているのかスマホで確認する
確認するとあと2時間くらいはこの渋滞に抜け出せそうになかった
……………あと2時間もこの状態って………
つら……
一人で勝手に絶望していると後ろから凄く大きいクラクションの音が聞こえた
その瞬間、今まで経験したことのない衝撃が襲ってくる
そして時間差で痛みが体中に走った
わけがわかんなかった
体が思うように動かない
どこからか焦げくさい臭いが漂ってきた
さっきまで乗っていた車はグチャグチャになっていて手にはヌルっとした感触。
血だった
だんだんと視界がぼやけてくる
私死ぬの?
そう思っている間にもどんどん意識は薄れていく
最後に見たのはかろうじて原型をとどめている血だらけの家族の姿だった
目を開けると見たことのないおじいさんが立っていた
背は高くてなんか上品な髭が生えている
そして
額には角があった
……………………え?角……?
怖い……なんなのこのおじいさん……
………………悪魔……?
わぁお
いや待って私が死んだなら家族は……
何がとは口にしなかったけど何を言いたいかはわかった
涙が溢れてくる
………特殊とは……?
というかわかんないことだらけで頭がショートしそう……
困惑していると悪魔のおじいさんが口を開いた
急にそんな事を言われても困る
…………でももしこの悪魔の孫にならなかったら行き場をなくして最悪野垂れ死ぬ……?
それだったら……孫になったほうがいいのかな…
衣食住保証するって言ってたし…
悪魔のおじいさんの顔が一気に晴れる
サインと判子が押し終わると悪魔のおじいさんが契約書を持ってクルクル回った
凄く嬉しそう……
ん?ちょっと待て…人間の男の子……?え、人間!?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!