庵 「一緒に遊ぼうよ!」
僕は昔から1人でいる女の子を放って置けないでいた。
「うん!!」
その笑顔が見たくて。そして茉莉花もその一人だった。
庵父 「庵、こちら父さんの取引先のお嬢さんだ。」
父さんの後ろに隠れて恥ずかしそうにこちらを覗く少女。
庵父 「茉莉花ちゃんだ。仲良くするんだぞ!」
これが茉莉花との出会いだった。
茉莉花は大会社の社長令嬢でたくさんの人に囲まれて一見幸せそうだが
その心はどこか寂しい面影を持ち合わせていた。
茉莉花 「何よ!パパに言いつけるわよ?」
仕事の忙しいお父さんに構ってもらえない寂しさから
つい人を引き離してしまうような言い方をしてしまう
茉莉花は本当の愛を知らずにいたのだ。
茉莉花 「えーんえーん。」
庵 「まりちゃん。大丈夫?」
茉莉花 「どうせあなたもパパの代わりに茉莉花の面倒を見ろとでも言われたんでしょ?」
庵 「そんなこと言われてないよ?僕はまりちゃんと遊びたい!!」
いつしか僕は茉莉花の傍にずっといてあげるようになっていた。
茉莉花 「庵!何その顔!!」
水たまりを踏みどろんこになった僕の顔を見て茉莉花は笑った。それにつられて僕も笑う。
庵 「まりちゃんお洋服汚れてない?」
茉莉花 「うん。」
庵 「よかった。」
茉莉花「茉莉花、庵が一番好き。」
庵 「えっ?」
「好きです!庵くん。私と付き合ってください!」
小学生になり、やたらと恋をされるようになった。
庵 「あっえっと…。」
茉莉花 「なーに言ってるの?あなたみたいな子が庵と付き合える訳ないでしょ?」
恋をされてわ、それを茉莉花によってなかったことにされていく。
茉莉花 「庵は私が守ってあげるんだからね!」
僕は完全に恋をするタイミングを逃した。
庵 「大丈夫?」
「えっ…庵先輩?」
僕はただ笑っている顔がみたいだけ。そう言い聞かせながら本当の恋を探していたのかもしれない。
だけど、それに傷付く人も多くなっていた。
茉莉花 「ちょっと!庵に優しくされたからっていい気になってんじゃないわよ?」
「私は、そんなつもりじゃ…。」
茉莉花 「庵に二度と近づかないで!!」
庵 「あっ…!」
その子はそれきり僕を避けるようになり、僕の前から消えるように学校を去って行ってしまった。
茉莉花 「庵は優しいから。わかってる。一番は私のことが好きなんだもんね!」
茉莉花のことは好きだ。けど、それが恋なのかはわからないまま時だけが過ぎていた。
このままでいい。茉莉花が笑っていれば…そう思っていたのも束の間その時はやってきた。
庵父 「庵。将来は、茉莉花ちゃんと一緒になるんだ。」
庵 「えっ?それってどういう意味…」
庵父 「永澤家と親戚関係になればうちは安泰なんだ。」
庵 「でも僕らはまだ中学生になったばっかで…」
庵父 「彼女が望んでいる事なんだ!」
その一言で僕の運命は決まった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
大介 「先輩!ちょっと話があるんすけど、いいっすか?」
庵 「大介くん?」
大介 「もうちよこのことを惑わせないでください!先輩は一体ちよこのことどう思ってるんすか?」
庵 「好きだよ。」
大介 「えっ?」
思いがけない答えに戸惑う大介。
庵 「でも君の思っている好きとは違うんだろうね。」
大介 「…先輩。永澤先輩のこと…。」
庵 「君がちよこちゃんを想うように。僕は茉莉花を想ってる。それだけだよ。」
大介 「それは…。」
庵 「ごめんね。僕はもうちよこちゃんには関わらないようにするよ。ちよこちゃんには君がいる!」
そう言うと静かに微笑んで去っていく庵の背中はいつもの輝いたオーラとは違うどこか儚げな背中なのであった。
大介 「ちよこは俺が守りますから!!」
ちよこ 「先輩の言ってたこと一体どういう意味だったんだろう…。」
大介 「まだ気にしてたのかよ。もう先輩のことは諦めろ。お前には最初から無理だったんだよ!」
なんとかちよこの頭ん中から先輩のことを忘れさせなければならない。大介は躍起になっていた。
ちよこ 「わかってるけど、なんか気になるってゆうか…。いつもと様子が違ったような気がする。」
確かに。先輩はそうとう深い闇を抱えていることがわかったけどそれを今ちよこに言う訳にはいかねー。
ちよこ 「ただいまーあ?」
大介 「母さん!」
ゆり子 「おかえり」
ちよこ 「ゆりちゃん!」
ゆり子 「ちよちゃん!久しぶり。」
ちよこ 「元気にしてた?疲れ出てない?」
ゆり子 「大丈夫よ!それはそうと、文化祭大盛況だったんだって?行けなくてごめんねー。」
ちよこ 「うん。すっごくたくさんのお客さんに来てもらったよ。」
ゆり子 「おまけに新商品も考案したんですって?」
ちよこ 「あれはみんなのお陰で出来たんだよ。」
まち 「そのことだけど、あのパンケーキを正式にうちの新メニューにしようと思うのよ。」
ちよこ 「ほんとに?!」
まち 「あれから、たくさんのお客さんに文化祭で食べたパンケーキはないのかって言われてね。」
ちよこ 「そうだったの?」
ゆり子 「それでね、商品化したら忙しくなるだろうからって私に帰ってきてって♪」
ちよこ 「ほんと?ばぁちゃま!!」
まち 「ええ。」
ゆり子 「ちよちゃん!まさかこんなにも早く約束叶えてくれてありがとう!!」
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ゆり子 「それでイケメンくんとはあれからどうなったの?」
ちよこ 「へっ?あーそれがね…」
ゆりちゃんに話せなかった今までのことを話す。
ゆり子 「何その永澤さん?感じ悪いはね…。」
ちよこ 「うん。私のこと団子くさいとか、団子娘のくせにとか言ってさ~。」
ゆり子 「ヒドイわ。でもあながち…嘘ではないわよね。」
ちよこ 「うん。確かに意地悪はされたんだけど、でもよく考えたら友達がたくさんできるきっかけも
こうやってゆりちゃんが戻ってこれるきっかけになったお団子パンケーキが出来たのも先輩のお陰なんだよね。」
茉莉花はそんなに悪い人じゃないんじゃないかそう思っていたちよこなのであった。
ちよこ 「それに、庵先輩の言ってた事も引っかかるんだよね。」
「いつも一緒にいると相手が自分にとってどんな存在なのかわかんなくなるよね。」
「大切な存在だってことはわかるんだけどね。」
ちよこ 「なんか、庵先輩いつもと違ったんだよね。」
ゆり子 「…ちよちゃんは庵くんのこと今どう思ってるの?」
ちよこ 「なんかわかんなくなっちゃった。」
このもやもやは失恋の辛さなのか、それとも庵先輩の笑顔の奥にあるものが気になっているからなのか…。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!