紫__は放課後になると
校門の前の桜の木にいる。
誰も来ないのに
ずっと誰かを待っている。
俺はずっとそれが気になっていた。
ごまかされた。
でもわかってる。
あの反応、多分待っているのは好きな人だ。
誰かまではわからない
どんな人かもわからない
それでもずっと「誰か」を
「好きな人」を待っている。
だから俺は、
「誰が好きか」
を聞けない。
勇気を出せない。
ある日、俺はこえくんが
高校を卒業したら地元の大学に行くと聞いた。
俺が行くところは関西
こえくんは北海道
真反対だ。
「もう会えなくなる」
という事実だけが俺に刺さった。
苦しくて、悲しくて、
涙が溢れた。
そんな俺を、くにおが慰めてくれた。
そして俺は
こえくんに気持ちを伝えると
そう決意した。
卒業式当日
俺は昨日こえくんに向けて
「好きです。幸せでいてね。」
と手紙を書いていた。
今日もこえくんは桜の木の下にいる。
今日もまた、誰かを待っている。
俺はそれを、教室から眺めることしかできない。
でも今日はいつもと違かった。
遠くから人が歩いてきた。
__だ。
その瞬間こえくんの顔が変わる
優しい顔で微笑む。
幸せそうな、うれしそうな
でも悲しそうな、切ない雰囲気を纏う微笑み。
俺は全てを悟った。
こえくんはずっと__を待っていたんだ。
俺はこえくん宛に書いた手紙をポケットにしまう。
そして__と一緒に歩くこえくんの背中を見ながら
と呟く。
もちろんこえくんには届かない。
この気持ちが伝わることもない。
それでも俺は、幸せそうなこえくんが見れたから
それでいい。
俺が好きになったのは、
俺じゃない誰かを待っているこえくんでした。
# 誰かを待っている君でした。
fin.
next
# 僕の前を歩く君でした。
coming soon...












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。